2017年03月16日

ちょっと意外?伊藤忠がAKB公認ファッションブランド立ち上げ 

テーマ:経済

ニュースのポイント

 総合商社の伊藤忠商事が、ネット通販専門のファッションブランドを立ち上げました。名前は「UNEEDNOW(ユーニードナウ)。白黒を基調にしたパーカーやTシャツ、キャップなどをネット通販に特化して販売、いずれも男女兼用。イメージモデルにアイドルグループAKB48のメンバーを起用しました(写真)。若い女性をターゲットにしているようですが、今後は男女に分かれた商品も開発。AKB人気を利用して、アジアなど海外への展開も視野に入れています。
 「へぇ、総合商社ってファッションブランドも立ち上げるの?」と、ちょっと意外に思いませんか? 商社とファッションブランドとの関係は、実は昔からとっても深いのです。(あさがくナビ副編集長・山口真矢子)

今日取り上げるのは、経済面(9面)の「モデルはAKB 衣類ブランド/伊藤忠 ネット専売 海外も視野」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。

川上から川下まで全てにかかわる

 総合商社は、よく「カップラーメンからロケットまで」といわれるように、ありとあらゆる商品やサービスを扱っています。みなさんが服を買う時に意識するファッションブランドもそのひとつ。たとえば服を作るためには、ブランドや商品の企画だけでなく、布や糸などの原料の調達から、縫製、卸し、小売りと、川上から川下まで工程ごとに様々な業者がかかわります。そこで顔の広い商社がネットワークをフル活用し、全工程を仲介するコーディネーターの役割を果たしています。また、日本で売っている海外のファッションブランドも、たいていは大手商社がからんでいます。商社が海外の企業と契約を結び、日本での商標権や独占販売権を買っているのです。

扱う海外ブランド数150

 伊藤忠は、海外の高級ブランドを数多く扱っていることでも有名です。その数およそ150とか。ファッション関係では高級服の「ポール・スミス」「ランバン」「ニナ・リッチ」「ミラ・ショーン」、スポーツカジュアルの「コンバース」「フィラ」、バッグの「バリー」「レスポートサック」、アウトドア用品の「ハンティングワールド」、女子学生に人気のセレクト雑貨「キットソン」もそうです。ファッションに興味があったら、アパレル企業に限らず、総合商社の動きも研究するといいと思います。
 また、ファッション関係ではありませんが、ニューヨーク発祥のおしゃれな高級食材店「Dean&Deluca(ディーン・アンド・デルーカ)」も、伊藤忠が手がけるブランドです。
(写真は、東京・六本木ミッドタウンの「Dean&Deluca」です)

仕立て布がファッションブランドの原点

 多くの総合商社は、創業時には「繊維」を扱っていました。伊藤忠ももともとは江戸時代の麻布や織物、更紗などの布の行商から創業し、明治時代に大阪で呉服商を開きました。今でも社内に「繊維カンパニー」と「繊維」という言葉を看板にした事業部があり、国内市場が停滞する中でも順調に利益を伸ばしています。総合商社というと、鉄鉱石や石油、天然ガスなどエネルギー資源が屋台骨というイメージがありますが、伊藤忠はアパレルや食品など資源以外の分野で稼いでいます(グラフ参照)。
 現在の伊藤忠の岡藤正広社長も、この「繊維カンパニー」の出身で、イタリアの高級ブランド「アルマーニ」との契約にこぎつけた実績もあります。ファッションビジネスのプロですね。社長も新人の頃は苦労したそうです。紳士服用の仕立て布をイギリスから輸入したのに、商品名が地味でなかなか売れなかった。お客さんを観察していると、男性客の妻や娘が布を選んでいることに気づく。女性受けする商品名にするためフランスの「サンローラン」と契約、布に「イブ・サンローラン」とブランド名をつけたら飛ぶように売れたそうです。これが伊藤忠のブランドビジネスの原点になっています。
(グラフは、2015年5月2日朝日新聞朝刊掲載されたものです)

「エドウィン」の復活劇も伊藤忠

 今回、伊藤忠がデビューさせたブランド「UNEEDNOW」は、今夏にはジーンズ「エドウィン」ともコラボする予定だそうです。エドウィンといえば、国産ジーンズの最大手ブランド。実はこれも伊藤忠がからんでいます。数年前、資産運用の失敗でエドウィンは存続の危機に陥りました。それを救ったのが、エドウィンに生地を卸していて長い付き合いのあった伊藤忠。2014年に300億円を投じてエドウィンを子会社にしました。つまり、伊藤忠は手持ちの国産の新旧ブランドをコラボさせ、付加価値を高めようとしているわけです。ネット限定で販売すれば店舗費用もかからないので、その分広告・宣伝にお金を使えます。
(写真は、2016年11月、東京・原宿にオープンしたエドウィンの直営店です)

商品を「どう売っているか」も考えよう

 ファッション業界希望の人は、普段からおしゃれに興味があるでしょうから、ブランド名や商品のラインナップに詳しいと思います。でもそれは基本中の基本。本気で内定をゲットしたいなら「バックにどんな会社が絡んでいるか」「どういう仕掛けで売っているのか」「いかにコストをかけずに宣伝・販売をしているか」についても研究してみてください。あらゆる商品を扱う商社のビジネスモデルを研究すると、就活中だけでなく社会人になっても役に立つことがたくさんあると思いますよ。

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