ニュースのポイント
「好きな仕事か安定か、悩んでいる」という就活生からの新聞投稿に、多くの読者から、励ましや共感、アドバイスが寄せられました。理想と現実、やりがいと収入や忙しさ、大都市か地方か――などなど、就活で同様の悩みを抱えている人も多いと思います。読者や識者のアドバイスに耳を傾けてみましょう。(編集長・木之本敬介)
今日取り上げるのは、オピニオン面(18面)の読者投稿の声欄「どう思いますか」です。
「どう思いますか」は、反響が大きかった投稿について、寄せられた声を紹介するコーナー。今日は、山梨県の大学生(21)の就活についての悩みがテーマでした。
この学生は、「人の役に立つこと」「地域の活性化に貢献すること」を実現できる仕事を考え、地方での就職を希望していますが、「企業の知名度や収入の高さは重視せず、本当にやりたいこと、好きなことができる仕事を選ぶ『理想的な生き方』」と「結婚して家族を養えるように安定した収入をもらえる仕事を選ぶ『現実的な生き方』」の間で悩んでいるとつづりました。
紙面では、これに対する4人の読者の投稿を紹介しています。熊本県の牧師(46)は、やりたいことをやるべきだと助言。大手企業に就職した大阪府の会社員(31)は「現実的な生き方」を選択して自分の「基盤」をつくることを勧めています。転職を経験した広島県の飲食店経営者(46)は、自分に合った仕事を焦らずに探し間違ったらやり直せばいいと説きました。千葉県のアルバイト(28)は、好きな洋裁で生計を立てていけるかどうか、同じように悩んでいるそうです。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
いずれの方のアドバイスも実体験に基づくだけに説得力があります。「現実的な生き方」を選択して満足な生活を送っている人がいれば、やり直しで成功した人もいます。どの道を選ぶかに「正解」はありません。記事には、労働経済学が専門の玄田有史・東大教授のコメントも載っています。玄田さんはこう言っています。
「悩むこと自体が素晴らしい。とことん悩んで自分で決めれば納得できます」「『えい!』と決めて、やってみる。違うと思えばやり直せばいい」
私も、玄田さんが言うように、みなさんがこれからの道を選ぶときのポイントは、「納得」と「決断」だと思います。考えて、悩んで、自分が納得できる道を自分の意志で選ぶことです。いつまでも迷っているわけにはいきませんから、最後はどこかで「えい!」と決断するしかありません。どんな道を選んだとしても、苦しいことは必ずあります。納得せず、わだかまりを抱えたまま進んでしまうと、どの道であれ、後悔先に立たずで、挫折につながりかねません。納得して自分で決断した道なら、困難にあっても簡単には折れずに、たいていは乗り越えて成長できると思います。一方で、仕事は実際にやってみなければ向き不向きはわかりません。納得して進んだ道でも、実はどうしても合わないこともあるでしょう。憧れの仕事が思っていたものとかけ離れている場合もあると思います。最低3年間はやってみて、それでも「違う」と思えば、そのときに別の道を選び直せばいいんです。
ただし今の段階では、まずはいろんな会社の話を聞いてみて、自分に合う、ワクワクを感じられそうなところがあれば、積極的にエントリーすることをオススメします。選考で社員に会う間に、「ちょっと違う」あるいは「この会社いいかも」といったことが見えてくるはずです。少しでもいいと思った会社の選考は受けてみましょう。内々定をいくつかとったら、そこから悩んで、納得ずくの決断をしてください。
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