ニュースのポイント
ベルギーの首都ブリュッセルの空港と地下鉄をねらった連続テロが起きました。フランス・パリで2015年11月に発生した同時多発テロと同じように、過激派組織「イスラム国」(IS)系メディアが犯行声明を伝えています。パリでのテロは130人もの死者を出し、世界中に大きな衝撃を与えましたが、今回は空港といった警備が最も厳しい場所の一つでテロが起きたことで、「気をつけようがない」とさらに不安感が高まっています。日本人男性2人もテロに巻き込まれ、けがを負いました。ブリュッセルは欧州連合(EU)の本部があることから“欧州の首都”と呼ばれ、ベルギー国内には日本から200社を超える企業が進出しています。志望企業や、志望業界にも影響があるかもしれません。(副編集長・奥村 晶)
今日取り上げるのは、1面トップの「ベルギー連続テロ 34人死亡/空港・地下鉄駅で爆発/IS系メディア、犯行声明」です。総合面(2面)「時時刻刻・ベルギー過激派の温床」「厳戒下の空港 防げず」、国際面(13面)「国際社会 テロに憤り」「考論/摘発恐れ 爆発物放出か/難民の排斥助長を懸念」、社会面(39面)「連続テロ おびえる邦人」も関連記事です。
記事の内容は――ベルギーの首都ブリュッセルの空港で22日午前8時ごろ、2度の爆発があり、さらに約1時間後、ブリュッセル市内にあるEU本部近くの地下鉄駅構内でも爆発が起きた。この連続テロによって空港で14人、地下鉄で20人が死亡、180人以上が負傷している。IS系メディアは22日、事実上の犯行声明を伝えた。
(東京本社発行の朝日新聞朝刊最終版から)
就活アドバイス
パリ同時テロは「シリアで計画し、ベルギーで組織され、フランスで実行された」(オランド仏大統領)とされています。今回のテロの数日前、パリ同時テロの実行犯の一人とされるサラ・アブデスラム容疑者(26)がベルギー警察当局によってブリュッセル西部で逮捕されたばかり。報復テロという見方もあります。ISの勢力域であるシリアで計画、というのはわかりますが、なぜ「ベルギーで組織」なのでしょうか。アブデスラム容疑者の住んでいたモランベーク地区は若者の失業者や移民が多く、イスラム過激派の温床とみられ、パリ連続テロの実行犯らはブリュッセルを拠点にシリアやISを行き来していたといいます。ベルギーは“欧州の首都”であると同時に、イスラム過激派が多く、実行犯と武器を調達しやすい場所であったのです。
ISについては2015年11月17日の「今日の朝刊」でも詳しく解説していますので目を通しておいてください。
では今回のテロで日本にどんな影響があるのかを二つの面から考えます。
一つは、ベルギーに進出している日系企業への影響です。冒頭に書いたように、ベルギーにはヨーロッパの拠点として自動車メーカーのほか、関連部品メーカー、化学・医薬品メーカー、商社などが幅広く事業を展開しています。トヨタ自動車はブリュッセルにヨーロッパ本部を置いていますし、日産自動車、ホンダ、マツダもベルギー国内に販売や物流の拠点があります。従業員や施設に直接的な被害はなかったものの、ベルギーへの新たな渡航や出張などを当面見合わせるなどの手立てを取っています。
三菱東京UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行など大手金融機関もブリュッセルに拠点を構えていますし、医療機器メーカーのテルモや、富士フイルムもベルギーに販売拠点があります。ベルギーの在留邦人数は約5400人(2014年10月時点)で、約半数がブリュッセルで暮らしています。全日空は2015年10月に成田―ブリュッセル線を就航させたばかりですが、今回のテロの影響で、今後の運航体制は未定となっています。
みなさんの志望する企業もブリュッセルに支店や現地事務所をもっているかもしれません。早速情報収集してみましょう。
もう一つは、日本でのテロ対策への影響です。
5月下旬には主要7カ国(G7)首脳会議が三重県の伊勢志摩で開催されます。2020年には東京五輪が控えています。航空、鉄道、海運といった交通網など、インフラに関連する企業はもちろん、ホテルやテーマパーク、大型商業施設、地下街など、人が多く集まる場所でビジネスを展開している企業にとってテロ対策は死活問題です。検問などのセキュリティーを強化すると、長い行列ができたり、利用者の手間を増やしたり、利便性を損ない、集客力が落ちることも考えられます。さまざまな業界で、施設やサービスの魅力を損なわずに、いかに安全を確保するか、頭を悩ませています。
今回のテロで、ますますテロ対策の必要性が高まっています。みなさんが志望する企業ではどんな対策をとっているのかを調べることで、企業研究がより深まります。
遠い国で起きた事件事故を自分事として考えるのはなかなか難しいかもしれませんが、世界はつながっています。自分にひきつけて想像力を働かせ、概要だけでも把握しておく習慣をつけましょう。
※「就活割」で朝日新聞デジタルの会員になれば、すべての記事を読むことができ、過去1年分の記事の検索もできます。大学、短大、専門学校など就職を控えた学生限定の特別コースで、卒業まで月額2000円です(通常月額3800円)。お申し込みはこちらから。