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企業の決算発表がピークを迎え、過去最高の利益を記録する企業が相次いでいます。総合商社や石油元売り会社はロシアのウクライナ侵攻による資源価格の高騰、自動車など輸出中心のメーカーは円安、海運は物流の混乱――などそれぞれの要因でもうけを大きく増やしました。一方、ゼネコンや電力会社には円安や資源高がマイナスに働いています。最新の業績がわかる決算記事は、経営状況だけでなく、強みと弱み、課題など「企業の今とこれから」がわかる「宝の山」です。新聞記事では業界別にまとめて取り上げることが多く、各企業のトピックはもちろん、ライバル企業同士を比べる情報も多いので業界・企業研究にうってつけです。決算記事や企業の決算資料を読み込んで、会社のことをもっと知りましょう。(編集長・木之本敬介)
商社・石油元売り・海運は絶好調!
決算は、企業が一定期間に「いくらお金を使って、いくらもうけたか、財産の状況はどうなっているのか」を明らかにする手続きです。法律で年に1回は行うことになっていて、日本ではお役所に合わせて4月から翌年3月を会計年度とする「3月期決算」の企業が多いため、今の時期に発表が集中します。最近の朝日新聞の決算記事から、業界・企業別の情報をざっとまとめます。【総合商社】5大商社は、最終的なもうけを示す純利益が9000億円台だった三菱商事と三井物産を筆頭に、過去最高益を大幅に更新した。石油、天然ガス、鉄鉱石、石炭などの値上がりが利益をふくらませた。各社は海外の鉱山開発の権益を持っているため、資源価格が上がると一気にもうけが膨らむ。自動車販売など資源以外の分野も好調だった。
【石油元売り】原油高で以前に仕入れた在庫の価値が大きくなったことに加え、政府によるガソリン補助金もプラスに。ENEOSホールディングス(HD)は純利益が前年の4.3倍になりそうだと発表。出光興産は純利益が前年の約8倍で過去最高、コスモエネルギーHDも過去最高を記録した。
【海運】コロナ禍での世界的な巣ごもり需要や物流網の混乱で、コンテナ運賃が以前の数倍に高騰。日本郵船の純利益が業界で初めて1兆円を突破し、過去最高だった前年の7.2倍になるなど、各社とも記録的な利益水準に。商船三井は3.7倍、川崎汽船も5.9倍になった。ただ、各社ともコロナ禍が収束するにつれ、コンテナ需要も一段落し利益もしぼむとみており、2023年3月期の純利益は3社とも減益を予想した。
トヨタは営業利益3兆円、モノづくり企業として過去最高
輸出に強い製造業は絶好調でしたが、技術開発などで国際競争力が急に高まったわけではなく、円安に一時的に助けられた形で、今後の業績は為替相場に左右されそうです。【自動車】トヨタ自動車は、本業のもうけを示す営業利益が前年比36.3%増の2兆9956億円となり、6年ぶりに過去最高を更新。世界販売が堅調だったうえ、円安がもうけを膨らませた。ただ、原材料価格の高騰で2023年3月期は2割の減益を見込む。3兆円に迫る営業利益は日本のモノづくり企業として過去最高。純利益2兆8501億円、売上高31兆3795億円も過去最高を更新した。世界販売は4.7%増の約951万台と過去2番目の高水準だった。
ソニーの営業利益1兆円超は史上2社目
【電機】ソニーグループは、営業利益が初めて1兆円超に。SMBC日興証券によると、国内製造業ではトヨタに次ぎ2社目。巣ごもり需要でゲームが稼ぎ頭となるなどエンタメ事業で半分以上を稼いだ。日立製作所は純利益が前年比16.3%増の5834億円で、2年連続で過去最高に。送配電設備などのエネルギー関連の受注が増えた。オリンパスは純利益が前年の約9倍と過去最高。海外で内視鏡などの販売が好調だった。パナソニックHDは、米国の電気自動車(EV)大手テスラなどに向けた車載電池が牽引した。空気清浄機やテレビ、冷蔵庫など家電製品に強いシャープは、巣ごもり需要の反動減があったが、パソコン向けのディスプレーなどが増益に貢献した。【電子部品】世界的に需要が高まり、TDKは売上高、純利益ともに過去最高。自動車部品やスマホ向け電池などが売れた。村田製作所の村田恒夫会長は「(高速通信規格の)5G端末が伸びる。EVも生産台数は1.5倍になると見込む」と話す。
