味の素株式会社
2018シーズン【第5回 味の素】
変化に主体的に適応できる人 「チーム味の素」の仲間に
人事部人事グループマネージャー 福永貴昭(ふくなが・たかあき)さん、人事部人事グループ 安藤文人(あんどう・ふみひと)さん
2017年02月21日
食と健康を追求する同社は、「1対1」で何度も繰り返す面接や、独自のビジネスワークショップなど、採用面でも強いこだわりを持っているようです。今回は、人事部のお二人に話を聞きました。(編集長・木之本敬介)
■採用実績・職種
――2016年入社の採用実績を教えてください。
福永さん(写真左) 「事務系」が37人、「技術系」27人の計64人です。
――事務系でも理系学生を採用しますか。
福永 はい。たとえば、加工食品メーカー向けのBtoB(Business to Business=企業間取引)ビジネスをしている部署の営業担当は顧客の開発担当や研究所の方と話すので、農学や水産など理系出身者のほうがクライアントの課題をキャッチしやすい面があります。従来、事務系の理系出身者は年に1人か2人でしたが、2016年入社では8人に増えました。
――2017年卒の採用数は?
福永 計86人です。事務系が49人で、男性19人、女性30人です。技術系は37人。うち男性26人、女性11人です。合わせると男性45人、女性41人になります。
2017年卒採用は事業拡大に伴って増やしました。2018年卒以降もおそらく同じぐらい採用する予定です。
――社員全体の男女比を教えてください。
福永 約3400人のうち、女性社員が約1000人を占めます。女性社員が出産などを経た後もイキイキと働きやすいよう、「在宅勤務制度」や「スーパーフレックスタイム」、「どこでもオフィス」を導入するなど様々な制度を拡充しています。
――男子学生と女子学生に違いはありますか。
安藤さん(写真右) 「こういう仕事がしたい」という志望のみならず、働き方まで含めた意識は女子の方がかなり高いかもしれません。採用ウェブサイトにも「子育てしながら働く」という働き方を考える内容を盛り込んだので、効果があったのかなと思います。
――女子学生の反応は?
安藤 セミナーでの質問内容が変わりました。たとえば、以前は「どんな制度があるんですか?」から始まったところが、「その制度を使って職場に復帰した際の周りの反応は?」など、ある程度の知識を前提とする質問が増えました。その分深いディスカッションができるようになりましたね。
――採用サイトに力を入れているんですね。
福永 働き方のほか、「成長」をコンセプトにサイト内のコンテンツを見直しています。当社人事部には、「人を求めてやまず、人を活かす。」という不文律があります。同じ価値観を共有できる、よき仲間に出会いたい。一度、よき仲間となったからには、どこまでも成長してほしい。心からそう願っています。また、学生も単に金銭面などの条件よりも「自分が社会人になって、やりがいのある仕事を通じていかに成長していけるか」を描ける企業を重視しているのではないかと感じています。
――クリエイティブ職の採用もありますね。新卒採用する会社は珍しいと思います。テレビCMなど広告が多いからですか。
安藤 広告だけでなく商品パッケージデザインなども担います。社内では日々、お客様に商品のメッセージをどう届けるか、マーケターたちが考えています。それをパッケージでどう表すか、互いの意志や考えをくみ取り、深いコミュニケーションが必要になります。マーケティングの一環となるので、社内にその思考も持ち合わせたクリエイティブ人財が必要と考えています。
福永 クリエイティブ職の社員は10人もいませんが、タイなど海外にも駐在しています。海外の大手食品会社との競争の中で、専門的なスキルを持った者が現地に駐在し、エリアごとにきちんとパッケージをデザインして、マーケティングや広告戦略を現地の仲間と一緒に考えています。
「入社しなくても受けたほうがいい」と学生が評価するGBW
――採用サイトでは、技術系の仕事内容をかなり詳しく紹介していますね。
福永 ミスマッチがないようしつこいくらい書いています(笑)。技術系はフィールドⅠ(食品、栄養)、フィールドⅡ(発酵、バイオ、生物)、フィールドⅢ(素材、プロセス)、フィールドⅣ(エンジニアリング、IE、ICT)の四つの技術フィールド別に採用しています。
安藤 「私の専門は本当は○○だったけど、違う分野を受けちゃった」というミスマッチがないよう、各分野の内容は事前に説明しています。自分の研究がどういう仕事に生きるかイメージを持って受けてほしいので。
――技術系の学生は専門分野が問われるわけですね。
福永 はい。全員論文を出してもらいます。
――学校推薦制度は?
