ニュースのポイント
オリンピックになると、どの国が何個のメダルをとったかが気になります。新聞では、そうした興味に応えるために毎日朝刊にメダル獲得表を載せています。この表を見ながら、日本の順位に一喜一憂している人も多いと思いますが、このランキングをGDP(国内総生産)や人口のランキングと重ね合わせて見ると、さらにいろいろなことが読み取れます。仕事をするようになると、表やグラフを見ることがよくあります。そこから何を読み取るかで成果が変わってきますので、注意してください。(教育総合本部教育コーディネーター・一色清)
今日取り上げるのは、23面の「メダル獲得表」(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版)です。
人口とメダルは相関薄い
19日の朝刊に出ているメダル獲得表は第13日(日本時間18日深夜まで)の分です。18日には女子レスリングで3つ金メダルを増やしましたので、18日の朝刊では10位だった日本の順位が6位に上がっています。日本時間の19日早朝には、女子バドミントンダブルスと女子レスリングで計2個の金メダルをとりましたので、さらにメダル数は増やしました。ただ順位は同じ6位ですので、この第13日までのメダル獲得表で話を進めましょう。
まず、金メダルの数は国の人口と関係があるかどうか、を見ましょう。メダルランキングの1位アメリカは人口では世界3位、2位の英国は人口では21位、3位中国は1位、4位ロシアは9位、5位ドイツは16位、6位日本は11位、7位フランスは22位、8位イタリアは23位、9位オランダは63位、10位豪州は52位となっています。金メダルの数と人口の多さは完全に無関係とはいえませんが、人口の10位以内でメダル数も10位以内に入っているのは、アメリカ、中国、ロシアの3カ国しかありません。英国やオランダ、豪州などは人口の順位よりはるかに高いメダル獲得順位になっています。人口とメダル獲得数の相関関係は大きくないことがわかります。
GDPとは相関あり
では、GDPとの関係はどうでしょう。メダル1位のアメリカはGDPも世界1位、メダル2位の英国はGDPでは5位、3位の中国は2位、4位のロシアは12位、5位のドイツは4位、6位の日本は3位、7位のフランスは6位、8位のイタリアは8位、9位のオランダは17位、10位の豪州は13位です。どうですか。GDPのランキングはメダル獲得数ランキングとそう大きく違いませんよね。つまり、メダル獲得数ランキングはGDPと相関関係が強いと言えるのではないでしょうか。スポーツの強い国は、人口が多い国ではなく経済力が強い国だということがわかります。
スポーツは余暇がなくてはできません。施設や用具も必要です。いくら人口が多くても生きるのに懸命な国では、スポーツになかなか打ち込めません。やはり豊かな国が強いのです。
法則とかけ離れた結果には理由がある
でもときどき、GDPとメダル獲得数がかけ離れる国が出てきます。たとえば、1988年のソウルオリンピックです。このときの獲得メダル数1位はソビエト連邦(現ロシアなど)で、2位は東ドイツ(現ドイツの一部)、3位がアメリカです。このときの東ドイツのGDPは、アメリカの数十分の1でした。GDPに比べて突出して多いメダル獲得数には特別な理由がありそうです。あとからわかったことですが、この頃の東ドイツはドーピングが当たり前だったそうです。
2008年の北京オリンピックでは中国が金メダル獲得数で断然トップでした。当時の中国のGDPは世界3位でしたので、大健闘といえます。これは開催国としての強化が実ったということでしょう。今回はGDP5位の英国がメダル獲得2位と大健闘です。こちらも前回のロンドンオリンピックで強化した成果がまだ残っているということでしょう。
どうなる?東京五輪のメダル数
日本はメダル獲得数が6位で「今回は大健闘」と言われていますが、GDP3位の国としては物足りないとも言えます。4年後の東京五輪では開催国としてGDPに見合うメダルを獲得できるでしょうか。まあそんなにメダルにこだわることはないと思いますが、いろんな視点でメダルの数を分析できる高いアンテナを持つことは、就活にもきっと役立ちますよ。
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