2016年04月27日

「グローバル人材」に必要なのは…語学力?コミュ力?

テーマ:就活

ニュースのポイント

 世界中でビジネスを展開する企業が増え、国境を超えて活躍できる「グローバル人材」が求められています。ユニクロを手がけるファーストリテイリングは、海外5都市でのインターンシップまで実施し、73人の学生が参加しました。柳井正会長兼社長(写真)はインタビューで「グローバルに働くとはどういうことなのか体験してもらった」と話し、グローバル時代に求められる力について語りました。高い英語力がないと話にならないのでしょうか。(編集長・木之本敬介)

 今日取り上げるのは、特集面(17面)の「学びのみらいを創る・企業編/経営マインドもつ人材が活躍/ファーストリテイリング会長兼社長 柳井正さん」です。
 柳井さんのインタビューの要点をまとめます。
・日本ほど海外に依存している国はなく、国内に閉じこもっていたら自滅する。
・商品の企画、生産、物流、販売がネットでつながり、誰もが様々な情報に自由にアクセスできる。国境の壁がなくなり新たなサービスも次々と生まれる。大きなビジネスチャンスだ。
・世界中の社員に経営者マインドを身につけて欲しい。自分の頭で考え、未来に向けて絶えず挑戦していく。会社の将来についても具体的に話すことができる。それがグローバル人材だ。
・国籍が違っても考え方の8~9割は同じ。仕事の道筋を示すことが大事。社内公用語を英語にしたが、英語は道具。勉強したら仕事がどんどんできる。英語ができても中身がない人は活躍できない。
・海外の事業展開はビジネスだけではだめで、社会貢献活動も必要。
・どこにいてもグローバル化は避けて通れない。国内だけで物事を考えても意味がない。学生にはぜひ海外に行って欲しい。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 「人事のホンネ」のインタビューで、「世界一を目指している」とはっきり言ったのは、「世界一のインターネット・サービス企業になる」と話した楽天と、ファーストリテイリングの2社です。いずれも、英語を社内公用語にしています。すると、採用でも英語力を重視するのでしょうか。

 ファストリの中西一統(かずのり)人事部採用部長は「採用では全く見ていません。大切なのは、現時点での英語力よりチームでプロジェクトをやるときのコミュニケーション能力。英語はそのツールです。これまではたまたま英語を使う必要がなかったから使えないが、英語を使わなければならなくなれば覚えられるという人は実はたくさんいるので、入社時の英語力は重視しません」と話しています。楽天も、選考では英語力は参考情報程度にしか見ないそう。ただし、「入社2週間前までにTOEIC800点」が入社の条件です。英語が苦手な人は、内定後に頑張らなければなりません。

 3月28日朝刊の特集面でも、グローバル人材を求める企業の採用担当者の声を紹介しています。ソニーの責任者は「魅力を感じる学生は、あらゆる面で壁がなく、積極的な人。世の中の動きに幅広い関心を持っている人」と言います。16カ国に78の拠点を持つ大手自動車部品メーカーのカルソニックカンセイは「世界中の自動車メーカーと取引があり、英語ができないと仕事にならない場面は確かに多い。ただ、新卒採用では、語学力や留学経験より、挑戦や学びをし続けられる人かどうかを重視している」と話しています。JXエネルギーも「海外で活躍する社員は、柔軟性やバイタリティーがある。学生のうちに好奇心を持って自分のフィールドを広げて欲しい。失敗することでタフになる。採用担当者はそういう面を見ている」。やはり、語学力はあったほうがいいけれど、それよりもチャレンジ精神や好奇心が大事なんですね。

 ただ、外資系企業はちょっと違います。今日の朝刊には外資系企業が求める人材についての記事が載っています。IT大手、日本オラクルの責任者は「変化への対応力」「情報収集力」「スピード感」の三つをキーワードに挙げます。クラウドサービスの成長などIT分野の進化は急で国境がないため、「いかに海外情報を早くつかむかが重要で、その意味でも英語力は大切。採用でも語学力や海外経験を重視している」と話しています。55カ国で約37万人が働く総合コンサルティング会社、アクセンチュア日本法人は「グローバル人材とは、社内外、国内外を問わず多様なつながりを持ち、協力を得られる人。それが、世界中の知見を活用できる強みにつながる」として、「ネットワーキング」の力を重視していると言います。高い語学力だけでなく、留学経験などで海外に人脈がある人は有利と言えそうです。

 グローバル人材については「企業が求める『グローバル人材』とは?」(2015年11月24日の今日の朝刊)でも書きました。ファストリの海外インターンについては「あきのエンジェルルームvol.68 太っ腹な海外インターンには理由がある…」で詳しく書いています。こちらも読んでみてください。

 今日の特集面では、スマホのアプリで学生の能力を評価し、人工知能(AI)とビッグデータを活用して学生と企業をマッチングさせる「GR0W」についても紹介しています。教育ベンチャー、IGSのサービスで、朝日新聞社も協力しています。アプリの利用は無料で、iPhone向け、アンドロイド向けがあります。興味のある人は登録してみてください。

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