ニュースのポイント
(朝日新聞社教育コーディネーター 一色清)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「日銀首脳続く発信」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
(写真は日本銀行の黒田東彦総裁。元々は財務省の官僚で、2013年3月に総裁に就任しました)
まず、アベノミクスとは何かを振り返りましょう。2013年春から安倍政権が取り組む経済政策で、次の「3本の矢」からなっています。
① 金融緩和
② 財政出動
③ 成長戦略
このうち、実際に大きな力を発揮したのは金融緩和です。日本銀行のトップである黒田東彦(はるひこ)総裁は、「2年で2%の物価上昇を目指す」と宣言して、大量の国債を買い始めました。日銀が、銀行などの金融機関から国債を買うと、買った代金は金融機関にわたります。
金融機関はそのお金を融資や投資に使うので、世の中に出回るお金の量が増えて、お金の価値が下がります。つまり、物価が上がるというわけです。
ほかにも、「多くの国民が『物価が上がりそうだ』と予想すると、早く物を買おうとして景気がよくなりさらに物価が上がる」とか、「円の価値が落ちると外国通貨に対して円安になり、輸入品の値段が上がるので物価が上がる」とか、いろいろな要因で物価が上げようという狙いでした。
なぜ、物価が上がるといいのでしょうか。適度に物価が上がると、「値上がりする前にお金を早く使おう」という気持ちになるので、景気がよくなります。また、借金をしている側は、負担が軽くなります。住宅ローンを抱える働き盛りの人たちや、国のように借金をたくさんしている側が楽になるわけです。
もちろん、得をする側があれば損をする側があります。貯金や国債を持っている人のように、お金を貸している側は損をします。物価が上がりすぎると、たくさんの人の生活に大きな悪影響が出ますので、あくまで適度、黒田総裁は「2%上げる」と約束したわけです。
具体的な金融緩和策は、まず日銀がたくさんの国債を買うことでした。ただ、国債だけでは買える量に限界があるので、株や不動産などを組み込んだ投資信託もたくさん買いました。
買ってお金をはき出すだけでなく、金融機関が日銀に預けているお金につけている金利の一部をマイナスにしました。これが話題の「マイナス金利」です。「預けていると損をする」という形にして、金融機関がお金をおろして、融資や投資に振り向けることを狙いました。
これまでも、日銀総裁が自ら「異次元」というほど大胆な緩和をしてきたわけですから、それを際限なく加速させると、異次元から超次元というべき世界に入ります。正常に向かう出口は全く見えず、副作用の心配が膨らんでいくでしょう。アベノミクスは正念場を迎えているのは間違いありません。
こうした現状を認識し、できれば「自分はこう考える」という意見を持つことが望まれます。経済の勉強をしていない人には少々難しいかもしれませんが、社会は経済をベースに動いています。就職するということは、経済社会に入っていくということですので、関心を持って新聞記事を読むなどの勉強をしましょう。
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2025/04/02 更新
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