ニュースのポイント
みなさんが受けた会社の面接では、面接官は名前を名乗りましたか? 面接は密接な対話の場ですからお互いに名乗るのが常識のように思いますが、実際には面接官が名乗らない会社も多いようです。名乗らないのはダメな会社などと決めつけることはできませんが、面接は会社がみなさんを評価するだけでなく、就活生が会社を選ぶ場でもあります。面接で会社をチェックしましょう!(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、オピニオン面(12面)の「声・どう思いますか/なぜ面接官は名乗らないの?」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
(写真は、採用面接を待つスーツ姿の学生たち=6月1日、東京・渋谷)
名前教えてくれず、胸にひっかかった
「声」は読者の投稿欄です。就活の面接で面接官の名前を教えてもらえなかったことで「なんだか胸にひっかかるものがあった」と書いた東京都の大学生の投書が、6月14日に載りました。今日はそれに対する4人の読者の意見と、千葉商大専任講師で就活に詳しい常見陽平さん(写真)のコメントを掲載しています。常見さんは、最近は社員を様々なリスクから守るため、採用情報サイトの現役社員紹介欄で実名を伏せてイニシャル表記にする企業が増えている例を挙げ、面接官が名乗らないのも同じ理由かもしれないと指摘。そのうえで「面接は人材採用と同時に企業を理解してもらう場でもあるから、面接官が自分をさらけ出してコミュニケーションを円滑に進めた方が得」として、名乗るべきだと主張しています。
就活関連のサイトには「面接官が名乗らない会社はブラック企業の可能性も」などと書いてあるものがありますが、大手企業でも名乗らない会社はあります。初期段階の面接を外部の専門業者に任せている企業もあります。この場合は面接官が社員ではありませんから、名乗らない決まりなのかもしれません。
どこの誰かがわかって会話が弾む
朝日新聞社の面接では、昔も今も、面接官の所属と名前を記したネームプレートを机上に置き、最初に名乗ってから面接を始めます。私が採用担当部長だった10年ほど前、内定者から「朝日新聞社の面接は面接官の名前がわかって印象が良かった」と聞き、名乗らない会社があるのかと驚いた記憶があります。
朝日新聞社人事部の高橋末菜採用担当課長に聞きました。
「就活生は、企業は学生を『選ぶ側』で強い力があると感じると思います。それは事実ですが、一方で私たち朝日新聞も就活生から『選ばれる側』です。だから受けに来てくれる学生さんたちと面接官は対等である、と面接を担当する社員に伝えています。その結果でしょうか、朝日新聞社の面接は『会話のキャッチボール』になることが多い。就活生は相手がどこの誰かがわかるので、やりとりが弾むのかもしれません。ときどき、面接官が自分の経験ばかり話してしまい、学生に多くしゃべらせず、人事部としては困ることもありますが……(笑)」
常見さんが言っているとおりですね。
面接官の表情、態度、話し方…
会社の本当の姿や雰囲気は、採用情報サイトだけではわかりません。インターンシップ、会社説明会、OB・OG訪問などで社員にじかに会って話して、初めて肌で感じることができます。実は面接もその絶好の機会なんです。面接官の表情、態度、話し方は人それぞれでしょうが、何人かと話せば会社の雰囲気は伝わってきます。面接での質問からは、社としてどんな人物を採ろうとしているのかがわかるはずです。中には面接中にスマホを見る面接官もいるそうですが、それを許している会社だということですよね。面接時間以外にも、受付や案内、控室での対応にも社風が表れます。面接会場までに社内を通るなら、オフィスの雰囲気、すれ違う社員の様子、社員同士の会話の様子からも感じることがあるでしょう。
「入社の決め手は面接です」
人事のホンネで味の素の採用担当者はこう話しました。
「内定者アンケートで当社に決めたポイントを聞くと、『面接で会った社員の魅力』という答えが非常に多い。『こんなに真摯に全部聞いてくれた会社はない』『ここまで自分を見てくれたところはない』とか。面接を通じて味の素グループの価値観に共感してもらうこともあります」
「(私自身も)当社に決めた理由は面接です。1対1の面接で7人の社員に会いましたが、真摯に自分の発言を深掘りしてくれた。自己分析を深めてくれる面接で、1回終わると『あれ、自分にはこんな思いがあったんだ』という発見があり、毎回の面接が『今度はどんな話をしてくれるのかな』と楽しみでした」
面接であなたに質問を浴びせている人は、入社したら一緒に働くかもしれない先輩社員です。多くの面接官が面接で重視するのは「一緒に働きたい人かどうか」です。みなさんも、面接で「一緒に働きたい社員かどうか」を見極めましょう。面接を受けている最中はそんな余裕はないかもしれませんが、面接の後、そして内々定の連絡を受けたら、思い起こして他社とも比べて考えましょう。
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