ニュースのポイント
高い経済成長を続ける東南アジアで、日本の銀行の動きが活発になっています。メガバンクは東南アジアに進出した日本企業の支援だけでなく、現地の銀行への投資にも乗り出しました。中小企業の進出を追って地方銀行も現地事務所を設けています。その狙いは……。
今日取り上げるのは、経済面(11面)の「アジア 相次ぐ銀行買収/東京スター銀、台湾大手傘下に/高い成長 日本勢も進出」です。
記事の内容は――アジアの金融業界で国境を超えた買収が相次いでいる。台湾大手の中国信託商業銀行は中堅地方銀行の東京スター銀行(東京)を買収する。外資銀行が邦銀を買うのは初めてで、日本企業のアジア進出を手助けするビジネスを手がける。一方、日本の大手銀行は東南アジアの銀行に買収攻勢をかけている。三菱東京UFJ銀行はタイの大手「アユタヤ銀行」の買収を発表。邦銀がアジアの銀行の経営権を握るのは初めてだ。三菱UFJは日本、米国に次ぐ収益の柱としてアジアを強化する。みずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)は2011年にベトナム大手銀「ベトコンバンク」への出資を決め、三井住友銀行も今年5月、インドネシア大手銀「BTPN」への出資を決めた。各金融グループの狙いは、アジアの経済成長を取り込み収益を拡大することだ。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
日本の銀行の海外事業は、欧米、中国に進出する日系企業への融資が柱でした。ただ、欧米の経済低迷と中国の賃金上昇、日中関係の悪化で、今後大きな伸びは見込めません。近年、東南アジアに工場を建てる日系企業が増えていることから、銀行も進出して日系企業への支援体制を整え、東南アジアの高い経済成長を取り込もうとしているわけです。国際通貨基金(IMF)の見通しでは、2013年の東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要5カ国(インドネシア、マレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム)の経済成長率は5.5%で、インド(5.9%)に迫ります。ASEANは2015年までに経済統合され、投資や貿易がさらに活発になるとみられています。
メガバンクをはじめとする大手銀行は日系企業の支援だけでなく、現地の金融機関の買収、業務提携にも乗り出しています。三菱UFJは、これまでの米州、欧州、アジアの海外3本部体制から、東南アジアを担当する本部を新設します。金融機能が集中するシンガポールに、本部長として常務を常駐させ、現地での意思決定や調整を素早くする方針です。三井住友信託銀行も昨年末、シンガポールを拠点とする大手銀行グループ「DBS」のインドネシア法人と業務提携しています。りそなホールディングスはマレーシアの大手銀「パブリックバンク」との業務提携を発表しました。
地方銀行も、滋賀銀行、北陸銀行(富山市)、横浜銀行、福岡銀行などがこの1~2年の間にタイ・バンコクに事務所を開設するなど、積極姿勢が目立ちます。大手製造業の東南アジア進出を中小企業が追い、さらにそれを地方銀行が追う構図。産業と金融が相互に作用しながら成長するという、かつて国内の成長の原動力になった好循環の輪が東南アジアを舞台に回り始めた、との見方もあります。
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