2016年08月24日

宅配便が急増中!なぜ?どんな業界に影響?

テーマ:経済

ニュースのポイント

 国内の宅配便の数が爆発的に増えています。2015年度に運ばれた荷物は37億4500万個。この5年間で5億個以上増えました。大きいのはネット通販の普及です。IT(情報技術)の進化で、何でもスマホで注文し短時間で届けてもらえる時代になりました。利用者、消費者としてはこのうえなく便利になりましたが、就活生はこの宅配便急増を「ビジネス目線」で考えてみましょう。様々な業界が関わり、影響することがわかるはずです。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、総合面(2面)の「増え続ける宅配便/届ける力 早く細かく37億個」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。

「買い物」の概念が変わる?

 記事によると、国内の宅配便の数は約30年間で10倍近くに増えました。急激に伸びたのはネット通販が普及した1990年代以降。2015年のネット通販など消費者向けの電子商取引の市場規模は13.8兆円で、この5年で2倍近くになりました。5年後の2021年には25.6兆円まで膨らむという野村総合研究所の試算もあります(写真はヤマト運輸の「チーム集配」)。

 アマゾンジャパンが昨年始めた「プライムナウ」というシステムが話題になりました。スマホで商品を注文すると1時間以内に届きます。東京では、今春のお花見シーズンにはビニールシートや冷えたビール、つまみなどが、積雪の日には長靴とスコップの注文が殺到しました。
 楽天も昨年、最短20分で届く「楽びん!」を開始。商品を積んだ複数の車が東京都内を走り回り、注文が入ると急行するシステムです。居酒屋の酔客からウコンドリンクの注文が入ったり、急な発熱で風邪薬を配達したりするそうです。

 アマゾン幹部は「買い物の手間やストレスを、できるだけゼロに近づけたい」と話しています。「買い物」の概念を変えるくらいの変革が進んでいます。

ITが不可欠

 「すぐ配達」を当たり前にしたのは、トラックなどの輸送体制の工夫に加え、ITの発達とスマホの普及です。「人事のホンネ」でヤマト運輸の採用担当者はこう言っています。
 「当社はモノを運ぶのも重要ですが、その際にはITの知識が必要ですし、SD(セールスドライバー)の配置などについても時間帯や業務量によって変動し綿密な計算が求められるなど、実はIT系や情報系を学んでいる方のフィールドが増えていると感じます。もっとこの分野の人に来て欲しいですね」

 宅配便が急増する中、業界にとって大きな課題になっているのが不在時の再配達です。2014年の国の調査では全体の2割が再配達。費やされる時間は1.8億時間、延べ約9万人のトラック運転手が再配達のためだけに走っている計算になります。
 この問題もITが解決してくれるかもしれません。ヤマト運輸は今年からスマホのアプリ「LINE」で、配達時間や受け取り場所を変更できるサービスを始めました。「1回で確実に届ける」ために、これからも新たな技術が生まれることでしょう。

「ドローン宅配」が実現すると…

 記事には「最後に荷物を届けるのは人の手だ」とありますが、この概念を変える可能性があるのが小型無人飛行機ドローンによる「ドローン宅配」です。すでに千葉市で実証実験がスタートしています。安全性が確保され、法律が整備されて実現すれば、トラックドライバー不足の問題も緩和されるかもしれません。

 宅配便事業に関わったり、影響したりする業界はほかにもたくさんあります。運送に関わる航空、鉄道、自動車メーカー、販売に関わる小売り、コンビニ、商品を保管する倉庫業、そして、宅配されるあらゆるモノの生産者……。志望する業界との関わりや影響を考えてみてください。

※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから

アーカイブ

テーマ別

月別