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IT大手の楽天が携帯電話事業参入を表明しました。独自の通信網を持つ通信キャリアはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクグループの3社しかない寡占状態が続いていましたが、楽天の参入で通信料金の「価格破壊」が起こるかもしれません。ただ、楽天の本当の狙いは、「入り口」のスマホを押さえてネット通販や旅行サイトの利用者を囲い込もうという戦略です。通信事業、ネット通販は戦国時代に突入しそうです。(編集長・木之本敬介)
(写真は、楽天の三木谷浩史社長)
(写真は、楽天の三木谷浩史社長)
携帯事業は3強がシェア9割
円グラフを見てください。携帯電話業界は大手3社のシェアが9割を超えています。残りは3社からから回線を借りる格安スマホの会社です。そのうちの一つ「楽天モバイル」のシェアはわずか0.9%ですから、自ら通信網を持つ3社がいかに強いかがわかりますね。なぜ3強の構図が続いているかというと、携帯電話に使う電波には限りがあるからです。今回は、総務省が来年3月までに、防衛省や放送会社などが使う電波の周波数の一部を携帯電話向けに割り当てます。これまでの募集では3強が分け合ってきましたが、審査では新規参入企業が優先されるため、楽天がしっかり準備すれば認められるとみられています。楽天は全国に基地局を設置しますが、まずは東京や大阪などの都市部から整備する方針です。
格安スマホは過当競争
安倍政権は高額な通信費を問題視し、総務省は格安スマホ事業者(MVNO=Mobile Virtual Network Operator)の参入を後押ししてきました。しかし、格安スマホは自社でネットワーク設備を持たずに携帯事業を始められるため、700社以上が参入して過当競争になっています。楽天は格安スマホでは利用者を増やせないとみて、3強に挑むことにしたわけです。楽天会員を囲い込み
ただ、楽天の本当の狙いは別のところにありそうです。楽天のメイン事業はネット通販ですが、売り上げの8割を占める国内市場では、米国のアマゾンとの競争が激しくなっています。国内ネット通販市場のシェアはそれぞれ2割。楽天の2016年12月期は、売上高が前年比1割弱増えたのに営業利益は約2割減りました。ポイント還元などの費用がかさんだためです。そこで、スマホへの本格参入です。主力のネット通販サイト「楽天市場」では、すでにモバイル端末経由の取引が6割以上を占めています。「楽天スーパーポイント」を付けたり割引したりして、こうした楽天会員に先行3社から乗り換えて自社のスマホで通販をしてもらおうという作戦です。楽天モバイルの契約数は約140万ですが、新事業は1500万契約を目指します。ネット通販の国内会員数は約9300万人もいますから夢物語ではないかもしれません。楽天の広報は「楽天サービスだけで生活できるようにする」とまで言っていますから、壮大な計画ですね。
イオンはネット通販強化
ただ、自前で携帯の基地局をつくるには巨額の設備投資が必要です。楽天は最大6000億円を銀行から借りるとしています。年間数千億円の整備費もかかります。このため、事業の先行きを厳しいとみる向きも多く、楽天の株は売られ、14日は前日より4.86%下がりました。一方、ネット通販をめぐっては、小売り最大手のイオンも強化します。アマゾンや楽天が得意とする出店型の通販サイトを立ち上げ、地方で特産品や農産品をつくる業者などに出店をうながします。この事業を含むITや物流の改革に3年間で5000億円を投資。現在グループ全体で1%未満しかないネット通販での売り上げを12%に伸ばす方針です。
楽天はスマホの通信料金を3強より安く設定するでしょう。イオンの方針でネット通販も価格競争が激しくなるかもしれません。消費者としてはうれしい話です。でも、就活生のみなさんはそれだけでなく、「ビジネス目線」でこうした業界のニュースを注視して、通信、IT、流通といった業界の研究を深めてください。
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2024/10/16 更新
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