2013年06月27日

自然エネ普及のカギ「発送電分離」の行方

テーマ:政治

ニュースのポイント

 通常国会が閉会し、政界は参院選へいっせいに走り出しました。国会終盤の与野党の政争のあおりで、「発送電分離」に向けて電力システム改革を進める電気事業法改正案などの重要法案が廃案になりました。この法案は風力や太陽光など自然エネルギーの新規参入を促すもので、「脱原発」に向けて不可欠です。分離に慎重な電力会社の抵抗も予想され、今後も目を離せません。

 今日取り上げるのは、2面の「対決優先 法案置き去り/電力改革『骨抜き』も」です。
 記事の内容は――通常国会は安倍晋三首相に対する問責決議を可決して閉幕した。7月4日公示の参院選を前に与野党は対決構図を強めており、そのあおりで、電力システム改革の第一歩となる電気事業法改正案や生活保護見直しといった暮らしにかかわる重要法案が置き去りにされた。電気事業法改正案は、原発再稼働を進める一方、電力会社の「地域独占」を崩して競争を促し自然エネルギーを増やす改革も必要だとして経済産業省が提出。安倍政権の成長戦略にも盛り込まれた。茂木敏充経産相は秋の臨時国会に同じ改正案を出すと名言したが、先送りされたことで抵抗勢力に巻き返しの時間を与え、骨抜きにされるおそれもある。電力業界に近い自民党議員には「発送電分離」への抵抗感が強いからだ。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 廃案になった電気事業法改正案は、「発送電分離」に向け電力システム改革を段階的に進める内容です。今は東京電力、関西電力など大手の電力会社が送電線を独占し、発電から送配電まで一体運営して家庭や企業に電気を送っています。この送電線を管理・運営する部門を別会社に切り離すのが発送電分離です。「電力自由化」の一つで、太陽光や風力のような自然エネルギーで発電する新しい会社が、大手の電力会社と公平に競い合えるようにして、新規参入や価格競争を促すねらいです。

 欧米では1990年代から自由化が進みました。日本でも、経済産業省が何度も自由化しようとしましたが、電力会社や自民党が「電力の安定供給ができなくなる」などと反対して実現しませんでした。原発事故後、自然エネルギー促進の機運が高まり、民主党政権下で改正に向けて動きだし、自民・安倍政権が改正案を提出。自民、公明の与党に加え民主党も賛成していました。ところが、成立直前に法案とはまったく関係のない安倍首相への問責決議のために廃案になってしまいました。自民、民主両党は、お互いに廃案は相手のせいだと主張しています。

 参院選でも各党は非難合戦を繰り広げるでしょうが、政争に目を奪われず、各党、各候補者が、発送電分離についてどんな主張をするのか、その後の法案提出がどうなるのかに注目してみてください。今日の社説(14面)も同じテーマで書いています。

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