福永 ありません。すべて一般公募です。
――食品メーカーで「工学」はどう役立つのでしょう?
福永 商品コンセプトが決まったあと、実際に製造するためのプラントやラインづくりにはエンジニアのスキルやノウハウが必要です。味の素エンジニアリング(株)というグループのエンジニアリング会社と連携し、作業性やオペレーションも含め、工場のあるべき姿を考えてつくっていきます。
工学分野の採用は例年2人くらいですが、事業拡大に伴い本当はもっと採りたい。グローバルに展開する中で、海外で工場を立ち上げる際にも、工学系出身の社員が現地のメーカーとやりとりする必要があります。
――工学系の学生へのPRで工夫している点は?
安藤 2点あります。まず私たち社員が直接大学に行き、説明をすること。採用担当の社員は3人だけなので、すべての大学には行けませんが、スケジュールの許す限り行くようにしています。二つ目は「グローバル」という軸で、活躍のフィールドが国内にとどまらず海外に広く存在していることです。実際にどんな仕事をしているかを具体的に伝えています。
■GBW(グローバル・ビジネス・ワークショップ)
――エントリー数と採用スケジュールを教えてください。
福永 詳細は公表していませんが、ありがたいことにかなり多くの学生にプレエントリー、本エントリーしていただいています。就職活動期間の短縮もあり、ここ数年、微減傾向が続いていますが。
スケジュールは経団連の指針に準じ、3月に広報開始、6月採用選考開始です。それ以前は業界セミナーや大学の学内セミナーに参加します。
――インターンシップは?
福永 インターンはしていません。2016年の時点では、経団連の指針でインターンは「5日間以上の就業体験」が条件でした。5日以上、学生が各部署に行って、そこの社員が指導するのはなかなか難しい。そこで、4月と5月にGBW(グローバル・ビジネス・ワークショップ)を開いています。
安藤 GBWは学生が参加するケーススタディーの場です。採用担当社員の経験をもとに、学生が当社の社員になりきって、3日間かけて議論しプランや実行策を発表してもらいます。
2016年のGBWは東京で2回、大阪で1回の計3回、各40人で計120人が参加しました。「事務系」が対象で、参加する学生は文系・理系を問いません。
――GBWに参加した学生から内定者は出ていますか。
安藤 事務系では、2017年卒採用ではGBW参加者からも多くの内定者が出ました。年々内定者が増加している傾向がありますね
福永 内定者のオリエンテーションで話を聞くと、「GBWを通じて入社したいと強く感じた」という学生がとても多かったですね。
――GBW参加を経て内定に至る学生が増えている要因は?
安藤 2点あると思っています。1点目は、コンテンツの内容をPDCAサイクル(Plan計画→Do実行→Check評価→Action改善の順に行う業務管理手法)を回しながら毎年改善していることです。より実際の仕事に則した内容に変え、参加者が当社で働くイメージを強く持てるようになったことは大きいと思います。そのため「当社でこういうことがしたい」というリアリティーのあるイメージがでもてるようになり、深く考えた状態で面接に臨めているのではないでしょうか。
もう1点は、口コミなどでGBWのブランド力が高まり、志があり、実力や成長意欲も高い学生が集まるようになったことです。うちに内定した先輩から「GBWには絶対に行っておけ」と言われた学生や、「別の業界に就職した先輩から『GBWがその時期にやった勉強で一番良かったから、どこへ行くにしても受けたほうがいい』と言われた」という学生もいます。
――入社を志望しないとしても、受けた方がいい?
安藤 そうですね。GBWは、私たち社員と学生が対等な関係で、全力で仕事を学べる場にしたいと思ってつくっています。そう思ってもらえているのであればうれしいです。志望業界に関わらず、高いレベルの学生がかなり受けに来てくれています。学生同士でも、互いに刺激を受けられる場として捉えてもらえているのではないでしょうか。学生たちがGBWを通じて成長を実感してくれればうれしいですし、本望です。結果として、参加者の志望度も高くなり、エントリーしていただけているので、良いサイクルになっていると思います。
――GBWでは具体的に何をするのですか。
安藤 国内と海外一つずつ、二つのケーススタディーを体験します。2016年の国内ケースは私が3年目に経験したビジネスの場面をもとにしました。商品の売り上げを伸ばすために、どんなプランを立て、周囲を巻き込んで実行するか、7人くらいのチームごとに考えてもらいました。
――取り上げる商品は?
