ニュースのポイント
いま「第4次産業革命」が始まっているのを知っていますか? 蒸気機関の第1次、電気の第2次、コンピューターによる自動化の第3次に続く産業革命といわれ、工場にセンサーをつけインターネットで客ともつなげて、生産性とサービスを向上させる大きな動きです。ドイツと米国が先行していますが、乗り遅れては大変だと、日本政府、日本の企業も後を追っています。あらゆる業界に大きな影響を与えそうです。背景と現状をやさしく解説します。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(7面)の「工場変革 追う日本/ネット駆使 生産ライン分析/先行するドイツ 米と接近」です。
記事の内容は――工場にとりつけたセンサーで生産ラインの様子を把握して無駄をなくし、インターネットで消費者や取引先とつながって新しいサービスが生まれる。ものづくりの世界で進む変革に乗り遅れまいと、日本の企業も動いている。山梨県の富士通子会社の電話交換機の部品工場では、生産ラインをモニターで見守るシステムを導入し、生産ラインの停止時間は25%短く、基板に取り付けられる部品点数は1日あたり240万点から280万点に約2割増えた。工場内の設備や制御するシステムがネットで結びつき、生産性やサービス向上につなげるものづくりの現場は、「スマート工場」とも呼ばれる。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
まず大きな流れと背景を説明します。
【第1次産業革命】18世紀後半の石炭と蒸気機関導入
【第2次産業革命】19世紀後半からの石油と電気による大量生産
【第3次産業革命】20世紀後半からのIT(情報技術)を使った自動制御システム普及、「IT革命」とも
これらに続く第4次産業革命は、2011年にドイツが政策に掲げた構想で「インダストリー4.0」とも呼ばれます。あらゆるモノをインターネットでつなぐ「IoT」(アイ・オー・ティー=Internet of Things)や人工知能(AI)、ロボット技術、ビッグデータなどを駆使して、モノづくりの工程を効率化、素早く低コストで市場の変動に対応しようという試みです。原材料の調達から、工場での製造、物流・保管、販売までつなぐので、お店である商品が売れたり注文が入ったりすると、その情報がすぐに工場に伝わり、つくり始めることができます。こうした最新の現場を「スマート工場」といいます。
ドイツはモノづくり大国でありながら、人口減少が進み、働き手が減っています。そんな中で製造業の競争力を維持しようと国をあげて取り組んでいるのが、第4次産業革命です。米国でも電機大手ゼネラル・エレクトリック(GE)などが先行しています。
ドイツと同じ課題を抱える日本の政府も動き出しました。4月12日に開かれた「未来投資に向けた官民対話」で、政府は2020年までにスマート工場を全国50カ所に導入することを支援する方針を示しました。安倍晋三首相は「世界に先駆けた第4次産業革命を実現する」と意気込みを示しました。
実際に何がどうなるのか。今日の記事に登場する福井市の繊維大手セーレンのスマート工場の例をみてみましょう。
同社が東京の百貨店で販売するワンピースは、スタイル、色、柄などの組み合わせが47万通り。お客が店頭の液晶画面で「試着」して選ぶと、情報が工場に送られます。福井県坂井市のデジタル染色工場には大型プリンターが約150台あります。注文が入った順にプリンターはデザインが異なる生地を次々と印刷します。だから、売れるものだけつくり、在庫はありません。染色工場は24時間動き、ほぼ自動化されています。かつて1色ずつ版をつくり、塗り合わせに数十人が必要でしたが、今は常駐している社員は3人だけだそうです。
こうした個別大量生産を「マスカスタマイゼーション」(マス+カスタマイズから)と呼びます。単純に同じモノをつくる大量生産では、人件費の安い新興国や途上国には勝てません。しかも、働き手が減っていく中で、モノづくりで国際競争力を維持するための試みが「第4次産業革命」というわけです。メーカーだけでなく、物流、販売などさまざまな業界を変える大きなうねりです。
IoTについては「IoTってなんだ?身の回りのモノがネットにつながる!」(2015年1月20日今日の朝刊)も読んでください。
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