2013年07月05日

美白化粧品回収、危機で問われる企業対応

テーマ:経済

ニュースのポイント

 カネボウ化粧品とその子会社が美白成分入り化粧品約45万個を自主回収すると発表しました。「肌がまだらに白くなった」という症状が確認されたためです。製品事故や不具合が起きた際の企業の対応は、消費者の安全に関わる一大事です。対応を誤れば企業の経営を揺るがすこともあります。企業の対応から、その会社の社風や体質も見えてきます。

 今日取り上げるのは、経済面(14面)の「カネボウ化粧品 信用に打撃/45万個自主回収、原因究明急ぐ」です。
 記事の内容は――カネボウ化粧品と同子会社のリサージ、エキップの3社は、美白成分が入っている化粧品約45万個を自主回収すると発表した。国内で約25万人が使っているという。今のところ健康を損なう重大な被害の報告例はないが、被害が広がらないよう、回収とともに原因究明を急いでいる。問題となったのは、8ブランドのうち美白有効成分「ロドデノール」が配合された54製品で、2008年から売られている。今年5月、皮膚科医からカネボウ化粧品に「肌がまだらに白くなった人が3人いる」との連絡が入り、被害が発覚した。さかのぼって調べたところ、11年以降で同様の症状が出たと思われる例が39件あった。ロドデノールは同社が独自に開発、08年に厚生労働省から薬事法に基づく医薬部外品有効成分として承認を受けている。回収や原因究明に手間取れば、カネボウ化粧品などの信用は傷つき、販売にも影響が出かねない。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 日焼けする夏を前に、「美白」を売りにした商品の回収発表は関心を呼んだと思います。カネボウ社長の記者会見の場面もテレビのニュースで流れました。最近、社長ら役員が並んで「申し訳ございません」と頭を下げる映像をよく見ますよね。製品事故や異物混入による回収、不具合によるリコール、社員の不祥事など、問題を起こしたときの対応では、企業の危機管理能力が問われます。ときには人の命が関わるわけですから、何より必要なのは素早い対応です。絶対にやってはいけないのは、事実の隠蔽(いんぺい)。大手トラック会社によるリコール隠しは事件になり、元会長が逮捕されました。

 社長ら役員の態度からも、伝わってくることがあります。かつて、食中毒事件で記者に囲まれた食品会社社長の「私は寝ていないんだ」発言や、ホテル違法改造問題の会見での「(速度違反のようなもので)まあいいかと思っていた」という社長発言が、バッシングを受けたことがありました。原発事故や原発再稼働をめぐっては、電力会社幹部らの発言がたびたび波紋を呼んでいます。被害者らに対する誠意が感じられるかどうかは、その役員が普段から消費者に対してどういう姿勢でいるのかがにじみ出てくるものです。

 事故や不祥事はないのが一番ですが、起きてしまったときの企業の対応にも注目してみましょう。また、こうした製品回収や事故が判明したときには、新聞の社会面にお詫びの企業広告が掲載されることがあります。今日の朝刊にも第1社会面(39面)の記事の下に、カネボウ化粧品などの「お詫びと自主回収についてのお知らせ」広告が掲載されました。こうした謝罪広告は、緊急性が高いため紙面の予定を変更して掲載します。

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