安藤 国内のケースでは、当社の調味料「ほんだし」です。守秘義務の契約書を交わしたうえで、シェアの数字なども含めて、出せる情報を開示しています。国内のケースに1日半取り組み、後半は海外ケースです。2016年は「ある事業の採算が悪くなっているなかで、現地法人の副社長として当社の経営会議にプレゼンをしにいく」というケースでした。事業撤退の提案でもいいし新たな投資案でもいい。経営課題をどう解決するかをグループワークで考え、発表します。
みんなよく勉強していますね。たとえば国内ケースでは、経営戦略やマーケティングの手法である3C分析(顧客=Customer、競合=Competitor、自社=Company)、4P分析(製品=Product、流通=Place、宣伝=Promotion、価格=Price)や、SWOT分析(自社の強み=Strengths、弱み=Weaknesses、機会=Opportunities、脅威=Threats)をしてもらうんですが、私は学生時代にその言葉自体知らなかったですから(笑)。でも参加者はみんなわかっていて、グループワークでかなり話し合って一体感が醸成され、その後の参加者同士のつながりも強くなっているようです。
――GBWに参加するための選考も競争が激しいのでしょうね。
安藤 選考はかなり厳しいと思います。非常にありがたいことに参加希望者が沢山いますので。
ESで見るのは力を入れたテーマや活動量 腹割って話す「1対1」面接にこだわり
――会社主催の説明会やセミナーは?
安藤 エントリーシート(ES)の通過者を対象に開いています。2017年卒採用では、ESの締め切りを4月下旬から5月中旬までの3回設けました。第2回までに提出して書類選考に通った人にセミナーに来てもらいました。セミナーは5月前半からほぼ毎日開催しました。最初の15分ほど会社の説明をし、その後「社員交流会」と題して先輩社員と学生がテーブルを囲み、ざっくばらんに興味・関心のあることを聞いてもらうスタイルです。
――ESから面接には何割くらい進めますか。
安藤 詳細は言えませんが、かなりの倍率ですね。ES提出時にWEBテストも受けてもらいます。
――ESには、TOEICやTOEFLのスコア、英検やIELTS、「その他得意な語学」の欄もあります。スコアの水準点を設けていますか。
安藤 設けていません。その後のキャリアを考える際に一定以上あった方がチャレンジの幅は広がるかもしれませんが、合否にはほとんど関わりません。
――「主な課外活動」を書く欄は、サークルとかですか。
福永 全てです。アルバイトでも何でも構いません。ゼミなど学業も含みます。
――保有資格の欄が三つもありますが、重視しているのですか。
安藤 自動車の免許のほかに、栄養士や薬剤師、簿記などいろんな人がいますが、採用において重視しているわけではありません。営業職の場合は運転するので免許は持っていた方がいいですね。栄養士など様々な資格がありますが、会社の要員構成で、そういう資格を活かせる部署があれば初期配属の際に検討しやすくなります。
――学生時代に力を入れたことについては、「役職、期間、活動量」と具体的に聞くんですね。
安藤 そうですね。具体性と、どれぐらいやったのかを聞きます。
――さらに、「主体的に設定した課題」「課題を解決するために取り組んだこと」も。深掘りしますね。
安藤 その方が面接する社員も情報が聞きやすい。私たちは、学生が一生懸命力を注いできたこと、そのときどんな事を考えていたのかなどをしっかりと聞きたい。落とすためではなく、どんな人なのかを知るための面接なので、具体的に行動を書いてもらう。こちらも質問を考えられるし、さらに深掘りできる。お互いをもっと知るためのものという認識です。
学生はこのESを見れば、どこをしっかり書くべきかわかると思うんです。自分のしっかりやってきたことを素直に書いてくれればいいと思います。
――「忘れられない味」は、貴社ならではの質問ですね。
安藤 食品メーカーですし、食べることが好きな社員が多い会社です。この質問で受かったり落ちたりはしませんが、食の嗜好は単純に知りたい。面接で緊張する学生も多いのですが、「あっ、お母さんの卵焼きなんだね」みたいな話から、アイスブレイクで話したりするんですよ。
――学生の人間味が出る?
