ニュースのポイント
計8時間という異例の長さになった米中首脳の初会談は、「既存の大国」と「新しい大国」による新たな国際秩序を象徴する歴史的な会談でした。冷戦後の超大国アメリカによる一極支配の時代、新興国台頭による多極時代を経て、新たな時代が始まろうとしています。両大国の関係は、政治、経済を中心に、私たちの暮らしを左右します。歴史を踏まえたうえで大きな枠組みで世界を捕らえることが、今の世の中を理解するポイントです。
今日取り上げるのは、2面の「米中、ひざ詰め8時間/不振の連鎖 打破狙う」です。
記事の内容は――米国のオバマ大統領と中国の習近平(シー・チーピン、しゅう・きんぺい)国家主席は、計8時間もひざ詰めで語り合った。2002年の「米中蜜月」を演出したときの首脳会談でも約3時間だった。「個人的な関係を深める機会となった。その意味では大成功」(米大統領補佐官)などと両国は成果を強調。サイバー攻撃対策、北朝鮮問題の協力で一致した。異例の長時間会談を行った背景には、中国の西太平洋進出の動き、米国の「アジア重視政策」に対する相互不信が強まっているという危機感がある。中国が尖閣諸島周辺で領海侵犯を繰り返す中、米国との同盟関係が頼みの日本は、米中接近で存在感が低下しかねない。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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「米ソ冷戦 → ソ連の崩壊 → 唯一の超大国となった米国による一極支配 → 米国の相対的な地位の低下と中国、インドなど新興国の台頭による多極化の時代」。ここまでは、現代史で習いましたよね。中国の経済的な拡大と軍事大国化、国際政治での影響力増大によって、今その先の新しい世界の枠組みが作られようとしています。中国の国内総生産(GDP)が日本を抜き世界2位の経済大国になったのは2010年でしたが、英エコノミスト誌の予測では、早ければ2019年にも米国を追い越します。わずか6年後のことです。今まさに歴史の枠組みが大きく動いています。
万が一、両国が対立して軍事的に衝突したら世界が揺らぐ事態となります。そんなことにならないよう、相互理解を深めるために開いたのが今回の首脳会談です。日本にとって、同盟国・米国と隣国で最大の貿易相手国である中国の関係がどうなっていくかは、極めて大きな関心事。日本の政治、経済、そして私たちの暮らしに大きな影響を及ぼすからです。たとえば日本が交渉に参加することになった環太平洋経済連携協定(TPP)。記事には、TPPで米国市場に、自由貿易協定(FTA)で中国市場に、日本企業が進出しやすい環境をつくる、という日本政府のねらいが書かれています。みなさんも、米中関係の行方とそれに連動する日米、日中関係のあり方が、経済の動向や志望する業界の動きにどう波及するのか考えてみてください。
こうした国際的なニュースは、時事問題を理解するためにも、とても重要です。日々新聞に載る国際、政治、経済などの出来事や世の中の構図を理解するベースとなります。新聞には、歴史的経緯から現状、今後の見通しと、多様な材料が載っています。ぜひ関心をもって読んでみてください。
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