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日産自動車のカルロス・ゴーン前会長逮捕!というショッキングなニュースが世界を駆け巡ってから10日が過ぎました。日産、仏ルノー、三菱自動車の3社連合の行方、経営トップの高額報酬の是非のほか、日本の拘置所のトイレや勾留期間にも世界の目が注がれています。世界を驚かせた「ゴーンショック」にまつわるトピックを整理します。(編集長・木之本敬介)
ゴーン前会長は容疑否認
ゴーン前会長は、2014年度までの5年度分の役員報酬について、実際は約100億円だったのに、有価証券報告書には約50億円少なく虚偽の記載をしたとする金融商品取引法違反の容疑で逮捕されました。ゴーン前会長の報酬は、実際には年約20億円だったのに、報告書には約10億円と記載。差額の約10億円は別の名目で毎年蓄積し、退任後に受け取る仕組みにしていたようです。さらに、直近の2017年度までの3年分についても約30億円の報酬を隠していた疑いのほか、私的流用などの疑惑もあります(表)。これに対し、ゴーン前会長は「将来の支払いは確定しておらず、記載義務はない」と違法性を否定しています。カリスマ経営者
ゴーン前会長は1999年、約2兆円の有利子負債を抱えて瀕死(ひんし)の状態にあった日産に、ルノーから送り込まれました。最高執行責任者(COO)としてまとめた経営再建策「日産リバイバルプラン」で、5工場の閉鎖、2万1000人の人員削減、系列取引の見直しを主導し、「コストカッター」の異名をとりました。「コミットメント」(必達目標)を掲げて改革を進めてV字回復を果たし、2003年には有利子負債を完済しました。日産・ルノーの資本業務提携を維持し、世界的な自動車グループに育てた手腕への評価も高く、「カリスマ経営者」と呼ばれてきました。
世界2位に
日産は、フランスのルノー、三菱自動車と「3社連合(アライアンス)」を組んでいます。2017年の3社の世界販売の合計は、前年比6.5%増の1060万台で、首位だったドイツのフォルクスワーゲン(VW)に次いで2位でした。2016年に三菱が加わり、VW、トヨタ自動車、米国のゼネラル・モーターズの世界3強に割って入った形です。どうなる3社連合
3社連合は、これまで各社の会長を兼務していたゴーン容疑者に権限が集中していましたが、今後は経営トップ3人による合議で運営していくことを確認しました。ただ、実際には、日産とルノーの主導権争いが激しくなっているようです。3社の資本関係は図を見てください。ルノーが日産に43%出資する一方、日産のルノーへの出資は15%だけで、議決権もありません。もともと不満を持っていた日産側は今回のゴーン前会長失脚を関係見直しの「絶好の好機」とみています。一方で、ルノーはかつて国営企業だったこともあります。今も出資しているフランス政府は、日産への影響力を強め、自国の経済や雇用の好転につなげることを狙っているといわれます。日産と三菱はゴーン前会長を解任しましたが、ルノーはまだそのままと、事件への対応も分かれています。「宗教裁判」?
ゴーン前会長逮捕は欧米でも大きく報道されていますが、中には日本の司法制度を人権問題として批判するものも。 日本では検察が逮捕した容疑者を拘束できるのは48時間までですが、この間に裁判所への勾留請求が認められれば10日間勾留され、さらに10日間まで延長できます。起訴後も勾留が続くケースが多く、裁判所が勾留請求を退けるのはわずか5%ほどです。起訴後、判決までに保釈を認めるのは32.5%。否認すれば拘束が長引く傾向もあります。欧米や韓国で定着している取り調べへの弁護人立ち会いもできません。本来は「逃亡・証拠隠滅」を防ぐための勾留が、自白を得るために使われているとの批判もあります。米国の経済紙ウォールストリート・ジャーナルは「宗教裁判だ」と書きました。(写真は、ゴーン容疑者が勾留されているとみられる東京拘置所の単独室。広さは3畳ほど、室内にはトイレや小さな机が)
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