2016年11月10日

トランプ大統領で「就活氷河期」来る!?

テーマ:国際

ニュースのポイント

 米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏(70)=写真=が当選を確実にしました。過激な主張や移民、女性への暴言などが強い批判を受けていましたが、米国民は既成政治や格差拡大への不満から「チェンジ」を求めました。来年1月に就任するトランプ新大統領が実際にどんな政策を打ち出すのかはまだわかりませんが、「トランプ・ショック」は世界を駆け巡っています。日本への影響も甚大で、経済にはマイナスの影響が心配されています。もしかしたら、「就活氷河期」が再来するかもしれません。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは以下の記事ですが、他にも各面に関連記事が載っています。
・1面「米大統領にトランプ氏/既成政治批判 支持集める/TPP・日米安保 不透明に」
・総合面(3面)「TPP発効 困難に/アベノミクスに痛手/貿易の停滞 懸念」
・同(6面)「崩れるTPP 誤算/日本、通商戦略再考へ」
・国際面(9面)「不動産業・TV司会・公職経験なし」
・経済面(13面)「トランプ・ショック 日本にも/保護主義・円高…輸出への影響懸念」
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

トランプさん、どんな人?

 まずトランプ氏がどんな人なのかを知りましょう。9面に経歴が載っています。まとめると――ニューヨーク生まれで若いころから父親の不動産業を手伝い、ペンシルベニア大学卒業後、1983年に本拠地「トランプ・タワー」をニューヨーク五番街に建設。名門ホテル買収やカジノ経営など事業を広げた。2004年からテレビ番組「アプレンティス(見習い)」の司会者として人気を集め、今も世界各地でホテルやゴルフ場を経営。推定資産は約37億ドル(約3800億円)。公職経験のない初めての米大統領となる。今の妻のメラニアさん(46)はスロベニア出身の元モデル。離婚した2人の妻との間の子も含め、3人の息子と2人の娘がいる。

 政策では不法移民排除や自由貿易反対を掲げてきました。主な内容は表を見てください。

保護貿易主義と反TPP

 「トランプ大統領」誕生で、実現が絶望的になったとみられているのが環太平洋経済連携協定(TPP)です。日本、米国のほか、豪州、南米、東南アジアなどの計12カ国が参加し、昨秋、大筋合意しました。域内の関税を撤廃したり大幅に下げたりして、貿易やサービス、人の行き来を活発にして、経済を活性化させようという試みです。発効すれば経済規模で世界の4割を占める最大の自由貿易圏となります。

 ところが、トランプ氏は「アメリカ第一」を掲げ、米国の産業・雇用を守ると主張。TPPからの「離脱」を明言しています。自由貿易の旗振り役だった米国が保護貿易に傾けば、低成長が続く世界経済に大きな影響を及ぼしかません。トランプ氏の掲げた政策の多くが実行されたら、世界の実質経済成長率は年0.4~0.8ポイント低下するという試算を英シンクタンクがまとめています。

 一方で、このTPPを成長戦略の柱と位置づけているのが安倍政権です。TPP承認案をめぐり、いま国会がもめていますが、そもそも米国が参加しなければTPPは成り立たず、経済政策アベノミクスも見直しを迫られます。

「円高株安」「円安株高」どっち?

 トランプ氏が勝利した9日、東京株式市場では、過激な保護主義を主張する同氏の政策への不安から、日経平均株価は急落。6月の英国の欧州連合(EU)離脱決定時に次ぐ今年2番目の下げ幅となりました。円高ドル安も一気に進み、午後に一時1ドル=101円台前半と1カ月ぶりの円高水準となりました。「円高・株安」です。

 しかし道路、空港、学校、病院などへの積極的なインフラ投資で雇用を生み出すと宣言した勝利演説を受け、10日午前の円相場は円安に振れて1ドル=105円台に。日経平均株価も10日午前、一時1000円超値上がりし1万7000円台を回復、「円安・株高」に転じました。

 「円高・株安」になれば、輸出企業の業績が悪くなるため日本の経済にはマイナスです。大和総研はトランプ勝利が日本経済に与える影響について、日本の実質国内総生産(GDP)が約0.7%押し下げられるとの試算をまとめました。円高・株安、円安・株高のどちらに向かうか、目が離せません。

トランプ発言が就活左右?

 もちろん、みなさんの就活も無縁ではありません。
 日本の経済は、これからのトランプ新大統領の一つひとつの発言、打ち出す政策によって、大きく左右されます。米国の保護主義が強まり世界の貿易など経済活動が縮小すれば、世界の経済が冷え込み、日本企業の業績も悪くなる可能性があります。多くの企業はまだ2018年卒対象の採用計画を固めきっていません。業績が良くなれば新卒採用を増やし、悪くなれば減らすでしょう。トランプ氏の言動に注目してください。

 いずれにせよ、みなさんがまずやるべきことは、どんな経済状況になっても通用するよう、早めに業界・企業研究などに手をつけることです。

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