ニュースのポイント
富士重工業は会社名を「SUBARU」とすることにしました。富士重工業と聞いて、自動車メーカーだとピンとくる人はそれほど多くありません。それならば、自動車のブランドであるスバルを社名にすることにしようというわけです。こだわりは「SUBARU」とアルファベットにしたことです。海外での売り上げの大きいメーカーらしい判断でしょう。社名あるいは通称社名をアルファベットにする会社は徐々に増えています。多くは海外での事業を拡大しようと考えている会社とみていいでしょう。社名は単なる印ではありません。そういう目で会社名を見るのも面白いと思います。
今日取り上げるのは、経済面(8面)の「創業100年 SUBARUに統一/富士重工、来年4月に新社名」です。
記事の内容は――富士重工業は12日、来年4月1日に会社名を「SUBARU」に変えると発表した。来年に創業から100年を迎えるのを機に、海外でも知名度の高いスバルのブランド名と同じ社名にする。
各国の環境規制に対応するため、2021年に電気自動車(EV)を投入することも明らかにした。富士重はかつて軽自動車のEVを販売した時期もあったが、乗用車のEVに本格的に参入するのは初めて。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
富士重工業の前身は戦前、ゼロ戦と並ぶ名機と言われた「隼(はやぶさ)」を製造したことで知られる中島飛行機です。戦後は軍用機を開発したとして解体されますが、その一部が自動車メーカーとして生まれ変わり、1953年から富士重工業という会社名で四輪駆動車を中心にスバルブランドの車を送りだしてきました。スバル車は特に北米で人気があります。創業100年を期して社名を「SUBARU」にするのは、お客さんから見て会社と商品を一致させる狙いがあります。アルファベットにこだわったところを見ると、外国のお客さんをより強くイメージしているように思います。
ブランド名を会社名にする例はときどきあります。2008年に松下電器産業が海外向け製品のブランドだった「パナソニック」に社名を変えて大きな話題になりました。国内向けブランドは「ナショナル」だったのですが、ナショナルにしなかったのは松下電器が海外をより重視していたためと見られました。少し古い例ですが、1990年に立石電機が会社名を「オムロン」に変えたのも、ブランド名を社名にすることで海外でより分かりやすくしようという意図でした。ミシンメーカーの東京重機工業が1988年に「JUKI」に変えたのも同じような意図でした。
社名や通称名をアルファベットや片仮名にする会社は、他にもたくさんあります。旅行関連の業界は特に多いようです。就職人気の高いJTBは2001年に日本交通公社から名前を変えました。H.I.S.の正式社名は「エイチ・アイ・エス」ですが、アルファベット表記を一般的に使っています。航空会社も、日本航空はJALを、全日空はANAを使っています。海外旅行を企画する旅行会社や国際線を持っている航空会社はアルファベット表記の方が海外で使いやすいからです。
あと、政府系の組織が民営化したり、特殊法人化したりしてアルファベット表記になっている会社や団体があります。これらはたいていJかNが最初につきます。JRはかつての国鉄(日本国有鉄道)が1987年に分割・民営化して誕生した会社です。JRAは日本中央競馬会、JTは日本専売公社、JAは農協、JICAは国際協力機構など、JAPANのJがつくのですね。NはNIPPONのNですが、日本電信電話公社が1985年に民営化して生まれたNTTや、NHK(日本放送協会)などが典型です。余談ですがNHKという文字、全くの民間会社でも略称に使っています。日本発条というバネを作っている会社ですが、こちらは日本放送協会より古くからNHKを略称として使っているとして今も使っています。
ちょっと変わったところでは、以前は角川書店の社名で知られていた角川ホールディングスが2013年に「KADOKAWA」に変えました。漢字をアルファベットに変えただけですが、一般に国内産業と思われていた出版社の社名変更には驚かされました。その後のドワンゴとの統合などをみますと、ゲームや映像などの世界でグローバルな展開をにらんでいたのだということが分かります。2007年に石川島播磨重工業は「IHI」に正式社名を変えました。これは、グローバル化のほかにも元の社名が長くて覚えづらいという理由もあったようです。
漢字社名を片仮名に変えた会社もあります。デンソーという世界最大級の自動車部品メーカーは1996年に日本電装からデンソーに変えました。建設機械の小松製作所は略称としてコマツを使っています。グローバル対応という面ではアルファベットよりは中途半端な感じもありますが、国内の分かりやすさも考慮したものと思われます。
社名には歴史や愛着がありますので、なかなか変えにくいものです。でも、グローバル化が進めば進むほど、変える会社は増えるものと思われます。就職しようと思う会社の社名を調べることで、その会社の歴史や方向性が分かるかもしれません。
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