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「米中貿易戦争」が激化しています。自分には関係ない遠い世界の出来事と思っている人は、「ボーっと生きてんじゃね-よ!」とチコちゃんに叱られます。米中関係の余波がみなさんの就活を直撃するかもしれないのです。いったい何がどうなっているのか、大きな流れを押さえましょう。わかりやすく解説します。(編集長・木之本敬介)
(写真は、米国のトランプ大統領〈左〉と中国の習近平国家主席〈右〉)
(写真は、米国のトランプ大統領〈左〉と中国の習近平国家主席〈右〉)
何が起きてるの?
まず、何が起きているのかを整理します。中国は、世界の自由貿易体制を進める世界貿易機関(WTO)に2001年に加盟後、安い人件費を強みに輸出を伸ばし、「世界の市場・工場」に成長しました。2017年の世界輸出に占める割合は13%を占め、8.8%の米国を上回りトップです。ただ、国家が経済をコントロールする社会主義国である中国は公正な貿易を目指すWTOのルールを守らず「ずるい」と批判されてきましたが、なかなか改善しません。そこに登場したのが米国のトランプ大統領です。巨額の貿易赤字を抱える米国は中国に富を吸い取られていると主張。多国間交渉が嫌いで「アメリカファースト」を掲げるトランプ氏が強硬手段に出たわけです。問題にしているのは、中国が米企業の知的財産権を侵害している、国有企業への補助金は不公正、外国企業に技術移転を強制している――といった点です。まず2018年7月、中国のハイテク製品、電子部品を米国に輸入する際に25%の高い関税をかけました。品目を広げ、今月になって第3弾を発動。6月に第4弾を発動すれば、中国からの輸入品のほぼすべてに高関税がかかるようになります。この制裁に対し、中国も米国からの輸入品に報復関税をかけて「戦争」状態に陥っているのです。
米中の「覇権争い」
さらに米国は、中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)への制裁にも乗り出しました。高性能部品を米国から調達しているファーウェイへの部品輸出を規制する内容です。こちらは、ファーウェイが中国共産党や人民解放軍の影響下にあり、「米国の安全保障を損なう活動に関与しているリスクが極めて高い」という理由です。ファーウェイは次世代通信規格「5G」や人工知能(AI)に強く、背景には米中の「覇権争い」があります。中国は2020年代末にも米国を抜いて世界一の経済大国になるといわれていますが、軍事力、技術力でも急速に米国に迫っているからです。米中対立には、「世界一」をめぐる歴史の大きな流れがあることも知っておきましょう。(写真は、ファーウェイのロゴ=中国広東省東莞市)
日本の部品→中国でスマホに→米国へ
世界1位の米国と2位中国――経済大国同士の「戦争」は、世界の経済に甚大な影響を与えます。中国から米国への輸出品に高い関税がかかるとどうなるでしょう。米国の消費者は今までのように中国製品を買わなくなるので、中国企業の生産は減り経済成長は鈍化。すでに中国の消費の伸びが鈍くなっています(グラフ)。その結果、「世界の市場」に輸出する多くの国の企業も苦しくなりつつあります。国際通貨基金(IMF)は、米中が互いの国からの輸入品すべてに25%の関税をかけた場合、短期的には両国間の輸出が3割ほど減り、米国の国内総生産(GDP)を最大0.6%、中国も最大1.5%押し下げると試算しています。中でも「世界の工場」に多くの部品を供給しているのが日本の企業です。中でも、米国の制裁第4弾に盛り込まれたスマートフォン(スマホ)にたくさん部品を供給。中国でつくられる米アップルのiPhone(アイフォーン)に関わる日本企業は数百社にのぼります。パナソニック、シャープ、TDK、村田製作所、日東電工など多くの企業が売り上げを減らしたり、今年度の売り上げ予想を引き下げたりしています。大和総研は、米国の関税制裁で中国経済が減速すれば、日本の輸出を最大で年間1%近く押し下げる恐れがあると試算しています。
ファーウェイのスマホ向け部品の納入額も年々増え、2018年は約7000億円、2019年は8000億円超との見方もあるほどです。米国のファーウェイ制裁では、日本企業が米国から部品を輸入し加工して中国に輸出する場合にも適用されるかもしれません。大手総合商社、双日の藤本昌義社長は「今後、日本から中国に出す半導体技術を含む機器の輸出に(米国が)どういう網をかぶせてくるのかを非常に懸念している」と語りました。液晶大手のジャパンディスプレイ、素材大手の住友電工、半導体メモリーの東芝メモリ、NTTドコモなども影響を心配しています。
(写真は、ファーウェイが発表した折りたたみスマホ「Mate X(メイト・エックス)」=2月27日、バルセロナ)
すでに影響が
国内の経済への影響はすでに出ています。5月14日に内閣府が発表した今年3月の景気動向指数では、これまでの「下方への局面変化」を「悪化」に引き下げました。「悪化」の判断は6年2カ月ぶり。東京証券取引所の上場企業の2019年3月期決算でも、自動車や素材などのメーカーを中心に、売上高、利益が伸び悩んでいます。SMBC日興証券の集計と推計では、最終的なもうけを示す純利益が3年ぶりに前年より悪くなる見通しです。自動車では、大手7社のうち三菱自動車を除く6社が減益でした。中国を「生産拠点」としてきた長期戦略を見直す動きも出始めました。複写機大手のリコーは米国向けの生産拠点を中国からタイに移す用意をしています。三菱電機は米国向けのレーザー加工機の生産を中国から名古屋市内の工場に移し始めています。グループ会社が中国で生産した油圧ショベルを北米に輸出している神戸製鋼所は、日本などでの生産に切り替える方針です。
さあ、もう分かったと思います。この数年、学生優位の「売り手市場」が続き、過去最高水準の就職率を記録してきた就職戦線に陰りがでる可能性が出てきました。米中の対立は対岸の火事ではありません。世界はつながっています。今後注目してほしいのは、6月末に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20G20)サミットです。トランプ大統領と中国の習近平(シーチンピン)国家主席の首脳会談が実現するのか、そこで対立解消への道筋をつけられるのか。「自分ごと」としてニュースをチェックしてください。志望企業の中国との関わりについても調べてみましょう。
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