ニュースのポイント
今日取り上げるのは、1面トップの「電通幹部ら事情聴取へ/違法な長時間労働疑い/厚労省強制捜査」と総合面(2面)の「時時刻刻・電通捜査 異例のスピード」です。1面コラム「天声人語」も関連記事です(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)。
(写真は、東京都港区の電通本社)
電通には、「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」などが掲げられた10カ条の「鬼十則」があります。電通4代目社長で「広告の鬼」と呼ばれた故吉田秀雄氏が1951年に書いた遺訓で、今も社員手帳に書かれています。朝日新聞の記事で鬼十則を「うちの哲学」と言う中堅社員は電通の社風について、「良くも悪くも体育会系でタテ社会」「花形の局では『1年の年次の違いは海よりも深い』と言われている」と語っています。
鬼十則は電通の企業風土を象徴する社員の心得として知られています。この社風で、広告業界トップの地位を築いてきたのは間違いありませんが、高橋さんの遺族は長時間労働を助長しかねないとして問題視しています。
一方で、長時間労働の是正は時代の流れです。
昨日、新たな「人事のホンネ」で味の素を取材しました。採用担当者の話では、同社は昨年から「午後8時消灯」となり、毎週水曜日は「午後6時退社」だとか。その分、早朝出勤する社員は増えていて、朝6時から、おにぎりなどの朝食サービスがあるそうです。
ほかにも、一定時刻以降の残業禁止や朝型勤務を導入する会社は増えています。最近の朝日新聞の記事だけでも、伊藤忠商事、カゴメ、リコー、横浜銀行、デンソーなどの例が紹介されました。東京の小池百合子知事も最近、職員の「8時退庁」を打ち出しましたね。
違法な働き方やパワハラは論外ですが、働き方の実態や取り組みは会社によって実に様々です。まずは志望する会社の働き方について「本当のところ」を知る努力をしてください。募集要項に出ている「勤務時間」を見ただけでは実情はわかりません。OB・OG訪問などで社員に直接会って話を聞いてみるのが一番。会った社員から感じる「社風」も、働き方に大きく関わる大事な情報です。
最後に、嫌々やっているわけではない残業について。マスコミは残業が多いと言われる業界の一つです。「人事のホンネ」で講談社の採用担当者はこう言っています。「激務ですが、みんな出版の仕事がしたくて入社し、本当にやりたい仕事ができているので、イヤイヤ働いている人はいません。これで十分なのにもっと良いものがつくれるはずだと頑張るから自ずと労働時間が長くなる。仕事を切り上げて家に帰ればもっと楽しいなら早く帰ると思うが、目の前にある仕事のほうが面白いからついつい頑張っちゃうのがこの仕事の一番の特徴なんじゃないか、という話をしますが、そこをあまりに気にする学生には無理に勧めないです」
「企画」する仕事は「切りがない」という面もあります。バンダイの担当者は「企画という仕事には際限がないんですよね。何か考えはじめると『もっと、もっと』となってしまって、午後5時半で仕事を終わらせるのが難しい、自分で忙しくしてしまうということはあります」と語っています。
やりがいや仕事の性質によっては定時で終わりにくい仕事もあります。それでも、バンダイの担当者が「『仕事は限度をもってやろう』という意識がだんだん浸透はしてきています」と付け加えました。いまや「長時間労働の是正」は政府の「働き方改革」の柱の一つ。どんな仕事も、この方向に向かっていることは知っておいてください。
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2025/04/02 更新
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