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日立製作所、パナソニック、ソニー、東芝、富士通、三菱電機、NEC、シャープ……何の会社か、きちんと言えますか? もちろん日本を代表する大手電機メーカーで、かつては電子部品から発電所まで何でも手がけるため「総合電機」と呼ばれていました。しかし、平成の30年間は「総合電機解体」の歴史で、ついに全滅したとも言われています。今では、日立や東芝はインフラ事業、富士通、NECはITサービス、パナソニックは自動車部品や住宅関連事業に力を入れています。それぞれの会社の個性がはっきりしてきた分、企業研究をしっかりしないとESや面接に対応できません。(編集長・木之本敬介)
(写真は、創業100周年を迎えたパナソニックの入社式後、津賀一宏社長と一緒に記念撮影をする新入社員たち。津賀社長は「これまでは『創業者の100年』だった。次の100年はわれわれ自身の手で築かなければならない」と強調した=2018年4月2日、大阪府枚方市)
(写真は、創業100周年を迎えたパナソニックの入社式後、津賀一宏社長と一緒に記念撮影をする新入社員たち。津賀社長は「これまでは『創業者の100年』だった。次の100年はわれわれ自身の手で築かなければならない」と強調した=2018年4月2日、大阪府枚方市)
総合電機メーカーの繁栄~没落
昭和の時代、日本の電機メーカーは、冷蔵庫や洗濯機といった「白物家電」から、テレビやオーディオなどの「黒物家電」まで幅広く手がけ、品質が良くて安い製品をどんどん生産して世界中に輸出。自動車とともに「技術立国ニッポン」を支えました。しかし、平成に入って1990年代にバブル経済が崩壊。2000年ごろからデジタル化が進むと、品質・性能の差が小さくなり、韓国や台湾、中国のメーカーとの価格競争に敗れました。NECは2011年にパソコン事業を中国のレノボ・グループ(聯想集団)に売却。日立は2012年にテレビの自社生産をやめ、東芝は2016年に白物家電を中国の美的集団に売却するなど、白物から黒物まで自社生産していたメーカーが事業を手放していきました。液晶テレビで世界トップだったシャープは経営危機に陥り2016年、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の傘下に入りました。垂直統合→水平分業
モノづくりの体制でも時代に乗り遅れます。日本の総合電機メーカーはあらゆる製品の企画から販売まで一貫して行う「垂直統合」が得意でした。しかし、アジアを中心にパソコン、半導体、パネルなどに特化した専業メーカーが強くなって価格競争が激化。欧米の電機大手は家電を捨て、競争力の強い得意分野に力を入れ、開発・製造は中国企業などに委託してコストを抑えるようになりました。今では米アップルのiPhoneのように、開発・製造の各段階で外部に発注して組み立てる「水平分業」が主流です。
「選択と集中」の結果
日本の大手電機メーカーは事業の「選択と集中」に取り組み、リストラも進めました。最近の朝日新聞の記事から、各社の特徴を整理します。【NEC】政府や企業向けITサービス
【富士通】企業や官公庁向けITシステム構築
【東芝】エレベーター、鉄道部品などのインフラ事業。リチウムイオン電池、パワー(電力制御)系電子部品、がん検知など精密医療技術は「成長事業」と位置づけ
【日立製作所】電力・鉄道などの社会インフラ
【ソニー】ゲーム、音楽、金融が軸。スマホ用カメラ向けの半導体センサーも
【三菱電機】工場を自動化するファクトリーオートメーション(FA)など法人向けに注力
(写真は、半導体をつくっていたクリーンルームを使った富士通の野菜工場=福島県会津若松市、同社提供)
パナが目指す「くらしのアップデート業」って?
そんな中、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、テレビから調理家電、美容家電まであらゆる家電を手がけ、「国内唯一の総合家電メーカー」といわれるのがパナソニックです。一方で、売上高に占める家電の割合は年々下がり(グラフ)、津賀一宏社長は「脱家電」の旗を掲げています。その軸となるのが「自動車」と「住宅」です。自動運転や電気自動車(EV)の普及に加え、IoT(モノのインターネット)は車でも家でもあらゆるモノをネットにつなぐので、センサー、カメラ、照明、空調、インターホンなど電機メーカーの技術や部品が欠かせません。EV用の電池をめぐっては、開発と製造を担う新会社を2020年末までにトヨタ自動車と共同で設立することも発表しました。松下幸之助が創業してから100年を超えたパナソニックは、「次の100年」、何の会社になるのか。津賀社長は「創業以来の家電をつくるビジネスモデルには限界がきた。次の100年は、人々にお役立ちを提供する『くらしのアップデート業』を目指していく」と語っています。たとえば、住宅のあらゆる場所にセンサーを仕込み、人工知能(AI)に住人の行動パターンを学習させて家電を動かしたり助言したりする。自動車関連では、過疎地の高齢者など「交通弱者」の増加、人手不足で難しくなる物流網維持といった課題を、自動運転技術で解決することを目指しています。もう、単にモノをつくるだけのメーカーではありません。ソフトもハードも駆使して、人が住む空間や外を移動するときの「快適性」に焦点をあてた「暮らしの質を向上させる会社」です。
電機メーカーがみな同じ方向を向いていた時代は終わりました。志望する企業が、どんな会社になり、どんな社会をつくろうとしているのか、しっかり企業研究して選考に臨んでください。
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