ニュースのポイント
熊本地震で多くの工場が被災し、大手メーカーの生産に大きな影響が出ています。中でもトヨタをはじめとする自動車産業は深刻。サプライチェーン(部品供給網)が寸断されたからです。一方で企業による被災地支援の活動も活発になってきました。熊本地震と企業の関わりを考えます。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、経済面(9面)の「工場の被害把握 難航/余震で点検中断・取引先も被災/生産停止 全国規模に/トヨタ 在庫持たぬ方針影響」です。
記事の内容は――熊本県などでの一連の地震では現地の大手企業の工場の多くが被災した。生産再開の準備を進めようとしているが、余震が続く中で多くは復旧の見通しが立たない。被災工場から部品供給が途絶えてトヨタ自動車が全国で車両生産を止めるなど、影響は九州域外に広がっている。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
表を見てください。熊本県を中心として九州の工場が大きな被害を受けたことがわかります。とくに影響が大きいのがトヨタです。九州だけでなく、ダイハツ工業や日野自動車も含め国内15工場でトヨタ車の生産のほとんどを止めます。トヨタ系の自動車部品メーカー、アイシン精機(本社・愛知県)の子会社の工場(熊本市)が被災して部品供給がストップしたためです。この工場では、ドアの開け閉めを調節する部品を月数十万台分つくって、全国の組み立て工場に供給してきました。トヨタ紡織や豊田合成といった系列部品メーカーも、東北や東海、九州での生産を停止します。部品をつくってもすぐには組み立てられないためです。
一つの部品工場が被災しただけで、全国の工場が機能マヒに陥るのはなぜでしょうか。自動車は1台に約3万点の部品が使われ、関連する会社が数百社にのぼります。こうした部品や原材料の調達から生産管理、物流、販売までの製品供給の流れを「サプライチェーン」と呼びますが、緻密に組み上げられているだけに、一角が崩れただけですべてが止まってしまうわけです。
トヨタは2011年の東日本大震災でも、最長で1カ月以上の生産停止を経験。その後、仕入れ先の情報を中小企業を含めてデータベースにし分散発注も進めてきました。ただトヨタは、部品の在庫を最小限にして経費を節約する「カンバン方式」を生み出して、徹底している会社です(生産側が使用する部品と数量を記したカンバンとよばれる作業指示票を部品供給側に送り、部品供給側は必要な数量の部品を生産して提供する方式、「ジャストインタイム方式」とも)。その分、こうした不測の事態には弱い面があるわけです。
自動車以外では、スマホのカメラ向け画像センサーをつくるソニーの半導体子会社の工場の被災も、サプライチェーンへの影響が大きいとみられています。同社はソニー以外の他社にも画像センサーを供給しているからです。中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)が昨年日本で売り出したスマホは高感度のソニー製センサーを二つ搭載しているのが売りです。富士フイルムの子会社の工場も、液晶パネル向け部材「偏光板用保護フィルム」生産で世界シェア4割超。両社とも、他の地域の工場での代替生産を検討していますが、生産停止が長引くと海外の取引先にも影響を与えそうです。
今日の経済面には「被災地支援 企業も次々/おむつ・お菓子…ニーズに対応」も載っています。以下の商品などを地元自治体に提供、あるいはこれからする予定です。
◆
「すき家」のゼンショーホールディングス 温かい牛丼計2500食
◆
花王、ユニチャームなど 子供用おむつ6万枚、大人用おむつ2万枚、生理用品2万6400枚支援
◆
セブン&アイ・ホールディングス 毛布200枚、下着500枚、靴下1000足
◆
ファミリーマート 栄養ドリンクや焼き菓子、紙おむつ
◆
江崎グリコ 保存用ビスコなど
◆
テルモ 「旅行者血栓症(エコノミークラス症候群)」低減に役立つ弾性ストッキング2000足、筋力低下で転倒の危険がある高齢者向けに転倒予防靴下3000足
◆
三井化学 「エア・ざぶとん」1000枚
各企業の個性が表れていますね。資生堂や、武田薬品工業などの製薬会社は、地元自治体などからの要請を待っているそうです。記事に紹介されているのは一部です。志望企業の取り組みを、企業のホームページなどで調べてみましょう。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みは
こちらから。