福永 「部活で飲んだ『アミノバイタル』の味」とかだと、そこから話を広げて、なぜそうなの、と聞いていったりします。
安藤 卵焼きや卵ごはん、おにぎりの人は多いですね。「受験勉強のときに母親が深夜に作ってくれた手作りのおにぎりと卵焼き」等、同じメニューでもその背景のエピソードもあったりして聞いていても楽しいです(笑)。
――志望理由によく登場する商品は?
福永 「アミノバイタル」ですね。「部活でお世話になりました」という理由が多い。運動系の学生は、サークル、部活を問わず、かなり愛飲してもらっているようです。
――多くの学生が同じ商品を取り上げると埋没してしまいそうです。
安藤 全部読んで確認しますから中身次第です。海外に挑戦したいという学生も沢山いますね。たとえば、ゼミやNPO活動でアジアに行き、当社の商品が根付いていることに衝撃を受けた、というような記述があったりします。
――ESを見る際のポイントは?
安藤 学生時代に力を入れたテーマや活動量です。週に何回、何時間とか。「これは確かに大変そうだ、こんなに時間をかけているんだ、具体的にどういう考えを持って、どんな質でやったのだろうか」といった感じでコミュニケーションします。
福永 私は、「どういう役割で、どう力を発揮したのか」を深く見ますね。
――テーマ自体は何でもいいんですか。
福永 自分が掲げたゴールに対して、どれだけやったかを見たいので、何でも構いません。
――学生からよく「海外経験や特別な経験はないのですが」と相談されます。アルバイトやサークルの話でも、きちんと書けていればいい?
安藤 もちろん問題ありません。私自身もアルバイトの話を面接でしました。当時、家電量販店で働いていたんですが、シフトもなく在庫の整理もできていない。まず店内の在庫の配置表を作りました。社員の人件費を教えてもらい、「こんな仕組みを入れられたら、良くなりますよ」と店長に提案したら、それが採用され時給が上がった、というような話です。
もう一つは、大学生のとき高校のバスケットボール部のコーチをしたので、その話もしました。「弱いチームをどう強くするか」をテーマに週6回活動しました、とか。
いずれも内容自体は簡単なことでした。自分が想いを注げる事に対して、どう取り組むかだけです。それをしっかり書いてもらえれば。どんなテーマでも書けると思います。どんな場所でも、その中でどう課題を見つけるかが大事です。
福永 目まぐるしく環境が変化する時代に自分で考えて主体的に行動できる人を採用したい。そして、成長し続ける人を採用したい。そこをしっかりと見極めたい。テーマ自体は何でもいいんです。
■面接
――面接の形式を教えてください。
福永 ポリシーとして、グループ面接はせず、1対1の形式しかしません。学生と社員が対等な立場で、1対1で真剣に深くお互いを理解するためです。
――回数は?
安藤 具体的には申し上げられませんが、かなりの回数ですね。すべて1対1なので、面接の回数だけ社員と深く話してもらいます。社内のいろいろな部署の協力を得て面接担当者を確保します。
――すべて「1対1」の会社は珍しいですね。
安藤 「対等で真剣なコミュニケーション」が私どものモットーなので。優秀な学生はどの企業もほしいし、学生も企業を選ぶ立場にある。双方が選び合うわけですから、お互い腹を割って話し合ってギャップがない状態で最終面接を終えて迎え入れる、というプロセスがあるべき姿だと思っています。集団面接だと一人ひとりとちゃんと向き合えないと思います。「1対1」にはこだわりたいですね。
――学生の反応はどうですか。
安藤 内定者にアンケートをとって「志望度」の曲線を書いてもらっています。1月から6月ぐらいまで、どこの会社をどう受けて、志望度がどう変わっていったか。その中で当社に決めたポイントを聞くと、「面接で会った社員の魅力」という答えが非常に多い。「こんなに真摯に全部聞いてくれた会社はない」「ここまで自分を見てくれたところはない」とか。面接を通じて味の素グループの価値観に共感してもらうこともあります。
――面接で一番大事なポイントは?
福永 その人個人の活動です。多くの面接を通じて、「あなたは」という主語で深堀りしていきます。
――面接で「うちはこういう会社」という話をすることも多い?
