2016年09月08日

モノの値段は誰が決める? 「参考売価」「表示価格」「実売価格」の違いは?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 家電の新製品の広告に「オープン価格」とだけ書かれていて、具体的な値段が出ていないために、「で、いくらなの?」と思ったことはありませんか。 家電など製品の価格には「参考売価」「表示価格」「実売価格」などいくつか種類があります。背景には、モノをつくるメーカーと、売る小売店の力関係、主導権争いに加えて、ネット通販の普及など複雑な事情があります。今日は、消費者ではなく企業の視点で「価格」のルールについて学びましょう。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、経済面(6面)の「けいざい+ 攻防 家電の価格ルール/メーカーVS.小売店 見直し議論」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

どう違うの?

 まずは用語を整理します。
「参考売価」 メーカーが「これくらいで売ってほしい」と小売店に示す目安の値段。「メーカー希望小売価格」とも
「表示価格」 家電量販店などの小売店が参考売価をもとに決めて、お店の値札やチラシに明示する価格
「実売価格」 表示価格から値引き、店頭で実際に売る価格。店員が電卓をたたいて客に示したりする
「オープン価格」 メーカーが希望小売価格を設けず、小売店が自由に値段をつけて売ること
「定価」 商品を前もって決めた価格で一律に売ること。独占禁止法により、書籍や新聞など一部の商品を除き、メーカーが小売店に対して定価販売を強制することは禁止されている

メーカーVS.小売店 攻防の歴史

 なぜ、「価格」がいくつもあるのでしょうか。メーカーと小売店の攻防の歴史があります。
 かつてはメーカーの力が小売店に比べて圧倒的に強く、メーカーが決めた「定価」で売られるのが普通でした。これに挑んだのが、「価格破壊」を掲げたスーパー、ダイエーの中内㓛氏。家電大手の松下電器産業(現パナソニック)のテレビの安売りに踏み切り、松下幸之助氏が激怒。1964年に松下から取引を停止され、「30年戦争」と呼ばれました。

 その後、家電の販売は量販店が主流になり、定価やメーカー希望小売価格からの大きな値引き率をうたって安く見せかける売り方が目立つようになりました。消費者が混乱するため、公正取引委員会が指導し、今のスタイルが定着しました。さらに、家電量販店より安いネット通販が台頭。お店で商品の説明を聞いてネット通販で買う消費者もいます。(写真は家電量販店のテレビ売り場。数字で示されているのは「表示価格」)

ビジネス目線で考えよう

 安売り競争が行き過ぎると、メーカーの利益が減って業績は悪化します。新たな製品の開発費を抑えざることにもつながり、品質やサービスにも影響しかねません。このため、メーカー側は小売店が強い今のルールの見直しを要求。記事によると、独占禁止法の指針をゆるめて「新製品発売後、1~3カ月は『表示価格』をメーカー側が指定できるようにして」と求めていますが、小売店側の反対が強く実現は難しそうです。

 消費者にとっては安いほどお得です。でも、就活生はメーカー、小売店、それぞれの立場に立って「ビジネス目線」で考えてみる必要があります。すべてのモノがネットでつながる「IoT」(Internet of Things=アイオーティー)の普及で今までになかった新製品がどんどん登場します。一方で国内外のメーカー間の競争は激しくなっています。そんな要素も絡めながらモノの値段のあり方について考えるのも業界・企業研究のひとつです。

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