人事のホンネ

味の素株式会社

2018シーズン 【第5回 味の素株式会社】
変化に主体的に適応できる人 「チーム味の素」の仲間に

人事部人事グループマネージャー 福永貴昭(ふくなが・たかあき)さん、人事部人事グループ 安藤文人(あんどう・ふみひと)さん

2017年02月21日

 企業の採用担当者に木之本敬介編集長が直撃インタビューする人気企画「人事のホンネ」。2018シーズンの第5回は、グローバルに展開する食品会社、味の素株式会社です。
 食と健康を追求する同社は、「1対1」で何度も繰り返す面接や、独自のビジネスワークショップなど、採用面でも強いこだわりを持っているようです。今回は、人事部の2人に話を聞きました。

■採用実績・職種
 ――2016年入社の採用実績を教えてください。
 福永さん 「事務系」が37人、「技術系」27人の計64人です。

 ――事務系でも理系学生を採用しますか。
 福永 はい。たとえば、加工食品メーカー向けのBtoB(Business to Business=企業間取引)ビジネスをしている部署の営業担当は顧客の開発担当や研究所の方と話すので、農学や水産など理系出身者のほうがクライアントの課題をキャッチしやすい面があります。従来、事務系の理系出身者は年に1人か2人でしたが、2016年入社では8人に増えました。

 ――2017年卒の採用数は?
 福永 計86人です。事務系が49人で、男性19人、女性30人です。技術系は37人。うち男性26人、女性11人です。合わせると男性45人、女性41人になります。
2017年卒採用は事業拡大に伴って増やしました。2018年卒以降もおそらく同じぐらい採用する予定です。

 ――社員全体の男女比を教えてください。
 福永 約3400人のうち、女性社員が約1000人を占めます。女性社員が出産などを経た後もイキイキと働きやすいよう、「在宅勤務制度」や「スーパーフレックスタイム」、「どこでもオフィス」を導入するなど様々な制度を拡充しています。

 ――男子学生と女子学生に違いはありますか。
 安藤さん 「こういう仕事がしたい」という志望のみならず、働き方まで含めた意識は女子の方がかなり高いかもしれません。採用ウェブサイトにも「子育てしながら働く」という働き方を考える内容を盛り込んだので、効果があったのかなと思います。

 ――女子学生の反応は?
 安藤 セミナーでの質問内容が変わりました。たとえば、以前は「どんな制度があるんですか?」から始まったところが、「その制度を使って職場に復帰した際の周りの反応は?」など、ある程度の知識を前提とする質問が増えました。その分深いディスカッションができるようになりましたね。

 ――採用サイトに力を入れているんですね。
 福永 働き方のほか、「成長」をコンセプトにサイト内のコンテンツを見直しています。当社人事部には、「人を求めてやまず、人を活かす。」という不文律があります。同じ価値観を共有できる、よき仲間に出会いたい。一度、よき仲間となったからには、どこまでも成長してほしい。心からそう願っています。また、学生も単に金銭面などの条件よりも「自分が社会人になって、やりがいのある仕事を通じていかに成長していけるか」を描ける企業を重視しているのではないかと感じています。

 ――クリエイティブ職の採用もありますね。新卒採用する会社は珍しいと思います。テレビCMなど広告が多いからですか。
 安藤 広告だけでなく商品パッケージデザインなども担います。社内では日々、お客様に商品のメッセージをどう届けるか、マーケターたちが考えています。それをパッケージでどう表すか、互いの意志や考えをくみ取り、深いコミュニケーションが必要になります。マーケティングの一環となるので、社内にその思考も持ち合わせたクリエイティブ人財が必要と考えています。
 福永 クリエイティブ職の社員は10人もいませんが、タイなど海外にも駐在しています。海外の大手食品会社との競争の中で、専門的なスキルを持った者が現地に駐在し、エリアごとにきちんとパッケージをデザインして、マーケティングや広告戦略を現地の仲間と一緒に考えています。

「入社しなくても受けたほうがいい」と学生が評価するGBW

■技術系の採用
 ――採用サイトでは、技術系の仕事内容をかなり詳しく紹介していますね。
 福永 ミスマッチがないようしつこいくらい書いています(笑)。技術系はフィールドⅠ(食品、栄養)、フィールドⅡ(発酵、バイオ、生物)、フィールドⅢ(素材、プロセス)、フィールドⅣ(エンジニアリング、IE、ICT)の四つの技術フィールド別に採用しています。
 安藤 「私の専門は本当は○○だったけど、違う分野を受けちゃった」というミスマッチがないよう、各分野の内容は事前に説明しています。自分の研究がどういう仕事に生きるかイメージを持って受けてほしいので。

 ――技術系の学生は専門分野が問われるわけですね。
 福永 はい。全員論文を出してもらいます。

 ――学校推薦制度は?
 福永 ありません。すべて一般公募です。

 ――食品メーカーで「工学」はどう役立つのでしょう?
 福永 商品コンセプトが決まったあと、実際に製造するためのプラントやラインづくりにはエンジニアのスキルやノウハウが必要です。味の素エンジニアリング(株)というグループのエンジニアリング会社と連携し、作業性やオペレーションも含め、工場のあるべき姿を考えてつくっていきます。
工学分野の採用は例年2人くらいですが、事業拡大に伴い本当はもっと採りたい。グローバルに展開する中で、海外で工場を立ち上げる際にも、工学系出身の社員が現地のメーカーとやりとりする必要があります。

