2013年06月01日

アベノミクスによる円安で明暗…企業目線を意識しよう

テーマ:経済

ニュースのポイント

 アベノミクスによる円安の影響が広がっています。輸出企業にとっては利益の拡大になる一方、輸入品や原材料を輸入に頼っている製品は値上げが相次ぎ、私たちの暮らしを直撃し始めました。これまでみなさんは、こうした経済の動向を「円高で海外旅行に行きやすくなった」「円安で食品が高くなった」といった消費者の目線でとらえてきたと思います。でもこれからは、みなさんが目指す業界や企業にとってどんな影響があるのか、企業目線を意識してニュースに接するようにしてみましょう。

 今日取り上げるのは、3面の「円安 値上げどっと/iPad、食パン、電気代…/国内メーカーのPCも/車輸出には恩恵」です。
 記事の内容は――安倍政権の経済政策「アベノミクス」の影響が、家計や企業に広がり始めた。円安で輸出企業は利益が拡大し生産活動が好調な一方、アップルのiPadは最大1万3000円上がり、東芝のパソコンの想定価格も5000円から2万円上がった。小麦や食用油の輸入価格上昇で食パンやマヨネーズも値上げされる。日本銀行の金融緩和後の長期金利の上昇で、大手銀行4行は住宅ローン金利を2カ月連続で引き上げる。一方、輸出企業の国内生産には追い風が吹く。日産自動車は栃木工場で米国向け高級車の生産を始め、マツダと富士重工業は5月は休日を一部返上して生産。4月の鉱工業生産指数は5カ月続けて上昇した。雇用にも明るい兆しが出て有効求人倍率が改善しているが、増えているのは正社員ではなく非正規社員が中心。企業が円安でもうけた利益を、雇用や給料の増加として還元する動きは一部の大企業以外には広がっていない。

就活アドバイス

 この記事は、円安が国内の産業、企業にどんな影響を与えているのかをわかりやすくまとめています。簡単に言えば、円安が進み、国内で生産した製品を輸出している自動車業界などは海外では相対的に安価で売れるため売り上げを伸ばす一方、小麦や原油、天然ガスなどの輸入品は値上がりしているため、これらを原料としている食品や電気代が上がっています。かつては代表的な輸出産業だった電機、電子機器などのメーカーは、長く続いた円高やグローバル競争に対応するため、すでに多くが海外に工場を移しています。このため、東芝、NECパーソナルコンピュータなど国内企業が作るパソコンも「輸入品」で、値上げされるわけです。

 輸出で稼いでいる企業と輸入が主の企業の明暗がはっきりしてきました。記事に登場する国内の企業で言えば、東芝、NECパーソナルコンピュータ、山崎製パン、敷島製パン、キユーピー、味の素は、円安がマイナスに作用。日産自動車、マツダ、富士重工業の自動車業界は、円安の恩恵を大いに受けていることになります。このほか、三菱東京UFJ、みずほ、三井住友、りそなの大手銀行4行については、住宅ローン金利の引き上げがどう影響するか、今後注目していきましょう。

 記事に載った企業はごくごく一部です。みなさんが興味のある業界、企業に、アベノミクスによる円安や長期金利の上昇がどんな影響を及ぼしているのか。自分で調べたり、これから関心をもって記事を読んだりしてみてください。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
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