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いま就活に挑んでいる大学4年生、3年生は、コロナ禍でサークル活動やアルバイトを満足にできず、エントリーシート(ES)や面接での「ガクチカ」(学生時代に力を入れたこと)に苦労している人が多いと思います。そこで最近話題になっているのが「盛りガクチカ」。自分の体験を実際より盛って書いたり、他人の経験を自分がやったことと偽って語ったりすることです。ある調査では、就活生の4人に1人が「盛りガクチカ」をしたことがあると回答しました。でも、自分を偽ったことを後悔する学生もいますし、仮に内定を得て入社したとしても、本当の自分を評価してくれる会社と比べたらミスマッチの可能性が高いと思います。じゃあどうしたらいいの? 「人事のホンネ」の話も交えてアドバイスします。(編集長・木之本敬介)
(写真・ESのガクチカに悩む学生は多い)
(写真・ESのガクチカに悩む学生は多い)
友人のガクチカをコピペして…
先日の朝日新聞(朝日新聞デジタルにも)の記事で「盛りガクチカ」に関する調査結果が紹介されました。◆人材サービス会社「ネオキャリア」は6~7月、「ガクチカ」について、来春卒業予定の学生242人と企業の採用担当者に調査を実施。「自身のガクチカに事実と異なる内容を盛り込んだことはあるか」という問いに対し、学生の62人(25.6%)が「はい」と回答した。
◆就活生らが匿名で相談できるサービスを企画・運営する「ライボ」は7月、社会人経験3年未満の会社員191人に対し、就活のうそについて調査。社会人経験1年未満の105人でみると、「ガクチカの内容を盛って話した」が16人(36.4%)だった。
記事には、東京都の大学4年の男性が登場します。昨夏、ガクチカに困って友人に相談しました。学生団体が主催するイベントで集客を成功させたという友人のガクチカを、許可を得てコピペ。ESや面接で使い、3社から内々定をもらいました。レジ打ちのアルバイト経験くらいしかなく、ある就職情報サイトでアルバイトは話す人が多く印象に残りづらいという情報を見たからです。しかしその後、アルバイトの話をして選考を通過した人もいたと知り、「自分を偽らなければよかったと後悔している」と話しました。
『六人の噓つきな大学生』にも登場
「盛りガクチカ」は、今年の本屋大賞のノミネート作『六人の噓つきな大学生』(浅倉秋成著、KADOKAWA)にも登場します。人気IT企業の最終選考に残った6人の間で渦巻く疑心暗鬼を軸に、驚きの展開をみせる就活ミステリーです。
小説には、ひとりが就活を振り返る場面があります。
「どこまで噓つけるかって勝負してるとこあったよな、正直。居酒屋でバイトリーダーやってますってのと、ボランティアサークルで代表やってますって噓ツートップで乗り切ってたのは覚えてるわ」
バイトではリーダーではなかったし、たまたま1回やったごみ拾いの手伝いを盛って、面接でサークルの人数などを聞かれると即興で答え「選考を重ねるにつれて、段々と設定が仕上がっていって、噓をついている自覚すら消し飛んで、妙なディテールまで淀みなく答えられるようになっていくのよ」と続けました。
フィクションとはいえ、社会人が何年も前の就活を振り返った場面として描かれているわけで、「盛りガクチカ」はコロナ禍前からあったのかもしれません。
作り込んだ面接、落とされた
夏に「朝日新聞DIALOG」というサイトの企画で、現役の学生や若手社会人と語り合う機会があり、ここでも「盛りガクチカ」が話題に出ました。これから就活に臨む2~3年生から、「噓はダメだが数字は多少いじってもいいと4年生に聞いた」「オリジナルストーリーをつくる必要はありそう」といった声が出た後、社会人3年目の先輩がこう言いました。「僕もエピソードを作り込んで臨みました。だけど作り込むほど、質問に即答する『上手な面接』になって逆に落とされる。それっぽいことをそれっぽく話せるようにはなるんですけど」
そこでやり方を変えたといいます。
「面接担当者とコミュニケーションをちゃんと取ろうと。すると、落ちる企業はすぐダメで、相性がいい企業は最後まで進みました。僕の場合、商社は最終面接まで行くことが多く、銀行は全部1次面接でダメでした。もし銀行に就職しても、つらかったと思います」
