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(写真は、2018年3月1日の就活解禁日にパンフレットを見ながら企業を探す女子学生ら=大阪市)
「男子を救うためだった」
ことの経緯はこうです。順天堂大と北里大が10日、医学部で女子や浪人回数の多い受験生を不利に扱う不適切な入試を行っていた、と発表しました。そのうち、順大は女子を不利に扱った理由として「女子のほうが精神的な成熟が男子より早く、コミュニケーション能力が高い。ある意味で、男子を救うためだった」と説明したうえで、不適切だったとして謝罪しました。順大の入試は主に、1次で筆記、2次で小論文や面接などが課され、その合算で合否を判定します。遅くとも2008年度から、女子の2次試験(満点は5.40~5.65点)の合格ラインを男子より0.5点高く設定していました。第三者委員会に対し「入学後に男性の成熟が進み、男女間のコミュニケーション能力の差が縮小され、解消される」と主張し、医学的な検証をした資料として学術誌の論文も提出していました。しかし、朝日新聞がその論文を確認したところ、面接時のコミュニケーション能力について論じた部分は見当たりませんでした。
採用でも…
実は同じような話は、採用試験においてもよく耳にします。「女子学生のほうがしっかりしていて、男子は頼りない」「女子のほうがコミュ力が優れている」という話題は、各社の採用担当者の間でも話されています。「普通に採用していると、内定者が女子ばかりになってしまうから」と、順大と同じ理屈で男子を優遇しているという会社もありました。思春期には、心身ともに女子のほうが早く成長する一般的には傾向はあるのでしょうから、その後の二十歳を過ぎた年代でも同様な傾向があるのかもしれません。「入社後は女子はあまり伸びないが、男子はぐんと伸びる人がいる。この見極めが難しい」と話す採用担当者もいます。
(写真は、面接会場を訪れ受付に並ぶ学生ら=2018年6月1日午前、東京都千代田区)
おかしい一律判断
ただ、成長度合いは人によって異なります。朝日新聞の記事で神戸女学院大学の木村昌紀准教授(社会心理学)は「(コミュニケーション能力の)捉え方や定義は、研究者の間でも議論が分かれている。相手の気持ちや意図を読み取る『対人感受性』はその要素の一つで、女性のほうが高い傾向があるという知見はたくさんあるものの、それは全体的な傾向で個人差が大きい」と指摘、「性差でひとくくりにして一律に判断するのはおかしい」と批判しています。順大の第三者委が「面接試験では受験者個人の資質や特性に伴う差異こそが性差よりも重視されるべきだ。性別を理由とした合格基準の相違には合理性がない」と非難しているように、一律に基準を設けて判定すべきものではありません。
企業は「コミュ力重視」
そもそも、採用においてコミュニケーション能力はどの程度重視されているのでしょうか。経団連の加盟企業アンケートによると、2019年卒採用で「選考にあたって重視した点」(複数回答)のトップは「コミュニケーション能力」で82.0%。続く「主体性」(60.7%)、「チャレンジ精神」(51.7%)、「協調性」(47.0%)などを引き離して15年連続の1位でした。8割以上の企業が挙げていますから、コミュニケーション能力がないと仕事にならない、「採用の前提条件」と言えるほど大事な要素だと言えます。
採用試験においては、そのコミュ力を、一律にではなく、面接を通じて一人ひとり個別に判断しているわけです。では、企業が求めるコミュ力って何なのか、どうやってみなさんのコミュ力を判断しているのでしょう? これについては、
◆人事のホンネ【特別編 Part4】企業が最重視する「コミュ力」って? 面接ではここに注意
で書いています。ぜひ読んでみてください。
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