2016年03月24日

花形分野に永遠なし 三井物産、戦後初の赤字転落

テーマ:経済

ニュースのポイント

 総合商社は「ラーメンからロケットまで」と言われるほど、幅広い商品を扱います。大手商社は時代に合わせ、注力すべき分野を見極めながら収益を確保してきました。2000年ごろから商社の太い柱となっていたのが資源です。しかし、「爆食」と呼ばれるほど世界中の資源を買い集めていた中国の成長が2012年ごろから鈍化し、鉄鉱石や石炭の価格が落ち始めました。そこに原油価格の急落が重って、今では銅、ニッケルなど資源価格がほぼ全面安になり、商社の収益を大きく圧迫しています。

(副編集長・奥村 晶)

 今日取り上げるのは、経済面(8面)の「三井物産 赤字へ/純損失700億円予想/資源安響く」です。
 記事の内容は――三井物産は23日、2016年3月期の純損益が700億円の赤字になりそうだと発表した。資源価格の低迷で事業の採算性を見直し、損失を計上するためで、2月時点での1900億円の黒字予想を下方修正した。戦後の財閥解体でいまの三井物産ができた1947年以降で、赤字は初めてという。
 損失を出すのは、チリの銅事業で約1150億円、開発計画が遅れているオーストラリアの液化天然ガス(LNG)事業で400億円、ブラジルの資源投資で約350億円など。同社は2014年3月期に資源でのもうけが84%を占め、依存度が高い。安永竜夫社長は「残念ながら非資源事業でカバーするには(損失)が大きすぎた」と話した。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)

就活アドバイス

 約1年前、2015年3月26日に似たような記事が朝日新聞に載りました。同じく大手総合商社の住友商事が、資源開発の失敗や資源価格の下落により、16年ぶりに同年3月期の決算が赤字に転落見通しを発表したのです。850億円の赤字見通しは決算では731億円の赤字に縮小しましたが、資源分野だけで2914億円もの損失を出しました。資源分野は浮き沈みが激しく、長期的にみて収益があがればいいのですが、ここまで損失が巨額になると、他の事業がどんなに好調でも簡単にはカバーできません。1年後、三井物産も同じような状況に陥ったわけです。
 大手商社7社の2016年3月期決算は5月上旬に出そろいます。長らく業界首位だった三菱商事も、資源安で業績を下方修正しており、昨年赤字に転落した住友商事も、マダガスカルのニッケル生産事業などで、1700億円の損失を出す見通しです。一方、住生活・情報分野などが収益の柱である伊藤忠商事が初の業界トップに立つと注目されています。

 商社はそもそも貿易でもうけてきました。国内外からいろいろなものを買い付けて販売し、大きな売り上げを生み出してきたのです。それが徐々に、ものを動かすだけでなく、海外での発電事業など自ら事業展開したり、将来性のある分野の企業へ投資したり、業態を広げ、収益を拡大してきました。
 2000年代の資源分野は、総合商社にとってまさに「花形」部門でした。実は、この資源部門に商社が目をつけたのは50年以上前のこと。三菱商事がチリで鉄鉱石開発に乗り出したのは1958年ですし、三井物産が資源ビジネスに注力したのは1960年代です。蒔いた種が花開くまでには時間がかかり、咲いたからといって永遠に咲き誇れるわけではないのです。

 みなさんは就活で企業選びをするときに、いま好調な業界ばかり見ていませんか。10年後、20年後も同じ状況が続くでしょうか。私は10年後、20年後に伸びていそうな業界をちゃんと探しているよ、という人もいるでしょう。でも、その読みが当たって、20年後その業界が絶好調だったとしても、それは永遠ではありません。社内の部門でもそれは同じことでしょう。逆に、いま苦戦している、地味に見える部門が屋台骨になることだってあるのです。
 
 「花形業界」「花形部門」……。「花形」と聞くと、誇らしくやりがいがある仕事ができそうな気がしますが、志望業界や職種をイメージだけで絞り込んでしまうと「こんなはずじゃなかった」と後悔することにもなりかねません。どんな仕事にも浮き沈みがあることを前提に、それでも自分がしたい仕事を選んでください。

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