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日本とロシアの間に戦後70年以上ずっと横たわる北方領土問題のこと、どのくらい知っていますか? 安倍首相が「私とプーチン大統領の手で必ずや終止符を打つ」という決意を示して臨んだ今週の日ロ首脳会談でしたが、ロシア側が譲る気配はなく、早期解決への期待はしぼみつつあります。でも、これが決着しないと平和条約が結べないという大テーマ。この機会に、そもそもの経緯や背景、見通しなど、「基本のき」を押さえておきましょう。(編集長・木之本敬介)
(写真は、ロシアのプーチン大統領=右=との共同記者発表を終え、握手を交わす安倍晋三首相=1月22日、モスクワのクレムリン)
(写真は、ロシアのプーチン大統領=右=との共同記者発表を終え、握手を交わす安倍晋三首相=1月22日、モスクワのクレムリン)
基本のき
地図を見てください。北方領土は、大きい順に択捉島(えとろふとう)、国後島(くなしりとう)、色丹島(しこたんとう)、歯舞群島(はぼまいぐんとう)の4島からなります。歴史的に長く日本の領土でしたが、第2治世界大戦で日本が敗れた1945年にソビエト連邦(ソ連)に占領されました。この先、「4島」は全島を、「2島」は色丹、歯舞を指します。日本とソ連は1941年に日ソ中立条約を締結しました。1945年2月、ソ連のスターリン首相は米英両首脳とのヤルタ会談で、対日参戦の見返りに千島列島をソ連領とする協定(密約)を結びました。ソ連は、条約の期限が切れる前の同年8月9日に参戦。日本がポツダム宣言を受諾した14日以降も侵攻を続けました。日本が降伏文書に署名した9月2日を過ぎても攻撃をやめず、同5日までに「4島」を占領しました。これ以後、ソ連はヤルタ協定を根拠に第2次大戦の結果、「合法的」に編入したと主張。これに対し、日本はヤルタ協定には参加しておらず、ソ連が中立条約を無視して参戦したうえ、降伏後の侵攻による占拠は「法的根拠がない」との立場です。
日本は1951年に米国などとサンフランシスコ講和条約に署名して独立を回復。ソ連との間では1956年に国交を回復し、「平和条約締結後に歯舞群島と色丹島を引き渡す」と明記した日ソ共同宣言に署名しました。1993年には、ソ連を引き継いだロシアと「東京宣言」で合意。そこには「4島」の名前を列挙したうえで「北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結する」と書いてあります。その後も度々交渉を続けますが、進展はありませんでした。今、「4島」には計1万8000人のロシア人が住み、軍も駐留する「ロシア化」が進んでいます。
「4島」から「2島」へ
安倍首相はプーチン大統領と何度も会談して領土問題の解決を探ってきました。2018年11月のシンガポールでの会談では、56年の日ソ共同宣言を基礎に平和条約交渉を加速させることで合意。この会談で日本政府は大きな方針転換をしました。56年の宣言は「2島」引き渡しを明記している一方、「4島」には触れていません。国内では「4島」返還を求める声が強いため、政府は方針を変えていないと説明していますが、実際にはこれまでの「4島返還」から「2島先行返還」を軸とした交渉に大きく舵を切ったと言われているのです。
「2島先行」は4島の帰属を確認し、まず「2島」を返還し、残る国後、択捉は協議継続という意味ですが、事実上、交渉の対象は「2島のみ」になっているのが実態です。
交渉の長期化必至
シンガポール会談後、首相の「終止符を打つ」発言もあり、日本国内では一気に期待が高まりました。首相が目指すのは、6月に大阪で開かれる主要20カ国・地域(G20)首脳会議に合わせたプーチン氏来日時の大筋合意です。ところが、「2島」に絞ったからといって、合意はものすごく難しいということが1月22日のモスクワでの首脳会談ではっきりしました。安倍首相は事実上「2島」に絞って返還交渉を進める方針で臨みましたが、ロシア側の姿勢は固く、具体的な進展はなかったからです。
今回の共同記者発表でプーチン大統領は「双方が受け入れ可能な解決策を見いだすため、長く綿密な作業が必要だ」と述べ、交渉が長期化すると表明。さらに、「交渉の結論は両国の社会に支持されるものでなければならない」とも強調しました。モスクワでは、首脳会談を前に北方領土引き渡し反対のデモが起きました。4島に住んでいる住民はもちろん、ロシア国民の大半は引き渡しに反対だと言われます。プーチン政権はこうした声に敏感になっているとも指摘されます。
(写真は、北方領土の引き渡しに反対するモスクワ市民=1月20日、モスクワ)
もし解決したら…
日本国内の解決への期待は一気にしぼみました。でも、ここでは、あえて領土問題が解決して平和条約が結ばれたら……と想像(妄想?)してみましょう。両国の経済交流、人の交流は飛躍的に盛んになるに違いありません。志望する業界はどんなビジネスを展開できると思いますか。
北方領土周辺には、豊かな漁場が広がっています。水産品を扱う食品メーカーには大きな関心事です。今でもサハリンなどでの天然ガス開発などに投資している日本の商社は、さらに大きな投資に乗り出すことでしょう。自動車から生活用品まで日本メーカーの得意分野の製品輸出も増えることが考えられます。北方4島やロシア極東地域への旅行ツアーがブームになるかもしれませんね。
志望する企業の「強み」を知らないと、こんな想像すらできません。企業研究が大切ですよ。
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