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「就活ニュースペーパー」は来週は休載し、19日(月)から再開します。(編集長・木之本敬介)
いつ、どの企業を、どれくらい…
今回問題になったのは、リクルートキャリアが2018年3月に始めた「リクナビDMPフォロー」というサービスです。内定辞退を減らしたい企業が、前年の辞退者の名簿をリクナビに渡します。リクナビは一人ひとりが、いつ、どの企業を、どれくらい閲覧していたか、人工知能(AI)で分析します。たとえば、内定後も他の企業を閲覧していたというようなデータですね。分析結果をもとに、その企業の採用試験を受けている就活生が内定を辞退する確率を1人ずつ5段階で予測。この情報を1年あたり400万~500万円で大企業を中心とした38社に販売していました。対象とした就活生の数は「非公表」です。
このサービスに対し、政府の個人情報保護委員会が「学生への説明が不明瞭」と指摘。リクルートキャリアは当初、リクナビ登録時にデータ利用についての同意を学生から得ているとしていましたが、再調査の結果、「第三者第三者に情報を提供する」との説明が一部の学生にはなかったとして、個人情報保護法に違反していたことを明らかにしました。サービスを廃止し、該当する学生7983人にはおわびのメールを送り、企業には販売した個人情報を削除するよう依頼したそうです。
あいまいな説明
リクルートキャリアは、サービスの狙いは「辞退する可能性が高い就活生を引き留めるための手段」で、採用の合否には使わないと合意した企業だけに情報を提供したと説明しています。しかし、実際に合否に使われたかどうかは外部からは分かりません。「辞退する確率が高い」という個人データが、選考でマイナスに働いた可能性は否定できないわけです。7983人以外の数十万人の会員についても、リクナビ登録の際には「個人情報を使用」「採用活動補助のための利用企業などへの情報・提供」といったあいまいな説明に同意を得ただけで、「内定辞退率の予測に使う可能性がある」と明記していたわけではありません。そもそも、会員登録する際に細かな規約を隅から隅まで読む人は多くないでしょう。今回は学生にとってプラスに働くことは考えられないデータですから、同意の有無に関わらずやってはいけないことではないか、との指摘もあります。
「GAFA」と「GDPR」
個人データをめぐっては、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)と呼ばれる米国のIT大手が、利用者が意識しないまま検索や購買の履歴などを握り、「ビッグデータ」として生かし、巨額の利益を得てきました。一方で、データの流出や利用法で様々な問題を起こし、批判を受けています。これに対し、欧州連合(EU)が昨年、「一般データ保護規則(GDPR)」で個人から明確に許可をもらわない限り、企業にデータを使えなくするようにするなど、ビジネス利用と個人情報保護が常にせめぎ合っています。ヤフーとLINEが「信用スコア」開始
個人データビジネス関連のニュースから、最新動向を二つ紹介します。◆信用スコア ヤフーとLINEが開始。生年月日、職業、年収、利用回数、ネット通販の利用額などのデータから、個人がネットサービスをどう使っているかをAIが分析。提携する外部企業に信用スコアを提供する。点数が高い人は企業から特典がもらえ、企業はよい客を確保できる。LINEはスコアによって融資額や金利が変動する個人向けローンを始める予定。信用スコアを提供するときは利用者の同意を得るとしている。ヤフーは、思想や信条などは分析せず、「ユーザーの不利益になる利用はしない」と話している。
「情報銀行」第1弾認定
◆情報銀行 個人から預かった情報を企業に提供して、その対価を個人に還元するビジネス。年齢や購買履歴、健康関連などのデータを顧客から預かる。本人の同意を得たうえで、顧客ニーズを商品開発に生かしたい企業などに手数料をとって提供。情報提供した個人に、金銭やクーポンなどの見返りを渡す。第1弾として、三井住友信託銀行とイオンのグループ企業が6月に認定された。三菱UFJ信託銀行、三井住友銀行のほか、みずほ銀行とソフトバンクが設立した「Jスコア」も事業展開を予定している。
今回は良しあしは別にして、個人データを活用した「内定辞退率予測」などというものでビジネスが成り立っていたことに驚かされました。他にも、私たちが思いも付かないようなデータがすでに売り買いされているのかもしれませんが、AIの進化とともに、個人データビジネスは今後あらゆる業界に波及していきます。リクナビ問題をきっかけに、個人情報保護に加え、消費者目線にとどまらない「ビジネス目線」を意識して、志望業界・企業との関連、取り組みを調べたり、考えたりしてみましょう。
●情報銀行については「個人情報が取引対象に 電力、旅行、印刷大手も「情報銀行」に参入」(業界研究ニュース)参照
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