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新元号「令和(れいわ)」で国内が盛り上がっています。5月1日の改元に向けてお祭りムードが続きそうで、新たな「改元ビジネス」も次々に生まれています。改元前後が今年の採用選考のヤマ場ですから、面接で話題にのぼるかもしれません。そもそも元号って何なのか、改元のイロハを知り、志望業界との関連も考えてみましょう。(編集長・木之本敬介)
(写真は、新元号「令和」を発表する菅義偉官房長官=1日、首相官邸)
(写真は、新元号「令和」を発表する菅義偉官房長官=1日、首相官邸)
「歴史が変わる瞬間」体感
NHK総合で1日に生中継された新元号発表の記者会見の最高視聴率は、関東地区で27.1%という高い数字でした。民放各局のほか、ネット中継、街頭の大型ビジョンで見た人も大勢います。新聞各紙は号外を発行。全国の主要駅では人だかりができ、取り合いで混乱したところもあるほどでした。朝日新聞も20万部を発行し全国130カ所余で配布しました。昭和から平成に変わったときは「天皇崩御」後の自粛ムードの中での発表だったため、華やかさはありませんでしたが、今回は打って変わって祝賀ムードの中での改元です。あらかじめ定められたスケジュールに沿って「歴史が変わる瞬間」を体感できる、めったにない経験ということで世の中が沸き立っているように思います。
(写真は、新元号発表の中継を見る人たち=4月1日午前11時41分、東京・新宿)
「万葉集」って何だっけ?
「令和」は、奈良時代に完成した日本に現存する最古の歌集「万葉集」から取られました。これまでの元号は確認されている限り、すべて中国の古典から取ったとされていて、日本で記された国書に由来する元号は初めてです。引用したのは梅の花の歌の序文で、歌人・大伴旅人(おおとものたびと)が大宰府長官時代に宴会を開いた時につくりました。た安倍晋三首相は菅義偉官房長官による発表の後に記者会見し「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ、という意味が込められている」と説明しました。万葉集は20巻から成り、約350年間にわたって詠まれた約4500首を集めた歌集です。額田王(ぬかたのおおきみ)、柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)、山上憶良(やまのうえのおくら)らが代表的な歌人(どこかで習ったことのある名前ですね)ですが、天皇から防人(さきもり)、農民まで幅広い歌人が含まれ地方の歌も多くあります。首相は「厳しい寒さの後に見事に咲き誇る梅の花のように、一人ひとりの日本人が、明日への希望とともに、それぞれの花を大きく咲かせることができる。そうした日本でありたいとの願いを込めた」と語りました。
そもそも元号って?
「平成」は天皇陛下が退位する4月30日で終わり、皇太子さまが新天皇に即位する5月1日から「令和」に改元されます。1979年に施行された元号法で「皇位の継承があった場合に限り改める」ことになっています。天皇の代替わりのときだけ改元する仕組みを「一世一元(いっせいいちげん)」といいますが、制度化されたのは明治時代からです。江戸時代までは、災害や疫病などが起きて縁起が悪いという理由から、一人の天皇が在位している間に改元した例もあります。幕末の孝明(こうめい)天皇時代には17年間で6回も改元。平安時代にハレー彗星の接近を天変地異だとして改元したこともあるそうです。そもそも元号は、東アジアの漢字文化圏に特有の制度で、元祖である中国の歴代王朝のほか、朝鮮半島、ベトナムなどで使われてきましたが、今でも続いているのは世界で日本だけです。日本では645年の大化の改新の「大化」が最初とされています。1300年以上の歴史を重ね、「令和」は248番目となります。
(写真は、天皇陛下即位30年および天皇、皇后両陛下ご成婚60年を祝う「木曜会」主催の音楽会に出席する天皇、皇后両陛下と皇太子ご夫妻=4月2日、皇居・東御苑の桃華楽堂、代表撮影)
企業にはビジネスチャンス
企業にとって改元は大きなビジネスチャンスでもあります。「令和」を入れたカレンダー、Tシャツ、コップ、お菓子などがすぐに売り出され、書類の「平成」を訂正する二重線と「令和」が同時に押せるゴム印も売れています。タカラトミーは「人生ゲーム」の令和版を6月にも売り出します。百貨店など小売店では、記念セールやイベントがたくさん開催されそうです。中でも活気づいているのは旅行、ホテル業界。4月末から5月初めにかけての「改元ツアー」や宿泊プラン、万葉集ゆかりの地を巡るツアーなどが目白押し。すでに、5月4日にある新天皇の即位後初の一般参賀と隅田川クルーズを組み合わせたツアー、平成最後の夕日を見るツアーなどが売り出されています。
出版業界では万葉集ブームが起きそうです。岩波書店は、新元号に引用された歌の序文がおさめられた岩波文庫「万葉集(二)」の注文が殺到し、重版を決めました。KADOKAWAは、角川ソフィア文庫「新版万葉集 一 現代語訳付き」と、入門書の「万葉集ビギナーズ・クラシックス 日本の古典」を8000部ずつ増刷します。年内には新たな万葉集関連本も出版されるでしょう。ジュンク堂池袋本店には「『梅花』の載っている本、ありますか」「改元を機に万葉集を学びたい」という電話や来店が続き、典拠の歌が載った文庫2冊はすぐに売り切れ。今後は万葉集のフェアも予定しています。
(写真は、新元号発表後さっそく出来上がった「令和」の金太郎飴=4月1日午後、東京都台東区)
「令和○○社」急増?
一方で、大変なのは企業やお役所のシステムを担うIT系の会社です。5月1日に「令和」に切り替わるようプログラムを変更しなければならないからです。「昭和」から「平成」への改元時に比べ、コンピューターが飛躍的に普及しています。システムの切り替えが遅れると混乱する恐れがあり、政府も注意を呼びかけています。さっそく「令和」を社名に入れた会社もあります。さいたま市の経営コンサルティング会社「YICコンサルティング」は新元号発表後、「令和コンサルティング」に変更し法務局に登記しました。調査会社「東京商工リサーチ」が企業情報を保有する国内約317万社を調べたところ、3月までは新元号「令和」を冠した企業はゼロでした。同社によると、社名に「昭和」を含む企業は2640社、「平成」も1270社あるそうです。これから「令和」を含む社名が増えていくに違いありません。
(写真は、改元に伴うシステム改修作業をする新宿区の担当課。東京都都の納税通知書は「令和」への変更が間に合わず「平成」のまま送る=4月2日、東京都新宿区役所)
「政治ショー」に批判も
世は大盛り上がりですが、安倍政権に対しては改元を政治利用しているという批判があることも知っておいてください。思想家の内田樹(たつる)さん(写真)は朝日新聞の記事でこう語っています。「令和という元号には政治的なにおいはしない。中立的な元号を選んでいただき良かった。問題は、政権が元号発表を政治ショー化したことだ。首相や官房長官ら現政権側が大量にメディアに露出し、お祭り気分をあおることで、政治的な難問は棚上げされた。統一地方選の最中でありフェアでない。元号のような文化的な制度にこのように露骨に政治的な策略を絡めたことについては、私は元号擁護論者として強い不快感を覚えている」
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