ニュースのポイント
パナソニックが人工知能(AI)に詳しい技術者を、5年以内に今の10倍の1000人規模に増やすと発表しました。インターネットにつなげて機能を高める「スマート家電」や自動運転車など、近未来の商品開発に欠かせないからです。それにしても、AI技術者だけで大企業が一つできてしまう規模です。パナソニックはどんな社会を目指しているのでしょうか。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(7面)の「パナ、AI技術者を大増員へ/21年度末までに1千人 自動運転車など成長見込む」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
AI採用枠
まずは2018年度末までに、AI技術者を300人に増やすそうです。今年4月入社の新入社員から「AI採用枠」を導入しました。大学や大学院でAIなどを専門に学んでいる人は、チャンスが広がります。家電や通信などデジタル製品を担当している現役の社員にも、社内教育をして専門分野を転換してもらいます。外部の人材の採用も進めていて、AIに詳しい立命館大学の教授が客員総括主幹技師になりました。
(写真は、パナソニックが試作した小型電気自動車。本社構内で走らせ自動運転の技術も磨く。ここでもAIは欠かせない=大阪府門真市、同社提供)
「家電、住宅、自動車、B2Bソリューション×AI」
パナソニックは、テレビやスマホなどのデジタル製品で中国、韓国企業との価格競争に敗れ、主力事業を自動車部品や住宅に転換してきました。中でも、実用化へ向けて国内外の各社がしのぎをけずる自動運転車開発、快適な暮らしと省エネを両立させる住宅事業、ネットにつながるスマート家電、といった分野での開発は、AI技術が勝敗を分けるとみているわけです。
パナソニック企業サイトの「Panasonic AI パナソニックの人工知能研究開発」のページには、「当社主要事業領域である家電・住宅、自動車、B2Bソリューションと人工知能技術をかけあわせることによって、人々のくらしの課題を解決する革新的な製品やサービスを皆さまのもとへお届けし、『より良いくらし』『より良い世界』を実現するべく日々チャレンジしています」とあります。
さらに、「多様なソリューション展開」として、自動運転システム、監視カメラ、店舗ソリューション、インフラ点検、機械翻訳システム、アシストロボット――の6分野を紹介しています。ここではそれぞれについて詳しくは説明できませんが、電機やIT業界志望者は一つひとつについて語れるようにしておいてください。もちろん、AIに力を入れているのはパナソニックだけではありません。ソニーは昨年、AIに特化した社長直轄の組織をつくり、技術開発や人材集めを進めています。各社の取り組みを調べてみましょう。
「就活ロボ」もAI活用
パナソニックが自動車関連でもっとも力を入れているものの一つは、電気自動車用のリチウムイオン電池です。米国の電気自動車専門のベンチャー、テスラ・モーターズと組んで電池生産工場「ギガファクトリー」を、米ネバダ州に建設。今年1月から生産を始めています。業界研究ニュース「人気の電気自動車テスラ、陰で支えるパナソニック」も読んでみてください。
最後に、あさがくナビに3月に登場した「就活ロボ」も、AIを活用して、みなさん一人ひとりの行動記録からマッチした企業を個別に案内するシステムです。LINEで友だち登録すると、AIが就活のさまざまな相談にも乗ってくれます。活用してみてください。
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