ニュースのポイント
中小企業と大手企業の賃金格差が少し縮まりそうです。人手不足が深刻になり、待遇改善をはかっているためです。就活では大手企業ばかりに目が行きがちですが、日本には小さくてもキラリと光る中小企業があります。その多くは、みなさんのエントリーを首を長くして待っています。そんな中小企業の見つけ方を伝授します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(8面)の「中小春闘 人手不足が追い風/ベア 大手を上回る/賃上げ幅 格差縮小/自動車などで顕著」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
中小企業って?
日本には会社が382万社もあるのですが、そのうち中小企業はどのくらいを占めると思いますか?
なんと、99.7%! つまり、ほとんどが中小企業です。日本で働く人は約4800万人いますが、中小企業で働く人はその7割、約3400万人を占めています。日本の経済を支えているのは中小企業なんです。
そもそも中小企業とは何でしょうか。「中小企業基本法」に定められていて、業種によって基準が異なるのですが、資本金が少なく、従業員数が数十人~数百人の小さな会社です。中小企業が大きくなったものの大企業ほどではない「中堅企業」という呼び方もあります。明確な規定はありませんが、従業員数が1000人に満たない企業を「中堅・中小企業」とくくったりすることもあります。
中小企業の待遇改善
その中小企業の待遇が改善しているというニュースです。賃金体系を引き上げる
ベースアップ(ベア)の引き上げ幅で中小が大手を上回り、
定期昇給(定昇)を含めた全体の賃上げ幅でも大手との格差が縮まりました。ベアや定昇については、
「『春闘』『労組』『ベア』って? 賃金はこうして決まる!」(2月3日の今日の朝刊)を読んでください。
背景にあるのは人手不足です。今年2月の
完全失業率は2.8%で、22年ぶりの低水準でした(グラフ)。
有効求人倍率も全国的に高い状態が続いています。大手に比べて賃金水準が比較的低い中小企業では、採用難が深刻で、今の社員の離職を防ぐためにも、待遇を良くしようとしているわけです。
中小企業のメリットは?
大企業が人気なのは、ネームバリュー、誇り、影響力やビジネスの規模の大きさ、好待遇といった魅力があるからでしょう。一方、中小企業には、会社が小さい分1人の責任・裁量が大きい、経営者に近い、チャレンジ精神を発揮しやすい、出世が早い、転勤が少ないといったメリットがあります。かつては、大企業といえば「安定」がキーワードでしたが、世の中の動きが速い今の時代は日本を代表する大企業でも一歩間違えると、破綻(はたん)してしまうのはご承知のとおりです。大企業では大きな仕事でも1人ができるのは大きな組織の一部の役割ですから、ある分野に詳しい「スペシャリスト」になりやすい一方、中小企業は1人が様々な業務を担当しなければ回らないため若いうちに「ゼネラリスト」が育つとも言われます。
志望業界を「縦」に深める
どちらが「良い」「悪い」ではなく、自分がどちらに向いているのか、どんな働き方をしたいのか、よく考えてください。みなさん数十社にエントリーしていると思いますが、人気があって競争率も高い大手企業ばかり狙っていると、6月になって「持ち駒がなくなった!」ということになりかねません。ぜひ、中小企業にも早めに目を向けてください。
その際、志望業界を「大企業➡中小企業」と縦に深めると、関連業界ですからESや面接も対応しやすいのでお勧めします。たとえば、こんな例ですね。
◆メガバンク➡大手銀行➡地方銀行➡信用金庫➡信用組合
◆大手自動車メーカー➡部品メーカー、電機・電子メーカー
◆新聞社・全国紙➡ブロック紙➡地方紙、業界紙
中小企業はこうして探せ
とはいえ、中小企業は有名ではありません。良い中小企業を探せるサイトを紹介します。
◆「あさがくナビ」で検索:「海外」「メーカー」など自分の仕事選びのキーワードで企業を検索
◆厚労省・大卒等就職情報WEB提供サービス:厚生労働省の新卒応援ハローワークの一つで、HPから全国の企業情報、求人情報を検索できる。イベント情報も
◆厚労省・若者雇用促進総合サイト:業界、職種、都道府県、フリーキーワードで企業検索できるデータベース。「ユースエール認定企業」「若者応援宣言企業」など多数掲載
◆グッドカンパニー大賞:公益社団法人中小企業研究センターが全国の中小企業から優れた成果をあげている企業を表彰
◆中小企業魅力発信レポート:中小企業基盤整備機構が全国603社の魅力を紹介
◆がんばる中小企業・小規模事業者300社:中小企業庁が、革新的な製品開発、創造的なサービスなどで地域経済の活性化や積極的な海外販路展開をしている事業者を選定
◆東京都の「東京カイシャハッケン伝!」など地方自治体の中小企業紹介サイト
◆中小企業家同友会の就職情報サイト「jobway」:全国4万超の会員企業のうち学生を採用したい企業を地域、業種、職種などで検索できエントリーも
目ぼしい企業を見つけたら、「会社四季報」「就職四季報 優良・中小企業版」(東洋経済新報社)などで採用実績や有休取得状況、賃金、入社3年後離職率、平均年収などを調べてみましょう。非公開ならそれも一つの情報です。
中小企業では、社長の考えや経営方針が働き方に大きな影響を与えます。人を大事にする会社かどうか、各社の採用HPなどで確認するのも大事です。「中島隆の輝く中小企業を探して」では、そんな熱い中小企業を取り上げていますよ。こちらもぜひ。
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