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米国で中間選挙が行われ、トランプ大統領の与党・共和党は上院で過半数を守ったものの、下院は野党・民主党に過半数を奪われました。中間選挙は、大統領の任期前半の「信任投票」といわれますが、半分「YES」で半分「NO」という結果でした。世界中が見守った米中間選挙についてやさしく解説し、これからどうなるかを考えます。日本企業の業績やみなさんの就活にも影響しますよ。(編集長・木之本敬介)
(写真は、中間選挙結果を受けてホワイトハウスで記者会見するトランプ米大統領=7日、ワシントン)
(写真は、中間選挙結果を受けてホワイトハウスで記者会見するトランプ米大統領=7日、ワシントン)
中間選挙は大統領の「信任投票」
中間選挙は、4年ごとの大統領選のちょうど中間の時期に行われる連邦議会選挙です。このため、現職大統領の2年間の政治に対する「信任投票」の意味合いがあります。上院(定数100、任期は6年)は2年ごとに定数の3分の1ずつが改選され、今回は補選2議席を含め35議席が改選されました。下院(定数435、任期2年)は全員が改選されます。今回は計36州の知事選もありました。2年前の大統領選で勝った反動もあるため、政権与党が議席を減らすケースが大半です。前回2014年の中間選挙では、当時のオバマ大統領の民主党が大敗し、共和党が上下両院で多数を占めました。
「ねじれ議会」でどうなる?
今回の中間選挙は、かつてないほど世界の注目を集めました。「アメリカファースト」を掲げ、世界の流れに反して保護主義を推し進めるトランプ大統領が2年後の大統領選で再選されるかどうかを占う選挙だからです。日本でも、テレビで注目選挙区の開票速報が報じられるほどでした。焦点は、上下両院で共和党が過半数を維持できるか。結果は、上院は維持したのに対し、下院は民主党が過半数を制しました。トランプ氏は「半分勝って、半分負け」という結果で、はっきり白黒はつきませんでした。
今後は両院で多数が異なる「ねじれ議会」になります。トランプ氏の思う政策が通りにくくなるのは確実です。ただ、トランプ氏にとって実は打撃ではないとの見方もあります。議会を通さずに実行できる大統領令を乱発して、さらに強引に政治を進めることができます。過激な発言で「敵」を攻撃して分断をあおるのがトランプ流。政策が停滞したり、大統領をクビにできる弾劾裁判にかけられたりしても、「邪魔する民主党が悪い」と訴えれば自分の支持層をより固められます。大統領再選に向けては、むしろプラスというわけです。
日本への影響
日本への影響はどうでしょう。日本の政府や企業は、米国内で政策が行き詰まったトランプ氏が、支持拡大のために保護主義的な姿勢を強めたり、外交や通商で強硬姿勢に出てリーダーシップを印象づけようとしたりするのでは、と心配しています。トランプ氏は選挙後の記者会見で「安倍晋三首相には『日本は米国との貿易を公正にやっていない』と伝えている」「米国の低い関税のおかげで、日本は日本車を膨大に輸出しているが、日本は米国車を買っていない」と日本への不満をあらわにしました。でも、これは事実ではありません。米国は日本からの輸入車に関税をかけていますが、日本に輸入される米国車の関税はゼロ。それでも日本市場でのシェアが低いのは、魅力がないか販売努力が足りないからです。
ただ、こうした理屈や常識が通じないのがトランプ氏。日本の政府関係者は、年明けに始まる日米物品貿易協定(TAG)の交渉で、米国からの「えげつない要求」を警戒しています。自動車や部品メーカーを中心とした企業関係者も同じです。みなさんも注視してください。
◆TAGについては、「日米関税交渉入りで自動車業界はホッ? 代わりに影響を受けるのは?」(9月28日のイチ押しニュース)を読んでください。
女性躍進、若者投票
今回の選挙で注目してほしいことがもう一つ。女性の躍進と若者の投票行動です。中間選挙には、民主党を中心に過去最多の女性が立候補。CNNなどによると、下院では改選前の84人を上回り過去最多の96人が当選確実になりました。イスラム教徒や先住民の女性が初めて当選するなど多彩な顔ぶれが話題です。女性たちを突き動かした背景にあるのは、トランプ氏の女性差別的な態度や性被害に声を上げ被害者への連帯を示す「#Me Too運動」による性差別への認識の高まりです。2月に起きたフロリダの高校での銃乱射事件をきっかけに、銃規制などを求める若者の「選挙に行こう」運動も全米に広がりました。30歳以下の若者による期日前・不在者投票が急増し、民主党への追い風になったといわれています。CNNなどの6日午前段階での集計では、期日前・不在者投票をした人が3300万人にのぼり、2014年中間選挙(2200万人)の1.5倍に。接戦だったテキサス州の期日前・不在者投票は約408万人で、4年前の173万人を大きく上回りました。同州での年代別の投票をみると、30歳以下は全体の12%で約48万人。4年前の11万人を大きく上回り、2年前の大統領選での55万人にも迫る多さでした。テネシー州では、人気歌手のテイラー・スウィフトさんが1億1000万人以上のフォロワーを持つ自身のインスタグラムで民主党候補の支持を表明。同州の期日前・不在者投票者数は136万人と、4年前の33万人から大きく伸びました。これも「トランプ効果」の一つといえそうです。
女性議員の少なさと、若者の投票率の低さは、日本でも大きな課題です。米国の選挙を、自分や日本の問題に引きつけて考えてみることも大事ですよ。
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2024/10/16 更新
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