ニュースのポイント
アメリカで、新聞記者やテレビ局の記者に情報を漏らした疑いで、連邦政府などの公務員らが逮捕されたり罪に問われたりするケースが相次いでいます。こうした政府などの内部情報は、報道機関による権力の監視に欠かせないため、「報道の自由への侵害」だとして米国の記者の間で危機感が高まっています。いったい何が起こっているのでしょう。
今日取り上げるのは、3面の「米 スクープに圧力/オバマ政権、情報源を次々訴追/技術発達、容易に特定/記者に危機感、対抗策探る」です。
記事の内容は――オバマ政権下で、報道機関の情報源がスパイ防止法違反などの疑いで訴追される事例が相次いでいる。2009年の北朝鮮の核実験に関する秘密報告を報じた報道に関しては、米連邦捜査局(FBI)が国務省の電話や職員の端末記録、同省ビルの出入り管理記録から同省担当記者と接触した職員を特定した。オバマ政権前、こうした情報源の訴追はベトナム戦争に関する秘密報告書漏洩(ろうえい)など3件しかなかったとされるが、オバマ政権の4年間で6件あり、さらにこの6月、米中央情報局(CIA)元職員エドワード・スノーデン容疑者に逮捕状が出た。米国の記者たちの間では、政府に知られることなく内部告発者と連絡を取り合うにはどうすればいいのか、真剣な議論が交わされている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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報道機関の大切な役割のひとつに「権力監視」があります。政府など行政機関は、自らに都合のいい情報は積極的にPRしますが、それ以外の情報は基本的に表に出したがりません。不正など都合の悪い情報はなおさらです。こうした情報は、行政内部の人が報道機関に告発することによって明らかにされることが多くあります。記事にもあるように、米国で内部告発者の秘密情報によって明らかになったものとしては、大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件(1972年)、ベトナム戦争終結を早めたともいわれる国防総省秘密報告書の報道(71年)、米国家安全保障局(NSA)による令状なしの通信傍受に関する報道(2005年)が有名です。
米国の捜査当局は、かつては記者を呼び出して証言を求め、証言を拒否すれば刑務所に送るという姿勢で情報源を明らかにさせようとしました。しかし「取材源の秘匿」は記者にとってもっとも大切な職業倫理で、簡単に話す記者はいませんでした。ところがIT技術が進化し、今では米政府が電子メールの通信記録、携帯電話の通話内容や位置情報を以前よりはるかに簡単に入手できるようになり、オバマ政権が情報源の特定に積極的に活用し始めたわけです。
日本でも今、安倍政権が国の機密情報を流出させた公務員への罰則を強化する秘密保全法案を準備しており、国民の知る権利や取材の自由を脅かしかねないとして問題になっています。対岸の火事ではありません。
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