2013年07月08日

安全な次世代航空機リードできるか

テーマ:科学技術

◆ニュースのポイント

 米サンフランシスコ国際空港で、韓国のアシアナ航空機が着陸に失敗して炎上する事故が起きました。グローバル化で世界の航空需要が伸びる中、これからの航空機にはより一層の安全性が求められます。国内でも、安全で静かな次世代航空機に向けた技術開発が進んでいます。

 今日取り上げるのは、科学面(27面)の「安全・静か 未来の翼/研究進む乱気流や衝撃波対策」です。
 記事の内容は――今後世界の航空機需要が増えることを見込み、安全で静かなフライトを実現するための技術開発が進められている。グローバル化が進み、世界の航空機の需要は今後20年で3万機に達すると見込まれる。日本では三菱航空機が開発を進める初の国産ジェット旅客機「MRJ」に注目が集まっているが、次世代の航空機に求められるのは、さらに高い安全性や環境性能。宇宙航空研究開発機構(JAXA)航空本部室長は「輸送量が増えても事故は増えないよう、事故率をさらに減らす新技術の研究が重要」という。旅客機事故の約半分は乱気流など気象現象によるもので、JAXAは乱気流を見つける「ドップラーライダー」や機体の揺れを減らす仕組みを研究開発中。また、マッハ1.6で東京―シンガポールを3時間半で結ぶ超音速機を構想しており、超音速機が出す衝撃波による騒音(ソニックブーム)に対応するため、コンピューターと風洞を組み合わせた「ハイブリッド風洞」で研究を進める。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

◆就活アドバイス

 航空機は先端技術の結晶です。大型で部品も多いため、多くの企業が協力してつくる裾野の広い産業でもあります。部品点数は自動車の100倍、国内の年間生産量は約1兆円と言われます。JAXAが行う次世代機の技術開発は、将来の航空機生産で日本の企業がリードするための先行投資でもあるのです。

 日本の航空機産業はかつて、零戦(ゼロ戦)を開発するなど高い技術を持っていました。しかし戦後、連合国軍総司令部(GHQ)から航空機の製造や研究を禁止され、その後、三菱重工などが純国産プロペラ旅客機YS11を開発しましたが、値段が高くて予想より売れず、大きな赤字を出して生産中止になりました。日本メーカーはこの失敗に懲りて、旅客機の独自開発をやめ、米ボーイング社や仏エアバス社など海外の大手メーカーに、部品や機体の一部を作って納める下請けを続けてきたのです。

 先に運航を再開したボーイング787は主翼や胴体など部品全体の35%が日本製で「準国産機」とも呼ばれています。787には以下の日本企業が参加しています。日本には、ほかにも航空機産業に関わっている企業がたくさんあります。関心のある企業について、自分で調べてみましょう。企業、業界研究の練習になりますよ。
◇胴体、エンジン…東レ(機体構造材)、三菱重工業(主翼)、川崎重工業(胴体前部、主脚格納部)、富士重工業(中央翼)、IHI(エンジン向け部品)、ブリヂストン(タイヤ)
◇設備、素材…ジャムコ(化粧室、厨房設備)、TOTO(温水洗浄機付きトイレ)、大阪チタニウムテクノロジーズ(チタン素材)、東邦チタニウム(チタン素材)、コミー(荷物棚内ミラー)
◇モーター、電池…GSユアサコーポレーション(リチウムイオン電池)、ナブテスコ(配電装置)、住友精密工業(補助動力装置用オイルクーラー)、多摩川精機(角度センサー、小型モーター)、ミネベア(ベアリング)

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