ニュースのポイント
原発事故後に盛り上がった太陽光や風力発電などの自然エネルギー普及促進の動きにブレーキがかかっています。北海道で太陽光発電計画が行き詰まっている現場からの報告です。原発再稼働に前向きな安倍政権の方針も影響しています。
今日取り上げるのは、経済面(5面)の「アベノミクスって、なに?/自然エネ 立ち往生」です。
記事の内容は――新千歳空港に近い北海道安平(あびら)町でソフトバンクグループの自然エネルギー会社・SBエナジーによるメガソーラー(大規模な太陽光発電)計画がストップしている。北海道電力が4月17日、太陽光発電から買う電気の量を制限すると発表したためだ。昨年7月に自然エネルギー「固定価格買い取り制度」が始まり、電力会社は太陽光や風力で発電した電気を決まった価格で買うように義務づけられたが、北海道電は「送電網の容量が限られ、天気によって発電量が大きく変わる太陽光発電を受け入れ過ぎると安定して電気を送れなくなる」と説明する。泊原発の再稼働を見込んでいることも大きい。北海道以外でも送電網接続がネックになって太陽光発電を断念するケースが相次ぐ。安倍政権は成長戦略に「原発の活用」を盛り込み、原発輸出にも積極的。自然エネによる新産業への期待は盛り上がりに欠け、「原発ムラ(原子力ムラ)」が復活している。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
東京電力福島第一原発事故のあと、自然エネルギーを増やそうという機運が盛り上がりました。当時の民主党政権は、今は電力の1%台しかない自然エネを3割に引き上げる目標を立てていました。ソフトバンクの孫正義社長は自然エネルギー財団をつくったほか、全国各地でメガソーラー設置を計画。自然エネルギー開発には、新産業創出や雇用増の期待もありました。しかし、「2030年代に原発稼働ゼロ」の目標を決めた民主党政権から、原発の再稼働や輸出に熱心な安倍政権に代わったことで、自然エネルギー普及の機運は一気にしぼんでしまったようです。記事には、英国の原発会社ホライズンを買収した日立製作所の専務の「我々もアベノミクスの一端を担う」との発言も出てきます。
国の基幹産業であるエネルギーをめぐっては、米国からのシェールガス輸入、ロシアの液化天然ガス(LNG)共同開発、日本近海のメタンハイドレート開発など、新しい動きが続いています。電力、原子力、ガス、石油、商社などの業界の動きに注目してください。
記事のグラフにあるとおり、日本の自然エネルギー発電の割合はドイツ、スペイン、米国に比べ、極めて低い割合です。原発再稼働をどう考えるか、そして自然エネルギーの開発を進めていくべきかどうか、みなさんも考えてみてください。
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