
■エントリーシート
――会社主催の説明会やセミナーは?
安藤 エントリーシート(ES)の通過者を対象に開いています。2017年卒採用では、ESの締め切りを4月下旬から5月中旬までの3回設けました。第2回までに提出して書類選考に通った人にセミナーに来てもらいました。セミナーは5月前半からほぼ毎日開催しました。最初の15分ほど会社の説明をし、その後「社員交流会」と題して先輩社員と学生がテーブルを囲み、ざっくばらんに興味・関心のあることを聞いてもらうスタイルです。
――ESから面接には何割くらい進めますか。
安藤 詳細は言えませんが、かなりの倍率ですね。ES提出時にWEBテストも受けてもらいます。
――ESには、TOEICやTOEFLのスコア、英検やIELTS、「その他得意な語学」の欄もあります。スコアの水準点を設けていますか。
安藤 設けていません。その後のキャリアを考える際に一定以上あった方がチャレンジの幅は広がるかもしれませんが、合否にはほとんど関わりません。
――「主な課外活動」を書く欄は、サークルとかですか。
福永 全てです。アルバイトでも何でも構いません。ゼミなど学業も含みます。
――保有資格の欄が三つもありますが、重視しているのですか。
安藤 自動車の免許のほかに、栄養士や薬剤師、簿記などいろんな人がいますが、採用において重視しているわけではありません。営業職の場合は運転するので免許は持っていた方がいいですね。栄養士など様々な資格がありますが、会社の要員構成で、そういう資格を活かせる部署があれば初期配属の際に検討しやすくなります。
――学生時代に力を入れたことについては、「役職、期間、活動量」と具体的に聞くんですね。
安藤 そうですね。具体性と、どれぐらいやったのかを聞きます。
――さらに、「主体的に設定した課題」「課題を解決するために取り組んだこと」も。深掘りしますね。
安藤 その方が面接する社員も情報が聞きやすい。私たちは、学生が一生懸命力を注いできたこと、そのときどんな事を考えていたのかなどをしっかりと聞きたい。落とすためではなく、どんな人なのかを知るための面接なので、具体的に行動を書いてもらう。こちらも質問を考えられるし、さらに深掘りできる。お互いをもっと知るためのものという認識です。
学生はこのESを見れば、どこをしっかり書くべきかわかると思うんです。自分のしっかりやってきたことを素直に書いてくれればいいと思います。
――「忘れられない味」は、貴社ならではの質問ですね。
安藤 食品メーカーですし、食べることが好きな社員が多い会社です。この質問で受かったり落ちたりはしませんが、食の嗜好は単純に知りたい。面接で緊張する学生も多いのですが、「あっ、お母さんの卵焼きなんだね」みたいな話から、アイスブレイクで話したりするんですよ。
――学生の人間味が出る?
福永 「部活で飲んだ『アミノバイタル』の味」とかだと、そこから話を広げて、なぜそうなの、と聞いていったりします。
安藤 卵焼きや卵ごはん、おにぎりの人は多いですね。「受験勉強のときに母親が深夜に作ってくれた手作りのおにぎりと卵焼き」等、同じメニューでもその背景のエピソードもあったりして聞いていても楽しいです(笑)。
――志望理由によく登場する商品は?
福永 「アミノバイタル」ですね。「部活でお世話になりました」という理由が多い。運動系の学生は、サークル、部活を問わず、かなり愛飲してもらっているようです。
――多くの学生が同じ商品を取り上げると埋没してしまいそうです。
安藤 全部読んで確認しますから中身次第です。海外に挑戦したいという学生も沢山いますね。たとえば、ゼミやNPO活動でアジアに行き、当社の商品が根付いていることに衝撃を受けた、というような記述があったりします。
――ESを見る際のポイントは?
安藤 学生時代に力を入れたテーマや活動量です。週に何回、何時間とか。「これは確かに大変そうだ、こんなに時間をかけているんだ、具体的にどういう考えを持って、どんな質でやったのだろうか」といった感じでコミュニケーションします。
福永 私は、「どういう役割で、どう力を発揮したのか」を深く見ますね。
――テーマ自体は何でもいいんですか。
福永 自分が掲げたゴールに対して、どれだけやったかを見たいので、何でも構いません。
――学生からよく「海外経験や特別な経験はないのですが」と相談されます。アルバイトやサークルの話でも、きちんと書けていればいい?
