ニュースのポイント
安倍晋三首相が米ハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館を慰霊したあと演説しました(写真)。首相は、旧日本軍が太平洋戦争の口火を切った地で、不戦の決意を述べるとともに、戦後の緊密な日米関係を築いた「寛容の心」と「和解の力」を強調しました。日本の現職首相が同記念館で慰霊するのは初めてで、オバマ米大統領の広島訪問とともに、2016年は歴史的な年となりました。
その2016年もまもなく終わります。年が明けると、みなさんの就活本番はもう目の前です。冬休みの過ごし方についてもアドバイスします。
「今日の朝刊」は年末年始お休みし、1月4日に再開する予定です。よいお年を!(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、1面トップの「首相『不戦の決意』強調へ」、総合面(3面)の「戦地慰霊 曲折の歴史」、社会面(27面)の「真珠湾の証人 『平和を』/元米兵、記憶消えなくても」(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。
安倍首相の演説全文はこちら。
真珠湾攻撃について復習
真珠湾攻撃について復習します。1941年12月8日(現地時間7日)、日本軍の空母6隻、航空機約350機からなる機動部隊が真珠湾に集結していたアメリカ太平洋艦隊を奇襲攻撃しました。米側は戦艦アリゾナなど21隻が沈没や大破するなどし、将兵のほか民間人も含めて約2400人が死亡。日本側の被害は未帰還の航空機29機、特殊潜航艇5隻、死者64人でした。奇襲攻撃成功の報に日本は沸きました。一方、日本からの「開戦通告」は攻撃開始30分前には届く手はずでしたが、在米日本大使館が日本からの暗号を解読して通告したのは攻撃開始から約1時間後。卑劣な「だまし討ち」として米国人の怒りに火を付け、「リメンバー・パールハーバー(真珠湾を忘れるな)」は日本への報復の合言葉、象徴となりました。真珠湾攻撃の約1時間前、日本軍は英領マレー半島への上陸も開始しており、太平洋戦争が始まりました。
「ノーモア・ヒロシマ」と「リメンバー・パールハーバー」
安倍首相は、その「報復の象徴」の真珠湾を、「和解の象徴」にしようと呼びかけたのです。
広島の被爆の悲劇を繰り返さないためのメッセージに「ノーモア・ヒロシマ」があります。70年以上の間、「リメンバー・パールハーバー」と「ノーモア・ヒロシマ」は、一方通行のように発せられてきたように思います。その二つが、今年のオバマ大統領の広島訪問と安倍首相の「和解の象徴」の言葉で、ようやく交わったような感慨を覚えます。2016年は、歴史の一つの区切りの年として記憶されることでしょう。
2017年は「不寛容と分断」?
首相演説には、2017年に向けてのメッセージも込められていたようです。対立や差別をあおる発言を繰り返し、「不寛容と分断」の象徴とも言われるトランプ米新大統領(写真)が年明け早々に就任します。安倍首相は、米国の「寛容な姿勢」に感謝し、「和解の力」を強調しました。安倍首相に続いて演説したオバマ大統領も「憎しみが最も激しく燃え上がる時、民族主義が最も幅をきかせる時、私たちは内向き思考に抵抗しなければならない。異なるものを忌み嫌おうとする考えに立ち向かわなければならない」などと述べました。トランプ氏を意識しての発言のように聞こえました。
「知らない」ではすまされない
安倍首相の演説に、昨年の戦後70年談話などにあった「反省」の言葉はありませんでした。今日の3面には、中国政府の「中国などアジアの被害国との和解なくして、日本は(歴史の)一ページをめくることはできない」「真珠湾に行ったことで第2次大戦の歴史を清算できると考えるのは、単なる願望に過ぎない」との発言が、社会面には日本の市民団体の「アジア各地でも献花・謝罪を」との記事が載っています。
70年以上前の戦争について、みなさんの世代に責任はありません。でも、戦争を起こして負けて、戦後復興した国にみなさんは住んでいます。好むと好まざるにかかわらず、みなさんも歴史と無関係ではいられませんし、米国やアジアの国々の人と話をするときに、日本が起こして多くの被害者を出した戦争について「知らない」ではすまされないと思います。
(写真は、真珠湾で演説する安倍首相とオバマ大統領)
オバマ大統領は演説で「人間は歴史を選ぶことはできない。しかし、その歴史から何を学ぶかを選ぶことができる」と語りました。今回のようなニュースは歴史を学び考える絶好の機会です。そんな視点で日々のニュースに接してみてください。
冬休みの過ごし方
最後に、冬休みの過ごし方について。今の就活日程は「短期決戦」。来年3月の就活解禁からスタートしたのでは間に合いません。2月までにひと通りの準備を済ませておくことが肝心です。
今までの経験をサークル、ゼミ、アルバイト、高校の部活動などを細かく思い出し項目別にひたすら書き出す(自分史づくり)▽親やきょうだい、親戚に仕事の話や自分の小さいころのエピソードを聞く▽市販の「業界地図」などで業界・企業研究▽これだけは譲れない「仕事選びの軸」を定める▽志望度の高い企業のエントリーシートを書いてみる▽SPI(適性検査)などWEBテストの対策本を1冊終わらせる▽朝日新聞デジタルや記事データベース「聞蔵(きくぞう)Ⅱ」などで志望企業の1年分の記事を検索して読み込む――など時間があるときにしかできないことに、ぜひ取り組んでください。
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