ニュースのポイント
27日、全国で1056社が株主総会を開きました。株主総会は各企業が直面している課題や現状を映し出し、そこから日本経済の状況も見えてきます。6月に朝日新聞が報じた主な企業の株主総会の話題を集めてみました。
今日取り上げるのは、経済面(11面)の「業績に薄日 期待の株主/出席者最多、相次ぐ/東証上場718社が株主総会」です。
記事の内容は――今年の各企業の株主総会では、アベノミクスによる株高や業績回復を背景に、過去最多の株主が出席する総会が目立つなど株主の関心が高まる一方、企業の成長戦略に対する視線は厳しくなっている。好業績の企業の総会では、株主から「最高益で高い配当となってよかった」(ダイハツ工業)、「さすが世界のトヨタ。見事に業績回復を果たした」(トヨタ自動車)、「株高で、業績も株価も上がってよかった」(大和証券グループ)などの声が相次いだ。出席者数はソニーで初めて1万人を超えたほか、トヨタ、NTTドコモ、東芝、NECも過去最多に。「アベノミクスで株への関心が高まっているのでは」(NEC)との声も。川崎重工業に経営統合交渉を打ち切られた三井造船や、提携・統合をめぐって北越紀州製紙と対立する大王製紙では、今後の成長を左右する提携戦略を問われる場面があった。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
株主総会は、株主が取締役の選任や決算の承認などをするもので、ふつう年1回開かれます。原則過半数の賛成、定款変更や合併など重要議案は3分の2以上の賛成で議決され、郵送でも賛否を表明できます。企業の大多数は3月決算後、監査などを経るため、株主総会は6月下旬に集中します。かつては株主総会の議事進行を妨害したり会社に金銭を要求したりする総会屋対策のため、上場企業の9割が同じ日に開きましたが、商法改正で総会屋が減り、近年は一般株主の参加を促すため日程が分散する傾向にあります。今年の集中日の27日に開いたのは東京証券取引所(東証)の上場企業の42%にあたる718社でした。
株主総会は1時間以内で終わる場合が多いのですが、不祥事対応などで紛糾して4~5時間に及ぶことも。株主には個人だけではなく、企業、金融機関、外国法人、政府・自治体などもあります。個人株主は延べ約4600万人います。実際に総会に足を運ぶのは平均で1社数十人といわれ、ソニーの1万人超は異例の数です。
株主総会の話題を企業研究に役立てましょう。
今年話題になった主な企業の株主総会
◆トヨタ自動車=初の社外取締役に元米ゼネラル・モーターズ副社長のマーク・ホーガン氏ら3人を選任。創業家の豊田章男社長体制が5年目を迎え、外部の声を反映し「開かれた経営」をめざす。昨年より890人多い過去最多の4750人が出席。時間は過去2番目に長い2時間25分だった
◆日産自動車=カルロス・ゴーン社長は13年3月期の自らの役員報酬が9億8800万円だったと発表。「役員報酬に投資しないと優秀な人材の登用が難しくなり競争力を保てなくなる」と述べた
◆マツダ=5年ぶりの最終黒字や4年半ぶりの社長交代を報告。株主からは経営改革を評価する声とともに配当の早期再開や販売力強化を求める意見が相次ぐ
◆ソニー=米投資ファンド「サード・ポイント」が求めている映画・音楽事業の分社化について平井一夫社長は「非常に重要な提案で、短時間で結論を出さず取締役会で徹底的に議論する」と述べた
◆パナソニック=2年連続の巨額赤字で63年ぶりの無配になったことや、この数年で国内外約8万人の人員削減を進めたことに批判が集中
◆シャープ=経営再建中で13年3月期に過去最大の5453億円の純損失を出したことを奥田隆司社長が陳謝。2年連続の巨額赤字の責任をとって社長と会長が退任し、体制一新で再建に臨む姿勢を説明。株主からは「責任の取り方が甘い」と不満が噴出
◆川崎重工業=解任された役員3人をのぞく取締役10人を選任する議案を承認。総会に長谷川聡前社長ら解任された3人の姿はなく、詳しい説明を期待した株主には不満が残った
◆みずほフィナンシャルグループ=佐藤康博社長はグループ傘下の主力2行の合併について「(過去に起こした)システム障害を二度と起こさない強い決意だ」と述べた
◆野村ホールディングス、大和証券グループ本社=昨年表面化したインサイダー問題についてトップがそれぞれ株主に陳謝
◆日本取引所グループ(JPX)=東京、大阪両証券取引所が1月に経営統合後、初の株主総会。取締役に前大和証券グループ本社名誉会長の清田瞭(あきら)氏、前野村証券顧問の山道(やまじ)裕己氏を新たに選任
◆東京電力=2基の原発の廃止などの株主提案はすべて否決。9議案を出した「脱原発・東電株主運動」の木村結・世話人は「新生東電に多少の期待をしたが、本当にがっかりした」と話した
◆東北電力=一部株主による「脱原発」提案に青森市や宮城県美里町が賛成したが、仙台市など多くの大株主が反対し否決
◆中国電力=脱原発の株主提案6件はすべて否決。経営陣は島根原発再稼働や上関原発建設を進める姿勢を強く示した
◆ドコモ=犯罪に悪用されたレンタル携帯電話の98%がNTTドコモの携帯だった問題で、契約基準を厳しくすると表明。携帯レンタル業者の事業規模が小さすぎるなど不自然な点があれば契約台数に上限を設ける
◆KDDI(au)=電力小売り事業に参入し携帯電話会社としては初めて家庭向けに電力を売るため、事業目的に発電や電気の供給、販売を加える定款変更を承認
◆日本航空(JAL)=昨年9月の株式再上場後初の株主総会。植木義晴社長は10年の経営破綻(はたん)について謝罪し「二度とつぶれるような会社にはしたくない」と語った
◆ANAホールディングス=伊東信一郎社長は昨年再上場したJALについて「再生(の方法)はやり過ぎだったと言わざるを得ない」「競争が平等な状況にない」と述べ、手厚い公的支援を改めて批判した。3月期決算のANAの純利益は過去2番目の431億円。JALは大きく上回る1716億円だった
◆西武ホールディングス=敵対的な株式公開買い付け(TOB)を仕掛けた筆頭株主の米投資会社サーベラスによる取締役候補8人の提案を否決。総会は5時間に及んだ
◆中日本高速道路=9人が死亡した中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故に絡み退任した吉川良一代表取締役専務執行役員と中山啓一取締役常務執行役員に対する退職慰労金の支給凍結を決定
◆日揮=竹内敬介会長が「セキュリティーを確保しながら引き続き事業に取り組むことが犠牲者の供養」と表明
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