安藤 もちろん問題ありません。私自身もアルバイトの話を面接でしました。当時、家電量販店で働いていたんですが、シフトもなく在庫の整理もできていない。まず店内の在庫の配置表を作りました。社員の人件費を教えてもらい、「こんな仕組みを入れられたら、良くなりますよ」と店長に提案したら、それが採用され時給が上がった、というような話です。
もう一つは、大学生のとき高校のバスケットボール部のコーチをしたので、その話もしました。「弱いチームをどう強くするか」をテーマに週6回活動しました、とか。
いずれも内容自体は簡単なことでした。自分が想いを注げる事に対して、どう取り組むかだけです。それをしっかり書いてもらえれば。どんなテーマでも書けると思います。どんな場所でも、その中でどう課題を見つけるかが大事です。
福永 目まぐるしく環境が変化する時代に自分で考えて主体的に行動できる人を採用したい。そして、成長し続ける人を採用したい。そこをしっかりと見極めたい。テーマ自体は何でもいいんです。
■面接
――面接の形式を教えてください。
福永 ポリシーとして、グループ面接はせず、1対1の形式しかしません。学生と社員が対等な立場で、1対1で真剣に深くお互いを理解するためです。
――回数は?
安藤 具体的には申し上げられませんが、かなりの回数ですね。すべて1対1なので、面接の回数だけ社員と深く話してもらいます。社内のいろいろな部署の協力を得て面接担当者を確保します。
――すべて「1対1」の会社は珍しいですね。
安藤 「対等で真剣なコミュニケーション」が私どものモットーなので。優秀な学生はどの企業もほしいし、学生も企業を選ぶ立場にある。双方が選び合うわけですから、お互い腹を割って話し合ってギャップがない状態で最終面接を終えて迎え入れる、というプロセスがあるべき姿だと思っています。集団面接だと一人ひとりとちゃんと向き合えないと思います。「1対1」にはこだわりたいですね。
――学生の反応はどうですか。
安藤 内定者にアンケートをとって「志望度」の曲線を書いてもらっています。1月から6月ぐらいまで、どこの会社をどう受けて、志望度がどう変わっていったか。その中で当社に決めたポイントを聞くと、「面接で会った社員の魅力」という答えが非常に多い。「こんなに真摯に全部聞いてくれた会社はない」「ここまで自分を見てくれたところはない」とか。面接を通じて味の素グループの価値観に共感してもらうこともあります。
――面接で一番大事なポイントは?
福永 その人個人の活動です。多くの面接を通じて、「あなたは」という主語で深堀りしていきます。
――面接で「うちはこういう会社」という話をすることも多い?
福永 はい。情報提供の場でもあると思っています。何でも聞いてほしいので、質問の時間も必ず設けています。
――1次から最終までの面接で重視するポイントは違いますか。
安藤 基本的には変わりません。「何にどれだけ頑張ってどんな行動をしてきたか」を見ます。面接が進むごとにその深さが増していくイメージですね。
――内々定は6月?
福永 はい。経団連指針にのっとり、6月から出していきます。
――面接で最近気になるニュースや、世の中への関心度を聞くことは?
安藤 あまりないですね。ひたすら行動を深く聞きます。
――食品業界の最近の話題も聞かない?
安藤 基本的にしないですね。ひたすら行動確認です。環境が目まぐるしく変わる中で、どんな場面でも課題を見つけることと、どう考えて行動できるかに尽きる。どんなシチュエーションの変化にも適応できる人を求めています。
――ということは、志望動機もさほど重視していないのですか。
安藤 そうですね。想いとして持っていてほしいですが、あまり聞くことはしません。面接を通じて、どんな「人」なのか?と話しているうちに、志望動機も自然と見えてきます。学生もどんな会社か?という事が見えてくると思います。その結果として、彼らの「志」と会社の「志」が自然と重なれば良いと考えています。学生には内々定を出した後も「もし、まだ悩んでいるのであれば、就職活動は最後までやりなさい、他の会社もちゃんと受けてきてね。その上で、自分自身で悔いのない選択してください。」と言っています。私が受けた2010年にもそう言われました。