2017年03月30日

英首相がEU離脱を通知 企業はどうする?

テーマ:国際

ニュースのポイント

 英国のメイ首相が欧州連合(EU)からの離脱を正式に通知しました。60年のEUの歴史上、加盟国が離脱するのは初めて。実際に離脱するまでには2年ほどかかる見通しです。世界5位の経済規模の英国の離脱の成り行きに世界が注目しています。英国に拠点を置く日本企業も動き始めました。何が起こっているのか、基礎からおさらいしましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(1面)の「英首相、EU離脱通知/交渉入りへ 経済連携は要求」、同(2面)「いちからわかる!欧州統合の挑戦60年 これからどうなるの?」、同(3面)「離脱交渉 難航必至/『手切れ金』7兆円か/FTAの行方 日本企業注視」、国際面(11面)「2017試練の欧州/英離脱へ 試練の始まり/連合王国 分裂機運くすぶる」、オピニオン面(14面)「社説・英国とEU/建設的な関係の創出を」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。

そもそもEUって?

 まずはEUについておさらいします。年表を見てください。
 1957年、フランス、西ドイツ、イタリア、オランダ、ルクセンブルク、ベルギーの6カ国が、「欧州経済共同体(EEC)」の設立を定めたローマ条約を結びました。欧州で起きた2度の世界大戦の反省から、「欧州統合」をうたい、農業、運輸、貿易などで共通の政策をとることや「人、モノ、サービス、資本」の自由な移動を目標に掲げました。1967年に「欧州共同体(EC)」に発展し、1993年にはEUが発足。1999年には単一通貨ユーロを導入しました。

 ローマ条約60周年を祝う式典が3月25日にローマで開かれ、英国を除く27カ国の首脳が集まったばかりです。

微妙だったEUと英国の関係

 EUは、フランスとドイツ(当時は西ドイツ)が主導してできました。歴史的に米国との結びつきが強い英国は1973年になって遅れて参加しました。しかも、国境検問を廃止するシェンゲン協定には参加せず、ユーロも導入しないで自国通貨のポンドを使い続けてきました。EUにどっぷりつからず、「半身」で参加してきた印象です。

 近年、東欧からの新規加盟国などから英国への移民が増え、「仕事を奪われる」との不安や危機感が広まりました。国家主権が制限されることへの不満も高まり、昨年実施された国民投票でわずかな差でEU離脱が決まりました。今回、離脱の手続きがいよいよ始まったという段階です。

企業は英国外に移転を検討

 を見てください。英国はこれまでのEU加盟国の中で、人口も経済規模もドイツに次いで2番目の大国です。英国の貿易のうちEU域内が輸出入とも50%前後を占めますから、離脱は英国にとっても、EUにとっても、極めて影響が大きいわけです。今後の交渉では、英国が約束したEU予算の分担金などの支払い、英国に住むEU加盟国民とEU域内に住む英国人の権利の保障、などが焦点になりそうです。

 世界の経済にも影響を与えます。世界有数の金融センターであるロンドンには、世界の250以上の銀行が拠点を置いています。金融業には、EU加盟国の一つで営業許可を取れば域内で自由に活動できる「シングルパスポート制度」があります。しかし、離脱でEU加盟国への営業ができなくなる可能性があるため、金融機関にはロンドンから他のEU加盟国への移転を検討する動きが広がっています。

 日本の金融機関では、三井住友銀行などが英国以外での許可取り直しを検討。大和証券グループなどはEU内に拠点を設けることを検討しています。

スコットランドと北アイルランドは…

 英国内でも難しい問題が起きています。英国の正式名称は、「グレートブリテン及び北アイルランド連合王国(United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland)」です。大ブリテン島にあるイングランド、スコットランド、ウェールズと、隣の島の北アイルランドの四つの地域からなる連合王国です。昨年の国民投票で6割以上がEU残留を支持したスコットランドで、英国からの独立の機運が高まる可能性があります。隣国アイルランドとの間にEU加盟国と非加盟国を分ける境界線ができる北アイルランドでも分離を主張する動きがあり、混乱が生じるかもしれません。
 これから2年かかると言われる離脱交渉から目が離せません。

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