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580億円分という巨額の「仮想通貨」が何者かによる不正アクセスで流出し、大きな問題になっています。ネット上で流通する仮想通貨を実際に使ったり投資したりしている人はまだあまり多くないと思いますが、これから急速に普及するとも言われています。銀行やIT系企業を目指すみなさんは、仕事に直結する課題ですからしっかり押さえておかないといけません。それ以外の業界・企業の志望者も、お金のあり方に関わる問題なので無縁ではいられませんし、ビジネスを左右する大テーマです。面接で「最近話題の仮想通貨についてどう思いますか?」と聞かれるかもしれません。仮想通貨の「基本のき」を整理します。(編集長・木之本敬介)
(写真は、巨額流出が発覚し会見で謝罪するコインチェックの和田晃一良社長ら=2018年1月26日)
(写真は、巨額流出が発覚し会見で謝罪するコインチェックの和田晃一良社長ら=2018年1月26日)
派手なCM展開
今回流出したのは、仮想通貨取引所「コインチェック」(東京都渋谷区)が26万人から預かった約580億円分の仮想通貨NEM(ネム)です。コインチェックは最近、お笑いタレントの出川哲郎さんを起用したテレビCMを流す派手な営業をしていました。1月26日未明から朝にかけて、そのコインチェックの口座からハッカーのものとみられる口座に不正送金されました。取引所はサイバー攻撃を避けるため、通貨の保管データをネットから遮断しておくのが一般的ですが、同社はNEMをネット接続したままにしていました。アクセスに必要な暗号鍵も一つだけで、管理が甘かったようです。(写真は、NEMの不正流出の取引履歴。巨額流出の大半が開始からわずか19分で行われた)
そもそも仮想通貨って?
仮想通貨は価値を持った電子データで、インターネット上で送金や決済など、お金のように取引されます。2009年ごろ、謎の人物「サトシ・ナカモト」の論文をもとに生み出されました。代表的な「ビットコイン」をはじめ、流出したNEMなど1000種類以上あり、時価総額は計59兆円と言われています(ただし今回のトラブルで多くの仮想通貨が値下がりしています)。中央銀行のような公的な管理者はなく、ネット上で取引記録を共同管理する「ブロックチェーン」という仕組みで偽造を防いでいるのが特徴です。利用者は、ネット上の取引サイトに口座を開いて使うのが一般的で、円などの実際のお金を送金して仮想通貨と交換します。主にネット通販の決済や送金で使われますが、ビックカメラなどビットコインを使えるお店も少しずつ増えています。
(写真は、ビットコインで支払いが出来る東京・銀座のブランド品店)
1年で200倍の値上がり
仮想通貨は、金融機関が介在せず、決済や送金の手数料がほとんどかからないため、円やドルに代わる新たな貨幣として流通するのではないかと期待されていました。しかし、仮想通貨自体の価値が将来上がるという期待感から投機の対象になって様相が変わってきました。ビットコインは昨年1年間で20倍も値上がりし年末に1コイン=220万円超に、流出したNEMは200倍超になり取引高も急増しました。ビットコインはその後暴落するなど価格変動が激しいため、貨幣としての実用性は低いとの見方が出ています。(図版は、ビットコインをめぐる最近の出来事と値動き)
仮想通貨の将来は混沌
そんな中、金融庁は2017年春、世界で初めて仮想通貨取引所の登録制を導入し、厳しい審査を経て16社が登録されました。コインチェックは昨年9月に登録を申請。まだ認められていませんが、金融とITの融合を掲げる金融庁は仮想通貨技術の将来性に期待し、「みなし業者」として営業を認めました。今回これが裏目に出た形です。中国は2017年夏、ビットコインの取引所を閉鎖。米フェイスブック(FB)は今年1月30日、仮想通貨などに関する広告を禁止する新しい規則を発表しました。一方で、通信アプリ大手のLINEは31日、金融子会社「LINEフィナンシャル」設立を発表。LINEのアプリ上で現金と仮想通貨の交換など金融サービスを強化すると発表。仮想通貨の先行きはまだ混沌(こんとん)としています。
(写真は、仮想通貨事業参入などについて発表するLINEの出沢剛社長=1月31日)
面接で聞かれるかも
これだけ大きなニュースが続くと、仮想通貨は採用選考でもどこかで話題に出るかもしれません。筆記試験の時事問題、小論文や作文、グループディスカッションのテーマのほか、面接で「あなたの考え」を聞かれないとも限りません。流動的で正解がないテーマですが、多くの企業は常に世の中にアンテナを張っている感度の優れた人を求めているからです。「仮想通貨」「ビットコイン」などについて、今日取り上げた話をインプットしておき、少しは自分の考えを語れるようにしておきましょう。
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