2022年04月27日

初任給アップする企業続々 業界でこんなに違う!給料の比べ方【イチ押しニュース】

テーマ:経済

 新入社員の初任給を引き上げる企業が相次いでいるという記事が朝日新聞に載りました。みなさんが入社して最初にもらう給料の話ですから、気になるニュースです。働くのはお金のためだけではないでしょうが、やはり給料が高い企業は魅力的ですよね。今どうしてこういう動きが出ているのでしょうか。コロナショックを越えて企業の採用意欲が高まり、コロナ後を見据えた人材獲得競争が本格化してきた表れと言えそうです。日本の賃金は30年間ほとんど上がっておらず、経済協力開発機構(OECD)の調査によると、年間の平均賃金424万円は35カ国中22位。岸田政権が企業に賃上げを促すなど政治問題になっていることも背景にあります。そもそも給料の額は、業界や企業によってかなり異なります。初任給の違いは数万円でも、業界によっては数十年後に年収に数倍の差がつくこともあります。一方で給与体系は会社によって異なるので、その後の上がり方はさまざまです。初任給アップのニュースを機に、業界や企業別の給料の比べ方をお伝えします。(編集長・木之本敬介)

 「就活ニュースペーパー」はゴールデンウィーク期間中、更新をお休みします。5月9日(月)の「週間ニュースまとめ」から再開する予定です。

21万円→30万円の企業も

 最近の朝日新聞の記事から、2022年春の新入社員の初任給を上げた企業を紹介します。
大成建設 初任給を前年より1万円上げ、大卒は25万円、院卒は27万円に。同社は「建物やインフラの安全を守るためには技術職の確保が不可欠」と説明。建設業界では人手不足が慢性化しており、「業界としての魅力も高めたい」(広報)。
鹿島建設 初任給を大卒、院卒ともに5000円引き上げた。
セコム 初任給を一律3000円アップ。広報担当者は「コロナ後を見据えた。通信やセンサーを使った機械警備が主力になっており、研究開発など技術者を強化したかった」。
ダイキン工業 7年ぶりに初任給引き上げ。大卒は23万5000円と1万円アップ。広報担当者は「優秀層の人材を獲得するため」と話す。同社は換気ができるエアコンの売り上げが好調。
阪急阪神百貨店 1万円引き上げて22万2000円に。「ベースアップなどで社員全体の給与が上がる中、初任給の賃金体系を見直した」(広報)。3月期決算は10億円の営業赤字を見込むが、人材への投資を重視する。
旭酒造 純米大吟醸酒獺祭(だっさい)」で知られる山口県岩国市の酒造メーカー。大卒社員(製造部)の初任給を昨春の21万円程度から30万円に大幅アップ。輸出が好調で、2026年度の製造部の平均基本給を2021年度の2倍とする方針。
バンダイ 年収に占める月給の割合を増やす報酬制度見直しで、大卒初任給を従来の月22万4000円から29万円に。同社の年収には毎月の給与とボーナスが含まれる。

 リクルートワークス研究所が2021年12月に発表した調査では、初任給の引き上げに「すでに取り組んでいる」企業が21.8%、「取り組む予定である」企業が22.7%にのぼりました。

IT人材は新人で年収1000万円も

 DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)の進展で、とくにIT人材の獲得競争は激しくなっています。コロナ前から、NECが優秀な研究者には新入社員でも年収1000万円以上を支払う制度を導入、ソニーがAI人材の初年度年収を最大730万円とするなど、話題になってきました。この流れはさらに強まりそうです。大和証券は2022年4月入社から、初任給を月40万円以上(30時間分の固定残業代含む)にする制度を始めました。自社の資金で株や債券を運用する自己売買部門のトレーダーやIT分野に携わる「高度専門職」が対象です。それまでの総合職の基本給は25万5000円でした。成果重視の報酬体系でトレーダーなら年収5000万円になることもあるそうです。

年収ランキングは総合商社、コンサルが断トツ

 初任給は募集要項に明示されていますが、入社してから給料がどのくらい上がるのかは書いてありません。東洋経済新報社の「業界地図」には業界別の年収ランキングが載っているので参考になります。

◆2022年版「最新年収ランキング」のトップ10(東洋経済が推計した国内上場企業の40歳平均年収)
①総合商社 1257万円
②コンサルティング 1246万円
③海運 896万円
④医薬品 816万円
⑤不動産・戸建て・マンション 812万円
⑥建設 808万円
⑦半導体・製造装置・半導体材料 792万円
⑧飲料・乳業・酒類 786万円
⑧ゲーム 786万円
⑩ITサービス・クラウド 785万円

 総合商社とコンサルティングが断トツで、就活生に人気があるのも分かりますね。全業界の平均は658万円で、500万円を下回る業界もいくつかあります。

(写真は、「業界地図」と「就職四季報」)

ライバル会社を比べてみよう

「就職四季報」(東洋経済新報社)の冒頭には「平均年収ベスト100」の企業も載っています。
◆2023年版「平均年収ベスト10」の上位10社(カッコ内は平均年齢)
キーエンス(電機・事務機器) 1751万円(35.8歳)
ヒューリック(不動産) 1708万円(39.4歳)
三菱商事(商社・卸売業) 1678万円(42.7歳)
伊藤忠商事(商社・卸売業) 1628万円(42.0歳)
三井物産(商社・卸売業) 1483万円(42.0歳)
東京建物(不動産) 1389万円(42.6歳)
住友不動産(不動産) 1363万円(43.2歳)
住友商事(商社・卸売業) 1356万円(42.7歳)
ファナック(機械) 1314万円(40.2歳)
東京エレクトロン(電子部品・機器) 1309万円(44.3歳)

 初任給の後の給料の上がり方はさまざまです。「就職四季報」の各社ごとのページに「25、30、35歳賃金」を明示している企業もあり、ここを見ると年齢とともに給与がどう増えていくかのイメージをつかめます。最近は「能力・成果主義」の給与体系の企業が増えています。35歳については「最低~最高」額を載せている会社もあります。能力や成果をどの程度重視し、人によってどのくらい差がつくのかが分かります。巻末には1057社の初任給が業界別に載っているので、同じ業界のライバル社の違いを比較できます。「業界地図」も「就職四季報」も大学のキャリアセンターに置いてあるはず。思いっきり活用しましょう。

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