ニュースのポイント
東京のデパート「松屋銀座」が、高い技術を持つ国内の中小繊維工場を守ろうと奮闘しています。そこには、メード・イン・ジャパンに誇りをもち、技術を守っていこうという百貨店の心意気がありました。
今日取り上げるのは、経済面(6面)の「地域発企業発/百貨店が守る 繊維の技/松屋銀座、中小工場を支援」です。
記事の内容は――松屋銀座の「カリスマバイヤー」宮崎俊一さん(47)は2011年、長崎県平戸市の縫製工場「アリエス」を訪ねた。操業40年余、従業員約100人。大手ブランド名でスーツをつくってきたが、中国企業などに切り替えられ操業率はかつての7割に。スーツのデザインは流行遅れだったが着てみると心地よい。宮崎さんはアイロンがけ技術のすばらしさを感じ、この工場を守る決心をした。「スーパークールビズ」のスーツを発注し、松屋銀座で注文をとると2週間で500着に。工場はフル操業となり今年度の黒字も見えてきた。ほかにも岡山県の縫製工場、大阪のスーツ職人、愛知の生地屋を支援する宮崎さんは「メード・イン・ジャパンの逆襲をしたい」と言う。松屋銀座が繊維工場を守る姿勢を鮮明にしたのは2年前、太田伸之さん(60)を執行役員に招いてから。太田さんによると、いくつもの有名欧州ブランドの衣服は日本の中小零細工場でつくられ、日本の技術のすばらしさを認める。一方で日本のアパレルメーカーは価格競争に走り、中国などで生産を強化。経済産業省のまとめでは、国内の繊維産業の事業所は2010年で約4万4000と前年から2000減った。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
太田さんが社長を務めていた「イッセイミヤケ」の社是は「メード・イン・ジャパンを守る」だそうです。記事に登場する宮崎さん、太田さんの仕事は「日本の高い技術を守るんだ」という強い決意に支えられています。こんな誇りや志を持って働けるのは素敵なことですよね。みなさんも会社や職種を考えるときに、例えば、伝統文化を守りたい、新しいトレンドを自分の手で生み出したい、生活を少しでも便利にしたいといった自分なりの考えやこだわりがあるなら、この仕事を通じてそれを実現できるだろうか、と考えてみてはどうでしょう。また、この記事で松屋銀座に興味を持った人がいたとしたら、「宮崎さんらの心意気に共感した」というのは志望動機の出発点になります。新聞記事を仕事選びのきっかけとして活用してください。
ただし、松屋銀座は慈善事業をしている訳ではありませんから、売り上げ、利益を上げなければなりません。縫製、裁断、ミシン縫い、アイロンがけなどの高い技術があっても、流行遅れのスーツでは売れません。その技術をはやりのスーパークールビズに結びつけて、ヒットを生んだわけです。技術を守るためにも、高い技術に甘んじることなく、新たな発想や創意工夫によって売れる商品を作らなければなりません。
今日の経済面(7面)には、英国政府の「製造業の将来」プロジェクトの主要メンバーであるケンブリッジ大学のスティーブ・エバンス教授のインタビューが載っています。英国では、国内総生産(GDP)に占める製造業の割合が1990年から半減して10%になってしまったことに危機感が高まっています。教授は「労働コストが低い国に工場を移す戦略は怠け者の考えだ。そろそろやめなくてはならない。問題は生産性を上げられるかどうか。高い技術を使って生産性を上げる力は先進国にこそある」「今の製造業は設計、開発、部品調達、製造、マーケティング、販売といった様々な分野をいろんな国の間で調整して競争力を高めている。そうした調整能力が先進国には備わっている」と語っています。
また、今日の22面から24面には、化学メーカー22社の広告が並んでいます。各社一押しの製品や独自の技術について書かれていますから、企業研究に役立ててください。
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