2019年02月01日

「戦後最長の景気拡大」実感ある?不正統計との関係は?【今週のイチ押しニュース】

テーマ:経済

 景気拡大の期間がこの1月で6年2カ月になり、「戦後最も長くなった可能性がある」と政府が発表しました。ただ、過去の好景気に比べると成長率は低く、豊かさの実感は薄いのが実情です。一方、厚生労働省の「毎月勤労統計」で不正な調査が続いていたことが大きな問題になっていますが、きちんと計算し直すと2018年の「実質賃金」は多くの月で前年比マイナスになる可能性が出てきました。企業の業績は良かったのですが、働く人の給料にはあまり反映していないということです。野党は、賃金アップを重視する安倍政権に忖度(そんたく)した「アベノミクス偽装だ」と批判しています。景気の現状と不正統計の問題をやさしく解説します。(編集長・木之本敬介)

(写真は、衆院本会議で立憲民主党の枝野幸男代表〈手前〉の代表質問を聞く安倍晋三首相〈中央〉=1月30日)

「いざなみ景気」抜いた?

 私たちが買い物をしたり、企業が製品をつくったりする経済活動は、増える時期と減る時期をくり返していて、今は増える「拡大期」が続いています。今回の景気拡大は2012年12月から。第2次安倍政権が発足し、日本銀行が大規模な金融緩和を進めました。金利を低くしたことで円安の傾向が続き、自動車など輸出企業を中心に業績が良くなりました。

 そしてこの1月、リーマン・ショックがあった2008年まで6年1カ月続いた「いざなみ景気」を抜いたとみられる、というところまできました。ただ、物価の変動をのぞいた実質経済成長率は平均1.2%にとどまります。1990年前後のバブル景気の5.3%や、高度成長期の「いざなぎ景気」の11.5%には遠く及ばず、リーマン前までの「いざなみ景気」の1.6%も下回ります。売上高や利益が「過去最高」を記録する企業も多いのですが、社員の給料はそれほど上がっていないため、消費も停滞しています。専門家は「企業主導の回復で、家計に恩恵が行き渡っていない」と言います。景気拡大の期間を正式に認定するのは1年以上先で、「戦後最長」が幻に終わる可能性もあります。

国の統計が信用できない…

 一方、いま問題になっている「毎月勤労統計」は、賃金の動向などを調べる調査です。従業員500人以上の事業所は全て調べるルールですが、厚労省は2004年から調べる事業所の数を勝手に減らす不正調査を始め、2018年1月から統計の調査対象を見直すとともに、不正データを本来の全数調査に近づけるようデータをひそかに補正していました。雇用保険労災保険などは毎月勤労統計をもとに給付額が決まりますが、不正のために本来より少ない額しかもらえなかった人は延べ2000万人以上、追加給付額と事務費などの総額は約795億円に上ります。古いデータは廃棄されているため、もらえない人もいるという、まさに取り返しのつかない問題なのです。

 政府は56の基幹統計、233の一般統計を実施していますが、今回の問題をきっかけに調べたところ、毎月勤労統計以外にも不正や誤りが見つかっています。国の統計は、政策決定や行政の根幹となるデータですから、国の信用問題にも発展しかねません。

(写真は、衆院本会議中に根本匠厚労相〈左〉と言葉を交わす安倍晋三首相=1月31日)

実質賃金がポイント

 景気はさまざまな統計データから判断されます。不正がわかった「毎月勤労統計」も使われていますが、政府は「修正の影響は小さく、景気判断には響かない」としています。

 ただ、2018年1~11月の「実質賃金」の増減率を実態に近い調査手法で計算し直すと、大半の9カ月分で前年に比べマイナスになると野党が試算(グラフ参照)し、厚生労働省がそうなる可能性を認めました。実質賃金は、給与や賞与の金額(名目賃金)から、物価変動の影響を引いた数値です。たとえば給与が1%増えても、世の中のモノやサービスの値段が2%上がったら購買力は下がります。このため、実質賃金はより生活の実感に近い数値とされています。アベノミクスで「戦後最長の景気拡大」と言われても、生活が良くなった実感が持てないのは、このあたりに原因がありそうです。アベノミクスは、積極的な財政出動や金融緩和で世の中に出回るお金の量を増やして物価を上昇させる一方、賃金もそれ以上に伸ばして消費を盛んにして経済の好循環をめざす政策。賃金上昇は「アベノミクス」の極めて大事なポイントだけに、野党が追及を強めているわけです。

 企業の業績はとても良い状態が続いたため、採用数を増やす企業が多く、就活は学生優位の「売り手市場」が続いてきました。就活生にとってはとてもいい状況です。でも、米中貿易摩擦などから、世界の経済を引っ張ってきた中国の成長にブレーキがかかるなど海外の景気に影が差しています。中国への輸出が減って業績を落とす企業が増えています。これからの世界の経済情勢に注目してください。

アーカイブ

テーマ別

月別