福永 はい。情報提供の場でもあると思っています。何でも聞いてほしいので、質問の時間も必ず設けています。
――1次から最終までの面接で重視するポイントは違いますか。
安藤 基本的には変わりません。「何にどれだけ頑張ってどんな行動をしてきたか」を見ます。面接が進むごとにその深さが増していくイメージですね。
――内々定は6月?
福永 はい。経団連指針にのっとり、6月から出していきます。
――面接で最近気になるニュースや、世の中への関心度を聞くことは?
安藤 あまりないですね。ひたすら行動を深く聞きます。
――食品業界の最近の話題も聞かない?
安藤 基本的にしないですね。ひたすら行動確認です。環境が目まぐるしく変わる中で、どんな場面でも課題を見つけることと、どう考えて行動できるかに尽きる。どんなシチュエーションの変化にも適応できる人を求めています。
――ということは、志望動機もさほど重視していないのですか。
安藤 そうですね。想いとして持っていてほしいですが、あまり聞くことはしません。面接を通じて、どんな「人」なのか?と話しているうちに、志望動機も自然と見えてきます。学生もどんな会社か?という事が見えてくると思います。その結果として、彼らの「志」と会社の「志」が自然と重なれば良いと考えています。学生には内々定を出した後も「もし、まだ悩んでいるのであれば、就職活動は最後までやりなさい、他の会社もちゃんと受けてきてね。その上で、自分自身で悔いのない選択してください。」と言っています。私が受けた2010年にもそう言われました。
地道で泥臭い営業も 店頭の商品見てやりがいと誇り
――「働き方」への関心が強まっています。所定労働時間を1日20分短くして7時間15分にする、というニュースがありましたね。
福永 2017年度から実施します。この本社の建物は2016年から夜8時消灯になりました。東日本大震災の後、節電のために夏は8時、冬は9時消灯にしたんです。それを2016年から通年8時にした。かつ水曜日は「ノー残業デー」で6時に退館します。「あっ、今日は水曜日だった」と慌てることがたまにありますね(笑)。
――その分、朝早く出社するのですか。
安藤 早い人は、朝6時半ごろに出てきています。会社として朝食の支援をしていて、食堂で焼き立てのパンとコーヒーなどが朝食として無料で提供されます。ここで他の部署の人と会話もできますし、ありがたいですね。
■社風
――味の素株式会社って、どんな会社ですか。
福永 成長できる会社です。活躍できるフィールドは多種多様で、社員それぞれが適所適材で働いています。私たちが理念、ビジョンを追求する上で、従業員一人ひとりが共有する価値観、また仕事をする上での基本的考え方、姿勢に「味の素グループWay」があり、「新しい価値の創造」「開拓者精神」「社会への貢献」と並んで「人を大切にする」ことを掲げています。先ほども言いましたが、「チーム味の素」の仲間になったらお互いを尊重し、上下関係なく刺激し合い学び合う組織文化があります。一度、仕事で関わると異動してもその後の個々の成長をずっと見てくれていたりする。この点は他社の方から驚かれますね。
――安藤さんは?
安藤 私も成長できる会社だと思います。特に自分の「夢」や「志」についてしっかりと考えさせてくれる会社ですね。毎年1回、60歳までの自分の年表を作る仕組みがあります。何歳のときにこの仕事をしていて、こういうスキルを身に付けた、とか。たとえば、「45歳のころ、海外法人でこういう仕事をしていたい」という目標があるとします。そこから逆算して、何年目でどういうスキルを身に付けたい、仕事で身に付けるにはこういう部署で働きたい、という年表を作ります。それを上司に提出して面談する。上司が「だったら今、こういうことをできるようにしたら」などとアドバイスをくれる。将来の目標を設定すれば、今どんな努力をすべきか教えてくれますし、道筋やチャレンジできる環境を用意してくれる会社だと思っています。
福永 この年表にはワークだけでなくライフも書きます。家族がどうとか、子どもが何歳になって小学校に上がってとか。ワーク・ライフ・バランスを年1回考えるわけです。健康、キャリア、経済的な自立、社会との接点、この四つがそれぞれ自立してバランスをとると、社員自身にも、会社にとっても好循環が生まれます。
社内の造語で「共成長(きょうせいちょう)」という言葉があります。社員個人のワークとライフがそれぞれいいサイクルになることで、個人が成長し会社の成長にもつながる。「共に成長する」をキーワードにしています。
――「味の素グループWay」は、志望する学生にも求めますか。
安藤 求めます。我々の基本的な価値観なので。セミナーでも「この価値観に共感できない方は、たぶん入社してもつらいから、受けない方が良いかもしれません」と率直に話しています。ただ誰でも学生時代には何かしら挑戦したり、周囲との関係の中で成長した経験があったりしますよね。だから「全く共感できない人」はあまりいないと思います。
――アグレッシブでチャレンジ精神旺盛な人が多い印象を受けます。
福永 失敗を許す風土があり、若手に大きな仕事を任せる会社だと思います。他の会社だとたぶんマネージャーくらいの決済が必要な仕事を新人から任せてくれる。失敗したとしても上司や先輩がカバーしてくれる風土があります。だからこそ挑戦できて、今の自分があると感じています。
――採用で競合する会社は?
