2016年12月27日

「新産業革命」で激変する? 車社会と業界地図

テーマ:経済

ニュースのポイント

 「第4次産業革命」が進んでいます。あらゆるモノをインターネットでつなぐIoT(アイ・オー・ティー=Internet of Things)、人工知能(AI)、ロボット、ビッグデータなどによる技術革新の波です。図にあるように、移動、モノづくり、小売り、農業などが劇的に変わろうとしています。あらゆる産業に大きな影響を与え、業界地図も様変わりするかもしれません。今日は自動運転車による影響を考えます。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、1面と経済面(7面)の「新産業革命㊤/自動運転 業界超えた競争」「車の未来 人工知能が主導/IoT 衣食住を進化」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)です。この連載では明日以降、小売り、モノづくりの変化やサイバー攻撃のリスクなどを描く予定です。

第4次産業革命って?

 第4次産業革命については、「『第4次産業革命』知ってる? 何が変わるの?」(2016年4月26日の今日の朝刊)でも書きました。図にもありますが、第1次=蒸気機関、第2次=電力・モーター、第3次=コンピューターに続く産業革命です。ドイツが2011年に掲げた構想で「インダストリー4.0」とも呼びます。ITやセンサーで企業や工場、お店を結んでデータを共有し、原材料の調達から、受発注、生産管理などを自動化して生産や物流の効率を高めます。大量生産では人件費の安い新興国や途上国に勝てませんが、働き手が減るなか個別大量生産「マスカスタマイゼーション」で国際競争力を維持しようという試みです。
(写真は、米シリコンバレー郊外を走るホンダの自動運転の実験車)

車メーカー、IT企業の提携続々

 自動運転車の開発も第4次産業革命の一つです。ホンダは米国西海岸のシリコンバレーの郊外で、米半導体大手エヌビディアのAIを搭載した自動運転車の走行実験を続けています。2020年代には実現すると言われる完全自動運転の時代になると、自動車の優劣を決めるのは、車メーカーが得意なエンジンではなく、AIによる車載カメラ画像の解析などIT技術になります。

 運転手がいらない完全自動運転の実現に向けて、いま世界の自動車メーカー、IT企業による業界を超えた共同研究や提携が相次いでいます(表参照)。トヨタ自動車はIT企業のAIを研究する新会社をシリコンバレーに設けて5年間で1000億円以上を投じる一方、米マイクロソフトとビッグデータ分析の会社を設立しました。ホンダはグーグルと完全自動運転車の共同研究を始めます。日産・仏ルノーも、インターネットにつながる車「コネクテッドカー」でマイクロソフトと提携し、フランスのベンチャー企業を買収しました。

車はシェアするものに?

 もう一つの劇的な変化は、車が「所有するものでなく、シェア(共用)するもの」になるかもしれないことです。「自家用車」が当たり前でなくなるということですね。

 今日の記事によると、自動運転による配車サービスを試験的に始めた米配車大手ウーバー・テクノロジーズの関係者は「ウーバ-の野望は車の『所有』そのものをなくすこと」(英エコノミスト誌)と語ったそうです。ウーバーのようなサービスで車のシェアが広がれば、世界の主要地域の自動車保有台数は最大で半減するとの試算もあります。こんな時代になると、世の中で評価されるのは車メーカーではなく、質の高いサービスを提供する企業ということになります。ウーバーの推定企業価値は、米自動車最大手ゼネラル・モーターズ(GM)の時価総額を超える700億ドル(約8兆円)に上るといわれています。

 トヨタはこのウーバーとも提携しました。自家用車を買わない人が増える時代に備え、車両リースなどで囲い込む考えとも言われています。自動車メーカー、IT企業、サービス企業が入り乱れて、競争したり提携したりしています。自分が働いている10年、20年後に業界地図がどうなっているのかを想像しながら日々のニュースに接するようにしてみましょう。

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