2016年05月12日

USJ沖縄進出撤回で考える、企業の「選択と集中」

テーマ:経済

ニュースのポイント

 4月から5月にかけて、テーマパーク好きの私にとって残念なニュースが続いています。GW前には、東京ディズニーランド(TDL)やディズニーシー(TDS)で2017年春以降にオープン予定だった3件の大型プロジェクトのうち、1件をとりやめ、2件は先延ばしにすると運営会社のオリエンタルランドが発表。そして今回、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ、大阪市)を運営するユー・エス・ジェイが、沖縄県進出を撤回しました。どんな背景があるのか、一緒に考えてみましょう。(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、総合面(4面)「USJ 沖縄進出を撤回」です。
 記事の内容は――USJを運営するユー・エス・ジェイは11日、沖縄県に新しいテーマパークを造る計画について、撤回を決めた。ユー・エス・ジェイは昨年3月、沖縄に国内2カ所目のテーマパークを造ることを表明。沖縄美(ちゅ)ら海(うみ)水族館がある国営海洋博公園(沖縄県本部町)を有力候補に、2020年ごろの開業を目指していた。大阪市のUSJは好調だが、拡張は難しいため、沖縄進出で成長する戦略だった。計画には政府も力を入れており、今年度の沖縄振興予算にも、県北部地域の大型観光拠点推進調査費として1億2000万円を計上していた。

(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 USJは映画「ハリー・ポッター」がテーマの新エリアの人気が持続し、2015年度の入園者数は1390万人と、5年連続で過去最高を更新するなど業績は好調です。
 USJの沖縄進出撤回は、昨年11月にユー・エス・ジェイを買収した米メディア大手コムキャストが、その採算性を疑問視し、好調な大阪に投資を集中させる方が有利と最終的に判断したとみられています。今年2月に計画撤回を検討していることが明らかになり、今回は正式な発表といった格好です。同社のジャン・ルイ・ボニエ社長もかねて「大阪をもっと伸ばす。将来は(今より入場者数を)300万~400万人増やせる」と話しています。
 USJの沖縄進出が表面化したのは2014年夏、2015年3月には計画を発表、同7月には当時の最高経営責任者(CEO)が沖縄県庁を訪れて知事に進出に向けた支援を要請するなど、具体化が進んでいました。ところが親会社がかわって、状況は一変、計画は白紙になりました。
 
 一方、オリエンタルランドも、2015年度の入園者数は3019万人と前年度をわずかに下回ったものの、2016年3月期の純利益は739億円で過去最高を更新しています。こちらも業績好調な中で「ふしぎの国のアリス」新エリアなど大型開発計画のとりやめや延期を発表しました。同社は主な理由として、開発工事中、利用できるアトラクションが一時的に減ることによって入園者に迷惑をかける、としています。つまり混雑緩和のためのとりやめや延期だという説明です。同社は「2020年春までにほかの新しいアトラクションやシアターを充実させていく」としています。
 
 二つのテーマパークの、撤回やとりやめ、計画延期に至った事情はそれぞれ違いますが、共通する判断が一つ考えられます。それが「2020年」という節目です。おそらくそこまでは訪日観光客などインバウンド需要が持続する、言い換えれば、既存の施設の「マイナーチェンジ」で十分集客できる、と見込んでいるのではないでしょうか。

 限りある資金を、新たな事業や設備に投入するべきか、既存の商品やサービスの充実に使うべきか、という判断は、テーマパークに限らずどんな企業でもつねに直面する課題です。グループディスカッション(GD)などのテーマにもなりやすいですから、志望業界の景気や、社会情勢を把握しつつ、自分なりの考えを言えるようにしておきたいですね。
 また、面接、GDなどで、話題となったニュースの情報を使う場合、つねに当日の朝までの最新情報に更新しておきましょう。いま、「沖縄に今度、USJが進出するんだってね」と言っていたら、笑われますよ。

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