 ――工学系の学生へのPRで工夫している点は?
 安藤 2点あります。まず私たち社員が直接大学に行き、説明をすること。採用担当の社員は3人だけなので、すべての大学には行けませんが、スケジュールの許す限り行くようにしています。二つ目は「グローバル」という軸で、活躍のフィールドが国内にとどまらず海外に広く存在していることです。実際にどんな仕事をしているかを具体的に伝えています。

■GBW(グローバル・ビジネス・ワークショップ)
 ――エントリー数と採用スケジュールを教えてください。
 福永 詳細は公表していませんが、ありがたいことにかなり多くの学生にプレエントリー、本エントリーしていただいています。就職活動期間の短縮もあり、ここ数年、微減傾向が続いていますが。
スケジュールは経団連の指針に準じ、3月に広報開始、6月採用選考開始です。それ以前は業界セミナーや大学の学内セミナーに参加します。

 ――インターンシップは?
 福永 インターンはしていません。2016年の時点では、経団連の指針でインターンは「5日間以上の就業体験」が条件でした。5日以上、学生が各部署に行って、そこの社員が指導するのはなかなか難しい。そこで、4月と5月にGBW(グローバル・ビジネス・ワークショップ)を開いています。
 安藤 GBWは学生が参加するケーススタディーの場です。採用担当社員の経験をもとに、学生が当社の社員になりきって、3日間かけて議論しプランや実行策を発表してもらいます。
2016年のGBWは東京で2回、大阪で1回の計3回、各40人で計120人が参加しました。「事務系」が対象で、参加する学生は文系・理系を問いません。

 ――GBWに参加した学生から内定者は出ていますか。
 安藤 事務系では、2017年卒採用ではGBW参加者からも多くの内定者が出ました。年々内定者が増加している傾向がありますね
 福永 内定者のオリエンテーションで話を聞くと、「GBWを通じて入社したいと強く感じた」という学生がとても多かったですね。

 ――GBW参加を経て内定に至る学生が増えている要因は?
 安藤 2点あると思っています。1点目は、コンテンツの内容をPDCAサイクル(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善の順に行う業務管理手法)を回しながら毎年改善していることです。より実際の仕事に則した内容に変え、参加者が当社で働くイメージを強く持てるようになったことは大きいと思います。そのため「当社でこういうことがしたい」というリアリティーのあるイメージがでもてるようになり、深く考えた状態で面接に臨めているのではないでしょうか。
 もう1点は、口コミなどでGBWのブランド力が高まり、志があり、実力や成長意欲も高い学生が集まるようになったことです。うちに内定した先輩から「GBWには絶対に行っておけ」と言われた学生や、「別の業界に就職した先輩から『GBWがその時期にやった勉強で一番良かったから、どこへ行くにしても受けたほうがいい』と言われた」という学生もいます。

 ――入社を志望しないとしても、受けた方がいい?
 安藤 そうですね。GBWは、私たち社員と学生が対等な関係で、全力で仕事を学べる場にしたいと思ってつくっています。そう思ってもらえているのであればうれしいです。志望業界に関わらず、高いレベルの学生がかなり受けに来てくれています。学生同士でも、互いに刺激を受けられる場として捉えてもらえているのではないでしょうか。学生たちがGBWを通じて成長を実感してくれればうれしいですし、本望です。結果として、参加者の志望度も高くなり、エントリーしていただけているので、良いサイクルになっていると思います。

 ――GBWでは具体的に何をするのですか。
 安藤 国内と海外一つずつ、二つのケーススタディーを体験します。2016年の国内ケースは私が3年目に経験したビジネスの場面をもとにしました。商品の売り上げを伸ばすために、どんなプランを立て、周囲を巻き込んで実行するか、7人くらいのチームごとに考えてもらいました。

 ――取り上げる商品は?
 安藤 国内のケースでは、当社の調味料「ほんだし」です。守秘義務の契約書を交わしたうえで、シェアの数字なども含めて、出せる情報を開示しています。国内のケースに1日半取り組み、後半は海外ケースです。2016年は「ある事業の採算が悪くなっているなかで、現地法人の副社長として当社の経営会議にプレゼンをしにいく」というケースでした。事業撤退の提案でもいいし新たな投資案でもいい。経営課題をどう解決するかをグループワークで考え、発表します。
 みんなよく勉強していますね。たとえば国内ケースでは、経営戦略やマーケティングの手法である3C分析(顧客=Customer、競合=Competitor、自社=Company)、4P分析(製品=Product、流通=Place、宣伝=Promotion、価格=Price)や、SWOT分析(自社の強み=Strengths、弱み=Weaknesses、機会=Opportunities、脅威=Threats)をしてもらうんですが、私は学生時代にその言葉自体知らなかったですから(笑)。でも参加者はみんなわかっていて、グループワークでかなり話し合って一体感が醸成され、その後の参加者同士のつながりも強くなっているようです。

 ――GBWに参加するための選考も競争が激しいのでしょうね。
 安藤 選考はかなり厳しいと思います。非常にありがたいことに参加希望者が沢山いますので。

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