安藤 食品業界だとビール系の会社が多く、食品以外だと商社も多いですね。マーケッターや商品開発を目指す学生の場合、消費財メーカーやトイレタリー業界と競合します。様々な仕事がある分、競合する業界も様々ですね。
■やりがいとグローバル展開
――仕事の「理想と現実」や、「やりがいと厳しさ」について教えてください。
福永 当社のCMなどを見ていると一見、派手なイメージがあるかもしれませんが、たとえば営業の仕事には地道で泥臭い面もあります。企業や商品のブランドやイメージが出来上がり、それが売り上げにつながるには一人ひとりのお客さんとの信頼関係を積み重ねていくことが必要ですから。
一方で、見えやすい仕事もあります。担当の食品メーカーと一緒に開発したプライベートブランド(PB)商品が店頭に並んだときには、家族も喜んでくれました。「これ、お父さんが開発に携わったんだよ」と子どもに言えると、やりがいや誇りを感じます。
――世界130カ国で販売されているそうですが、海外駐在の社員数は?
安藤 約280人ですね。
――語学は入社してから鍛える?
福永 入社してからですね。
安藤 社員の自主的な勉強が多いですね。あとは実際に行ってから頑張れと(笑)。ですから入社前の語学力は評価に関係ありません。最初の配属で英語を使う部署に行く人を考える際は参考にしますが。
■安藤さんの就職活動
――安藤さんの就職体験を振り返ってください。
安藤 私は2010年入社で、最初は商社志望でした。大手商社のOB訪問を結構して、順調に最終面接までは行ったんですが、最終で3社落ちて落ち込んだ時期がありました。もともとは「海外」を軸に就活をしていたので、商社以外も受けようと、就活サイトで「海外でも働ける」というキーワードで検索して当社を見つけました。
――決め手は?
安藤 当社に決めた理由は面接です。当時の私は「海外に行けるかどうか」しか考えていない浅はかな学生で……。自己分析はしたものの、志望動機とかは一切用意せずに味の素を受けました。面接でも「商社に行きたかったんです」なんて、調子に乗ったことを言っていました。当時も面接は1対1で、私の場合7人の社員に会いましたが、真摯に「なんでそう思うの」と自分の発言を深掘りしてくれた。自己分析を深めてくれる面接で、1回終わると「あれ、自分にはこんな思いがあったんだ」という発見があり、毎回の面接が「今度はどんな話をしてくれるのかな」と楽しみでした。
さらに「セミナーに来てないんだよね。うちのことで分からないことや興味のあることを今聞いて」と、質問時間をとってくれました。質疑応答が30分ほど続き、ホワイトボードで説明してくれているうちに、面接が1時間に延びたこともあります。3次面接で「この会社で働きたい」とモードが切り替わった瞬間がありました。そこからは、悩まなかったですね。
――他の食品メーカーは受けていない?
安藤 食品は当社以外受けていません。当社の内々定が出て、就活自体をすぐやめました。
■これまでの仕事
――印象に残っている仕事を教えてください。
福永 最初は札幌に3年いました。ホテルや居酒屋などの外食チェーンに調味料を販売する部署です。3年後に異動し、7年間コンビニの外食用営業をしました。大手コンビニの本部を担当し、たとえばお弁当やパスタ向けに調味料やソースを開発提案する仕事です。PB商品の原料を開発する機会もありました。今でも店頭で売られています。そういう商品を家族で食べて「おいしいね」って言ってもらったり、当時お世話になった開発責任者の方から「福永さんとの仕事は今もすごく覚えている」と言っていただいたりしました。そういう信頼関係ができた点は、やりがいや誇りを感じました。
仕事柄いっぱい食べるので太りました。たとえば、四川風麻婆丼のソースの開発なら中華料理店を1日何軒か回って食べて、「この味がベストです」とプレゼンします。その開発で体重が増加傾向に……。妻からは結婚詐欺と言われています(笑)。
その後9年間、食品メーカー向けの加工営業(BtoB)を担当しました。たとえばカレーの原料として、カレーをおいしくする「魔法の粉」を販売しています(笑)。直近では、最大手流通PBの開発にも関わりました。漬物や梅干し、おでん、カップ麺など、あらゆる“食品”をいかに美味しくするか、流通の開発責任者、メーカー開発担当者・営業担当の方々とチームを組み一緒に考え抜きました。人事部には、2016年7月に来たばかりです。
――安藤さんは?
