2020年04月10日

「内定取り消し」への対処法 内々定は簡単に取り消される!?【イチ押しニュース】

テーマ:就活

 新型コロナウイルスの感染拡大は、世界で「第2次大戦後最大の危機」とまでいわれる事態に発展しました。リーマン・ショック以降続いていた緩やかな景気回復は終わりを告げました。就職戦線も、「超売り手市場」とまで呼ばれた学生優位の状況が一変しそうです。コロナ・ショックで経営に行き詰まる会社も多く、内定取り消しや突然の解雇が問題になっています。大学4年生の中には、すでに内々定を得ている学生もいると思いますが、会社の経営状況次第ではこの先どうなるかわからない状況です。内定取り消しを告げられたらどうしたらいいか、対処法をアドバイス。「内定」と「内々定」の違いについても説明します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、「新卒応援ハローワーク」のチラシ)

内定取り消し急増

 厚生労働省の4月2日時点のまとめでは、3月卒業の高校生14人と大学生など42人の計56人が22社から内定を取り消されました。業界の内訳は「卸売業・小売業」が3社27人、「宿泊業・飲食サービス業」が6社13人などで、営業自粛の影響を直接受ける非製造業が目立ちます。景気悪化や災害のたびに内定取り消しはありましたが、ここ数年は景気の緩やかな回復や人手不足で減少傾向にありました=グラフ。2018年度卒(2019年卒)はリーマン・ショック後で最も少ない35人だったので、急増しているのは間違いありません。

内定を取り消されたら?

 内定取り消しについて、谷真介弁護士による解説が朝日新聞デジタルに載っています。要点を紹介します。
◆内定の段階で労働契約が成立しているため、内定取り消しは基本的に解雇と同じ。
◆会社側の事情での内定取り消しは原則として無効。学生側に最終学歴や資格などの詐称、大学を卒業できなかったといった事情があれば、契約の前提となる条件違反となるため、会社は内定を取り消すことができる。
◆新型コロナの影響で会社が倒産しかねない状態であっても、取り消しが認められるためには、①内定取り消しの必要性 ②会社が内定取り消しを回避する努力を尽くした、といった要素をふまえて妥当性が厳しく判断される。
◆会社が内定者に内定辞退を勧めるケースもあるが、安易にその場で同意すべきではない。家族や弁護士などと相談する。
◆会社側が話し合いに誠実に応じない場合、取り消しは無効だとして内定者の地位確認を求める訴訟を起こしたり、損害賠償を求めたりすることもできる。

 つまり、会社の都合で安易に内定を取り消してはいけないと、法律や判例で保護されているのです。内定取り消しを告げられても簡単に諦めないことです。まずは大学のキャリアセンターハローワークに相談しましょう。厚生労働省は内定取り消しをした企業などにはハローワークへの連絡を求めていて、雇用維持のための企業に対する助成金の拡充などについて説明して再考を求めると、撤回する例も複数あるといいます。

内定取り消し者を追加・臨時募集する会社も

 この非常事態を受けて、4月1日入社の直前に内定を取り消された人や突然解雇された人を対象に、新入社員や職員の追加募集、臨時募集を始めた企業や自治体もあります。困っている人を助ける社会貢献の意味合いもありますが、それだけではありません。内定を取り消された人はある企業が優秀な学生と認めて一度は採用を決めた人ですから、実は他の企業や自治体にとって魅力的な人材である可能性が高いと考えられます。この数年の「売り手市場」で予定採用数を採りきれず、人手不足に陥っていた企業にとってはチャンスでもあるわけです。募集している企業や団体の情報についてもハローワークが頼りになります。

「内々定」は「内定」じゃない!

 さて、現役の就活生の話に移りましょう。いま就活のまっただ中にいる大学4年生や大学院2年生で、正式な内定を得た人は少ないはずです。口頭で「内定」と告げられた人も、実際には「内々定」であるケースが多いと思います。政府が各企業に順守を呼びかけている就活スケジュールでは、正式な内定は「内定解禁日」の10月1日まで出せないことになっているからです。内々定はまだ労働契約が成立する前の段階なので注意が必要です。「事情が変わった」と言われる可能性がないとは言えません。企業と学生が内定通知と誓約書などを交わしてはじめて労働契約が成立し、正式な「内定」となります。内定通知書は10月以降の内定式で渡されるのが一般的です。

 学情の2021年卒内々定率調査によると、2020年3月時点(3月1日~10日に調査)で内々定を1社でも得ている学生は15.6%と、前年同時期を3.2ポイント上回りました。とくに理系は19.8%と2割に迫る高い数字でした。今年の就活はスタートが早かったため、新型コロナ問題が広がる前に内々定までこぎ着けた学生が多かったということですね。この時点で就職活動を続けている人は74.8%で、前年同期の97.8%を大きく下回りました。これは、内々定先に就職すると決めて就活を終えた学生がいる一方、新型コロナの影響で就活を始められない学生も多数含まれていたと考えられます。

 かつてない異常事態のもとでの就活です。みなさんも大変ですが、企業も手探りで選考を進めていますから、なかなか先が読めません。ただ、4月7日に緊急事態宣言が出てからは、採用選考は今まで以上に思うようには進まなくなります。まだ内々定を得られていない学生は、時間の猶予が少しできてチャンスが広がったと考え、WEBによる説明会や選考に積極的にチャレンジしてください。すでに内々定を得ている学生も、業界・企業によっては安心は禁物です。自分からも連絡をとって状況に変化がないか確認しましょう。さらに、新たに志望業界を広げて選考を受けてみることをお勧めします。

コロナ禍の「WEB就活」乗り切る方法…エントリー増やせ!【イチ押しニュース】も読んで下さい。

(写真は、内定式で内定通知書を受け取る学生=2019年10月1日、徳島市の阿波銀行)

◆人気企業に勤める女性社員のインタビューなど、「なりたい自分」になるための情報満載。私らしさを探す就活サイト「Will活」はこちらから。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別