彼は総合商社と大手ITの内定を得たものの、働きがいを考えてNPOに就職しました。
この先輩の場合、噓を言ったわけではありませんが、「作り込んだ」面接はうまくいかなかったというのです。「六人の噓つきな大学生」には、IT企業の元人事部長が「相手の本質を見抜くなんてね、保証しますけど、絶対に、百パーセント、不可能です」と吐露する場面があります。それも一面の真実でしょう。ただ、偽りを語る学生と本当の自分を語る学生では熱の伝わり方が違います。企業も必死ですから、しっかり見ています。仮に偽ったり無理に背伸びしたりして入社しても、ずっとは演じ続けられませんよね。活躍できる場所はきっとほかにあります。
●朝日新聞DIALOG「迷える就活生へ 幸せな仕事を見つけるトリセツ 面接ホンネ? 新卒が勝負? 就活支援のプロを囲む」はこちら
(写真は、「朝日新聞DIALOG」のサイトから)
「人事のホンネ」で採用担当者は
最後に、「人事のホンネ」から、採用担当者の「コロナ禍のガクチカ」についての発言をまとめます。参考にしてください。◆ソニー
コロナ禍を経て二分された面もあります。「ガクチカに書くことがない」とよく聞きますが、行動する学生は制約の中でも自分なりに考えてやります。一方でコロナを言い訳にする学生もいるので、逆に分かりやすくなった面もあるかも知れません。学生にとっては厳しいかもしれませんが。
◆ブリヂストン
サークルやアルバイトができなかったためか、ゼミや学業について書く学生が増えました。「思っていた学生生活ができなかった」「留学に行けなかった」と書いたESも多く苦悩を感じましたが、コロナ禍の局面でどう行動したか、どう切り替えたかに一人ひとりの個性が出ていました。もともとESや面接では実績のすごさを問うわけではありません。何かに直面したときにどう考え、どういう行動をとったのか。コロナ禍の前と同じように引き出せると思います。
「コロナ禍でサークル活動ができずWEBで工夫した」という話は多かったですね。それでも、たとえば「留学を途中でやめた」としても、「帰国して長期インターンを始めた」「帰国後はWEB留学を続けた」「休学した」など行動の分岐点があると思います。どっちがいい悪いではなく、本人が目的や目標をどう設定してその行動にたどり着いたかの経緯が大事です。
◆日本生命
我々、読む側としても、人となりを判断するのが難しかったですね。行動が制限され、たとえばサークル活動でも「WEBでどう頑張ったか」など「コロナ禍の工夫」を書いているESが多く、どうしても内容が似る傾向がありました。塾講師の体験が多かったのは、飲食のアルバイトと違ってコロナ禍でも続けられたからでしょうか。あとは、高校時代の話を書く人も増えた印象です。
大学でも高校でも、その話を掘り下げて、その人の考え方や価値観を聞くようにしていますが、ガクチカに高校時代の話を書いた人にも、大学時代のことも聞くようにしています。
行動が制限された中でも、何かを突き詰めることはできると思います。楽しいことでも部活でもアルバイトでも、「コロナだから何にもできない」じゃなくて、取り組んだことを書いてもらえれば人間の深みが出ると思います。
◆九州電力
コロナでアルバイトなどができなかった人もいるでしょうが、そんな中でも何ができるのかを考えて、実行に移せる人がチャレンジ精神のある人だと思います。たとえばレベルが一つ上の授業にチャレンジするとか、そういった小さなことも「ガクチカ」になると思います。実際、そういうことを語ってくれた学生もいました。
◆ミツカン
中学や高校時代のことを書く学生も増えています。もちろん大学生活だけで自分を語れるわけではないので中高の話でも大丈夫です。面接では「その挫折経験をどう生かしていますか」「似たような挫折経験が大学でもありますか」と聞くことはあります。
◆京セラ
「コロナでガクチカがない」と嘆いているかもしれませんが、それで終わりではなく「そんな中でこういうことをしたんです!」とアピールしてください。お互い腹を割って話せる工夫をしていくので、学生のみなさんもぜひ飾らないあなたの本音を聞かせてください。
こちらも読んでみてください。
●ガクチカに「学業」ってあり? コロナ禍で重視する企業続々【イチ押しニュース】
●「人事のホンネ」はこちらから
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