【半導体】半導体製造装置大手の東京エレクトロンは売上高、純利益ともに過去最高。半導体の世界的な需要の高まりで大きく伸びた。同業のアドバンテストも売上高と純利益が過去最高を更新した。
ANA、JAL、JR……光も
観光関連は依然として苦しいものの、コロナ禍の落ち着きで光も見えてきました。【航空】ANAHD、日本航空(JAL)とも純損益は2年連続の赤字だったが、前年より額は縮小した。国際線の利用がコロナ禍前と比べて約9割落ち込んだままで、国内線も緊急事態宣言が解除された2021年10~12月ですら5割ほどの回復にとどまった。ただ、入国制限も緩和に向かっており、ANAHDは9月までに国内線の旅客がコロナ禍前の水準に、JALも10月以降に95%の水準になると予想。2023年3月期はいずれも黒字回復を見込む。
【鉄道】JR東日本、JR東海、JR西日本の3社も純損益が519億~1131億円の赤字だった。テレワークの広がりや出張の減少で、新幹線・在来線ともに利用が低調だったためだ。2023年3月期中に運輸の収入や定期を除く収入がコロナ禍前の8~9割まで戻ると見込む。
【旅行】近畿日本ツーリストやクラブツーリズムを展開するKNT-CTHDは純損益が3年連続の赤字だが、額は前年から縮小した。政府の観光支援策「Go To トラベル」の再開が見通せず、外国人観光客の受け入れ再開も不透明だ。主力の旅行業に代わって業績を下支えしたのは、PCR検査やワクチン接種の受け付けといった新たな事業で、各社とも新規事業を強化している。
【レジャー】東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは、前年541億円の赤字だった純損益が80億円の黒字に。全体の入園者数は1205万人と前年の1.6倍に増えた。
【流通】阪急阪神百貨店を展開するエイチ・ツー・オーリテイリングは純損益が3年ぶりに黒字に転換。荒木直也社長は「3月後半から予想を上回る消費マインドの急回復が起きている」と期待する。
(写真は、決算会見をするANAHDの芝田浩二社長=2022年4月28日、東京都港区)
不動産好調、ゼネコンは資源高で
不動産が好業績を記録したのに対し、ゼネコン大手は資源高に苦しみました。【不動産】三菱地所と住友不動産は純利益が過去最高に。三菱地所はJR東京駅近くに大規模オフィスビル「常盤橋タワー」が開業したほか、分譲マンションの販売も良かった。住友不動産の純利益は9年連続で過去最高を更新。新たなオフィスビルが稼働し、中古住宅の仲介事業も貢献した。「ウッドショック」と呼ばれる木材不足で新築戸建てやリフォームの価格は上がったが、受注棟数は増えた。
【建設】大手ゼネコンは都市部の再開発が続き工事の受注は好調だが、セメントや鉄骨など資材価格が上がり、減益になったところもある。大林組、清水建設は純利益が減った。
(写真は、「常盤橋タワー」=2021年7月、東京都千代田区)
電力5社赤字 燃料高騰響く
【電力】大手電力10社の決算は燃料価格の高騰で経営が悪化、東北、北陸、中部、中国、四国の5社の純損益が赤字となった。東京電力HDの純利益は、前年比96.9%減の56億円。福島第一原発事故の賠償や廃炉費用をまかなうための資金の確保が難しくなっている。業績不振が続けば、電気料金の値上げや税金の投入など新たな国民負担が生じる可能性も。成長分野と位置づける再生可能エネルギー事業も苦しい。【IT】巨額の赤字を記録したのはソフトバンクグループ(SBG)。前年は国内企業過去最高の4.9兆円だった純損益が、1兆7080億円の赤字に。上場企業では過去2番目の規模。ロシアによるウクライナ侵攻などで世界的に株式市況が悪化し、投資損失が3兆4347億円にのぼった。孫正義会長兼社長は記者会見で経営の「安全運転」を強調しつつ、円安や金利の動きなどは目先の変化だとし「惑わされずに長期的な進化を信じて情報革命に取り組んでいきたい」と語った。
円安については、こちらも読んでみてください。
●「悪い円安」が進む? 今さら聞けない!円安のキホンのキ【時事まとめ】
(写真は、SBGの孫正義氏。「守り」という言葉を前に決算会見を始めた=2022年5月12日、東京都港区)
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