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トヨタ自動車の2016年9月中間決算の
純利益が前年比で大幅に減りました。中間決算の減益は東日本大震災の影響が出た2011年以来5年ぶり。トヨタも含めた自動車大手7社はいずれも売上高を減らしました。大きな原因は円高と米国市場の変化です。決算記事には、「業界の今」を知るための材料がたくさん詰まっています。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(8面)の「トヨタ 5年ぶり減益/9月中間/円高、純利益24.8%減」と「大手7社減速 米市場にも変調」です(いずれも東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)。
中間決算とは?
決算は、企業が一定期間の経営成績や財政状態をまとめて、いくらお金を使って、いくらもうけたか、財産の状況はどうなっているのかを明らかにする手続きのことです。法律で1年に1回は行うことになっていますが、会計年度の途中で半年間の実績をまとめたものが中間決算です。
最大の要因は円高
トヨタの純利益は前年同期比24.8%減の9461億円。売上高は7.2%減の13兆705億円でした。前年同期はいずれも過去最高でしたが、減少に転じました。最大の要因は円高です。安倍政権が経済政策「
アベノミクス」を始めてから1ドル120円前後の円安が続いていましたが、2015年の後半以降、中国など新興国の経済減速などで1ドル100円前後の円高傾向に転じました。世界の経済が悪くなったり混乱したりすると、比較的「安全資産」とされている円が買われて円高になるからです。
円高になると日本製品は外国で割高になって価格が上がるため、輸出企業の業績は悪くなります。トヨタの場合、対米ドルで1円円高になると、
営業利益が年間400億円減るため、今回大幅な減益になったわけです。
中国市場の変調
他社も似たような状況で、円高による営業損益は、トヨタの5650億円を筆頭に、7社合計で1兆1534億円に上りました(
表参照)。
米国市場の変調も大きく影響しました。
・好調が続いてきた新車販売台数が8~10月の3カ月連続で前年同月を下回った
・原油安の傾向が続いたため、米国での売れ筋が、日本メーカーが得意な燃費のいい小型車から、大型車に移った
記事からは、ホンダとスズキが純利益を前年より増やしたのは、それぞれ中国市場、インド市場に強いためという事情も読み取れます。
大きな流れをつかもう
数十年勤めるかもしれない会社を選ぶ就活では、短期的な決算に一喜一憂することはありません。ただ、一企業の動向だけでなく、業界、さらに日本経済、世界の経済といった大きな流れを押さえ、先を見通す努力はしておくべきです。業界・企業の今後も見えてきます。決算記事はその大きなヒントになります。
過去十数年間のトヨタの中間決算の推移を表したのが上のグラフです。2000年代に伸びていた業績が2008年のリーマン・ショックで暗転し、2011年の東日本大震災が追い打ちをかけましたが、2012年以降急回復。ところが、今年になって売上高、営業損益、純損益とも下落に転じました。いま転換点にあることが一目でわかりますね。こうした大きな流れを踏まえたうえで、各社の今後の経営戦略などを調べてみましょう。業界・企業研究が深まりますよ。
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