2017年03月31日

東芝の株主総会で「会社の仕組み」を知ろう!

テーマ:経済

ニュースのポイント

 東芝の臨時株主総会が開かれ、半導体事業の分社化を承認しました。株主総会とは、株式会社の重要な事柄を決める株主の集まりです。実際に株主総会で会社提案が否決されることはめったにないため、形式的なものと見られることも多いのですが、会社の存亡にかかわるような重要な事項があるときには注目されます。東芝でも最終的には分社化が承認されましたが、株主から経営者たちへの厳しい質問や意見が相次ぎ、東芝が危機的な状況にあることが浮き彫りになりました。会社とは、どういう仕組みで動いているのか、こういうニュースを通じて勉強しましょう。(朝日新聞教育コーディネーター・一色 清)

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「東芝 株主から批判続出/半導体分社化は承認/臨時株主総会」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は、東京・港区にある東芝本社ビル)

「会社は株主のもの」

 「会社は誰のものか」という質問への答えはひとつではありません。「社会のもの」と答える経営者もいれば、「社員のもの」とか「私のもの」とか答える経営者もいます。これらは経営者の主観ですので、間違いとは言えませんが、資本主義とそれに基づいてつくられている商法を忠実に解釈すれば、株式会社は「株主のもの」という答えが正解です。つまり、会社で一番えらいのは、経営者でも社員でもお客さんでもなく、お金を出している人、つまり株を持っている人なのです。ですから、誰でも証券会社を通じて株を買えば、その会社の重要なことを決める総会に参加する権利を持つことになります。

重要なことは臨時株主総会で

 株主総会には、年に1回決算や人事をはかる「定時株主総会」と、重要なことを早急に決めないといけなくなった時に開く「臨時株主総会」があります。今回の東芝の株主総会は、決算の穴埋めのために株を売る目的で半導体事業を分社化することの了解を得るのが目的ですので、臨時株主総会になります。株主総会にかけるべき「重要なこと」の明確な線引きはありませんが、社長など重要な経営陣の交代や合併、重要な事業の買収、売却といった会社資産や株価に大きな影響を与える出来事は株主総会の承認が必要です。こうした重要事項について取締役会は、株主総会の追認機関となるわけです。
(写真は、東芝の臨時株主総会の会場に入る株主たち)

自社株を支給して頑張らせる

 「株を買う」といえば、余ったお金を運用する手段と考えると思います。確かに多くの人は、資産運用のつもりで、自分とは何の縁もない会社の株を買っていると思いますが、実は経営に参加する権利も買っているのです。
 最近は、社員に自社株を買うよう勧める会社が増えています。ストックオプションといって、給料やボーナスの代わりに自社株を支給する会社もあります。社員が自社株を持つと、株価が上がるように、つまり会社がもうかるように頑張るだろうという狙いがあるからです。ただし、会社は経営に口出しすることまでは期待していないと思います。
(グラフは、2015年2月27日朝日新聞朝刊に掲載されたストップオプションを導入する企業数)

非上場はオーナー企業に多い

 株式会社でも上場企業と非上場企業は違います。上場企業は、株式市場で株を取引できる会社で、非上場企業は株式市場では株を取引できない会社です。上場していると、新たな株を発行して資金を調達することができますし、株価が上がれば銀行からたくさんお金を借りることができるようになります。知名度も上がります。ただ、会社の細かい情報を誰でも知ることができるように公開しなければなりません。また、上場企業は、一族がほとんどの株を保有することはできない決まりになっています。非上場企業は、こうした制約を嫌っているケースが多く、オーナーが君臨している会社によく見られます。

取締役と部長は決定的に違う

 取締役と社員との関係も知っておきましょう。取締役は社員ではありません。経営者です。社員から取締役になるときにいったん会社を退職し、株主総会の承認と取締役会の決議によって取締役になります。基本的に取締役は会社の株主であることが必要とされていて、社員時代に自社株を持っていない人は、取締役就任時に買うのが一般的です。多くの大企業は、サラリーマンが出世して取締役になっていますので、課長が部長になるのと、部長が取締役になるのを同じような出世ととらえがちですが、部長=会社に雇われている人、取締役=経営者なので、決定的な立場の違いがあるのです。経営の失敗で責任を問われるのは、取締役以上の人たちだけです。

会社はサークルとは違う

 みなさんが就職を目指している会社は、ほとんどが株式会社だと思います。大学のサークルやNPOなども人が集まって活動する組織ですが、株式会社とはいろいろな点で違います。ビジネスの世界では、株主、経営者、社員、顧客の関係や役割をきちんと理解しておかないと、大失敗をすることもあります。ざっくりとでいいですから、今のうちに覚えておきましょう。

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