安藤 私は入社後5年間、大阪支社で、「味の素」「ほんだし」のような家庭用商品の営業を担当しました。スーパーや量販店に売り込む仕事です。最初の1年間はずっとお店回り。お店で商品の陳列の手伝いなど泥臭い仕事です。一見「これってアルバイトの仕事じゃないの?」と思うような仕事で、学生のみなさんは、イメージとのギャップを感じるかもしれません。2年目、3年目は、京都・兵庫・滋賀といった北近畿のエリアを担当しました。その地域のスーパーや食品卸会社を1人で担当しました。
――1人で3府県とは広いですねえ。
安藤 全国チェーンのスーパーは別の担当者がいますが、地元のお店は全部担当します。ただ、食品卸会社に共に活動していただく仕事がメインです。卸会社との信頼関係を作り、各小売店に当社の商品をいかに提案してもらうかに注力するわけです。
4年目からは大阪担当。大阪で影響力を持つ卸会社を担当し、厳しい世界を教えてもらいました。社内でチームを組んで取り組むプロジェクトにも関わりました。人事部には2015年7月に来ました。
――将来は海外勤務希望ですか。
安藤 そうですね、中期的な希望として、「海外」という軸はぶれていません。もっとも、昔の「海外に行きたいだけ」というところから、今は「海外で何をしたいのか」が明確な状況に変わりました。
みなさんに一言!
就職活動は、出会いの場、真剣なコミュニケーションの場だと思います。会社が学生を選ぶだけではなくて、学生も会社を選ぶ「対等な場」です。みなさんが私どもに関心を持ってもらえれば、真摯に、真面目に、真剣に、コミュニケ―ションをとっていきたい。お互いを知り合い、本当に相思相愛の形になることが理想の就職活動だと思います。それを目指して一緒に頑張っていきたいですね。(安藤さん)
「自分は何のために働くのか」「社会人として何をやり遂げたいのか」という想いが自分の軸となると思います。社会人になっても、苦しい時や悔しい時があっても、この自分のブレない軸さえあればハードルを乗り越えて成長できると思います。自分に向き合い、深く考えて、将来の自分の進むべき道を切り開いて就活という旅を楽しみながら進んでほしいです。そして、みなさんが、自分に合う道に出会い、また新しい旅に出発できることを心から願っています。(福永さん)
味の素株式会社
【食品】
味の素(株)は、アミノ酸を起点とした食品企業です。創業当初から「おいしさとは何か?」「何故おいしいのか?」を科学的に解明し、おいしさとサイエンスを組み合わせた事業を展開してきました。お客様や社会のニースに応える顧客起点の発想に基づき、先端バイオ・ファイン技術を軸に食品以外の分野にも事業を展開する世界No.1のアミノ酸メーカーでもあります。そして、創業からの開拓者精神で、海外でも積極的に事業を拡大し、オープン&リンクイノベーションにより、新たな価値を創出してきました。 味の素(株)には「創業の志」が「味の素グループWay」※として根付いており、全ての事業活動の原点となっています。当社はこれまで、現地の人に喜ばれ、地域の発展に貢献するという「現地主義」を大切に、幅広い国々で「挑戦」を続けてきました。現在、当社は「確かなグローバル・スペシャリティー・カンパニー」の実現に向け、2020年にグローバル食品企業トップ10入りを果たすという目標を掲げています。当社ならではの「スペシャリティ」を追求し、当社にしかできない新しい価値を創出することで、グローバル社会において必要不可欠な存在になるという強い意志をもっています。 ※「味の素グループWay」:新しい価値の創造、開拓者精神、社会への貢献、人を大切にする
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